む~
万人を魅了する美貌ではない、そうクラウドは真剣に考えて、
「その“いばら姫”とやらに俺も会ってみた方がいいか。どういった感覚を得るのかが俺も知りたいな」
「……分かりました。では今すぐでよろしいでしょうか」
そこでそわそわしたようにイリスさんがクラウドに答えている。
気になっているらしい。
だがそこで私は気づいた。
「あの、呼び出されるなら私、隣の部屋にいていいですか?」
「ん? どうしてだ?」
「クラウド殿下との関係を、セレンたちに知られたくないので。私はごく普通のFランク最弱魔法使いのモブになるんです!」
私がそう言い切るとクラウドは一度大きく頷いて、
「ではそのセレンという人物に、ルカは俺の“愛人”だと紹介しよう」
「止めてぇええええ」
とんでもない疑惑を私はここでクラウドに追加されそうになった。
冗談とはいえそんなのお断りである。
しかもそれでは目立ってしまう。
あの人クラウド殿下の……ひそひそ。
そんな光景が繰り広げられてしまう事に!
ど、どうすれば……そう思っていると、先ほどから私を抱きしめていたリオネルの腕の力が強くなって、
「兄さん。言っていい冗談と悪い冗談がある」
「お、おう……珍しくリオネルが怒っているな。お前の物は取らないから安心しろ。俺はイリスだけで精一杯だ」
「……知っています」
「……だから悪かった、冗談だからそんな顔はするな。隣の部屋にルカを連れて密着していていいから、ほら、行け」
そう言って私はリオネルと一緒に隣の部屋に放り込まれた。
とりあえずリオネルがどんな顔をしているのか見たかったけれど、私の死角の位置に移動されて全然見えない。
クラウドが焦るくらいって、と思ったのに全然見せてもらえ……
「……むぐっ」
「声を出したら隣に聞こえるから、口はふさいでおこうな」
「む~む~」
そこで私は、リオネルに口を手でふさがれる。
何をする、別に口をふさがれなくても大人しくしていると思っているとリオネルが、こちらから隣の部屋の音が聞こえるようにする。
頭に来たので私は呻いた。
「む~!」
「……」
「む! む~」
私の抗議は聞いてもらえないようだった。
セレンがやって来たようだ。そして、
「ふむ、やはり美人だな。だが……イリスと比べたいからこっちに来てくれ」
「……分かりました。……! な、何を、やめ!」
「まだ俺にはよく区別がつかないから、もう少しこうして」
「! や、やめ、そんな場所を触るのは……生徒が見ているでしょう!」
「大丈夫大丈夫、これくらいは見ておいて将来のために損はないぞ~」
「そんなわけ……むぐっ」
そこで口封じをされたらしいが、じたばたしているような音などが聞こえ、そこでセレンが焦ったように、
「あ、あ、そんな、こんなの、わ、私はどうすれば……あ」
そこで何か大きな音がして、誰かが倒れるような音が聞こえたのだった。
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