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初恋知らずの、「寂しさ」使い

初恋一切知らない。

悲しみが、僕の胸を貫いたから、

僕は大げさに射抜かれたふりをして、

倒れてみせるという

自虐を演じなければならなかった。


どこにも笑ってくれる人などいなくて、

もし信号機があったら赤にして

あの人には近よらないようにと

危険人物扱いされていて、

誰も僕の気持ちなんて

わかってくれやしないのだと、

夜空見上げてくすんくすんと言ってたら。

倒れた僕を見下ろしながら、

あなたは、ただ立ち止まっていたのでした。

しばらくは僕の顔を覗き込み

見つめることにも飽きたら、

そっと微笑んで、僕に手を差し伸べて、

さぁ、おいで。

と言ってくれたのでした。


降り出した雨、

立ち見席でもいいから、

ふたりの水色の自転車連ねて、

歌劇を見に行こう。

昨夜の月は真っ白で純粋だったから、

今夜、灰色の空にかかる落書きのような虹が、

僕を、「寂しさ」使いの主人公にしてくれる。

そうして、どこからか聴こえてくる

調子っぱずれな明日を夢見る歌声に

胸の前で両手の指を堅く握り締め、


祈るべき人を、心から泣かそうとしている。


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