何かに巻き込まれるかもしれないし
誰かが倒れる音が聞こえて、私達はどうしようかと思うも、リオネルが私の口をふさいだまま放そうとしない。
しかもそのまま今度は、するりと手が下の方に降りていき、私のズボンの上から太ももの内側あたりを撫で上げるように触る。
それにぞくぞくしているとそこで更に怒ったようなイリスさんの声が聞こえた。
「この……色欲魔が。一国の、次の王子だというのにこんな事ばかり考えやがって……やはり再調教が必要か……いえ、それよりも私がクラウド殿下から離れることの方が先ですね」
「それは困る!」
そこで、クラウドのまったくダメージを受けていないような声が聞こえた。と、
「やはり倒された振りをしていましたね。大丈夫かと私が様子を見に来るのを待って、そのまま押し倒す気でしたね。ですが……今日という今日は許しません」
「ま、待て、何を……」
「この前のが生ぬるかったようですから、今日は本格的にしようかと思います」
「や、止めろ、この前ので生ぬるいって……」
「大丈夫ですよ。忘れられないように、私が全力でサポートしますから。今後、王として必要な知識ばかりですしね」
「こ、今度は何冊覚えさせる気だ!」
「大丈夫、クラウド様の能力に合わせて私の方で調整を行いますから……あ、セレンでしたか。大体分かりましたので、もう戻っていいですよ。お時間をとらせてしまい申し訳ありませんでした」
イリスさんのその言葉に、セレンが頷いて部屋を出ていく音が聞こえる。
そして、また大きなものを引きずるような音が聞こえて誰かが出ていく音が聞こえる。
どうやらもう隣の部屋に誰もおらず、ここに私達がいてもあまり意味がなさそうだ。
そこでようやく口から手を離されて、
「ぷはっ、酷いよリオネル!」
「いや、うん、なんとなく?」
「なんとなくで私をいじるな! まったくもう……でも、クラウドさん、セレンに夢中にはならなかったね」
「そうだな……単に、昔の“勇者”や“魔王”といったものの好みだっただけなんだろうな。今のクラウド兄さんは一番好みなイリスさんがそばにいるから眼中にないし俺は……ここにいるルカという最高の“相棒”をどうやって表舞台に引きずり出すかで忙しいからそれ所じゃないんだよな」
そうリオネルが私に言う。
どうやら私を目立たせるのに忙しくてセレンどころではないらしい。でも、
「リオネルは、そんなに私と遊びたいんだ。“お子様”だね」
「……本当に“お子様”なのはルカの方だと思うけれどな」
「何だと? ふぎゃあっ」
そこで耳にふうっと息を吹きかけられて私がびくっとしているとリオネルが私から離れる。
それから私の前にやってきて手を伸ばしてきて、その手を取り私は立ち上がる。
そこでリオネルが、
「それでこれからどうする?」
「クラウドさん達があれだし、まだその昔の魔法使いの本には手出しできないようだから……私達もこっそり読みに行かない?」
「確かに先に情報を手に入れておくのは良いな。行ってみよう……何かに巻き込まれるかもしれないし」
「私、寮に帰る」
「さあ、俺と一緒に行こうな、ルカ」
「いやぁあああああ」
こうして何かのフラグを察知した私は、寮に逃げ帰ろうとして、リオネルに手を捕まれ図書館に連行されてしまったのだった。
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