万人を魅了する美貌ではない
さて、魔力だけで魔王が“花嫁”を選ぶらしい。
何だか変な感じがするなと思いながら、そこで違和感に私は気付いた。
「今までは“生贄”なのに、“聖者”の場合は“花嫁”なんですね」
「そうだな。あの“聖者”の容姿と魔力、能力は魔王にとって非常に魅力的であるらしい。これまでの文献からはだが。もっとも、魔王になろうとしている者にも好ましいらしいが」
クラウドそう説明をするのを聞きながら、時折リオネルが狙われる事案を考えて私は、
「“勇者”と扱いが違う……」
「それはそうだろうな。“勇者”は“魔王”にとって敵だから、“花嫁”所ではないだろうな」
「でも“勇者”も力だって強いし、リオネルなんてこんなに“可愛く”て“綺麗”なのに! “花嫁”にされてしまっても遜色ないのに!」
そう私は怒りを覚えてしまう。
それくらい私の幼馴染で私が守っているリオネルは“綺麗”なのだ!
最近背が伸びて男らしくなったとはいえ、それでも……と私が思っていると、何者かに後ろから抱きつかれた。
「うんうん、ルカが俺の事をそう思ってくくれているのは嬉しい。というわけでこれからも“一緒”に魔物退治をしたりして遊ぼうな!」
「やだ~、私は、その他大勢の多数派、“モブ”になるんだぁ~」
「“選ばれしモブ”の方が、皆の印象は強いだろうな。よし、それでもいくか」
「いや~」
私はそう言い返して、でも後ろからのしかかるようなリオネルは放してくれない。
重すぎる、私がリオネルにとりつかれて、新たなステージに連れていかれそうになっている所で、クラウドが、
「まあ、その件も含めてまた“魔王”を目指す輩が入り込んでいるよだからそちらの方も対処よろしく、ルカ」
「! そんな!」
「ルカとリオネルがいれば何とかなるだろう」
そう言ってクラウドは面倒な事を私に丸投げした。
私の最弱ライフが潰されようとしている、何かいい方法はない物か、私がそう焦っているとクラウドがさらに、
「そういえばその“いばら姫の騎士”やらなにやら、何処で知った?」
「あ、その辺りは聞いていないのですか。実は……」
と言ってクラウドに説明する。
ついでに、その“いばら姫の騎士”関連に関しては、この学園に寄贈されている昔の魔法使いが書いた書物に記載されている話をする。
その本については、証拠隠滅を“敵”が仕掛けてくるかもしれないので、先に回収と“保護”を行おうといった話にもなる。と、そこでクラウドが、
「それでその“いばら姫”という“聖者”は、代々“勇者”をも魅了すると言われているが、どうだった?」
その問いかけはリオネルに向けたものだったが、イリスさんがびくっとして珍しく不安そうにクラウドを見ていたり、私も私でこう、もやもやとするものを感じたのだけれど、そこでリオネルが私に抱きついたまま、
「うーん、そこまでは。それに俺が魔王だったらセレンは選ばないな。ルカが俺の傍にいるからかもしれないが」
「……万人を魅了する美貌ではない、という事か」
クラウドがそう考え込むように呟いたのだった。
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