外伝・その五十一(超特大航空地政学チート編):国営世界環状空路の本格就航令と、大気の流れを完全包囲して世界をハメ殺す新政庁の天空大物流網
天竺の国営大豆油によって欧州の夜の光源利権を完璧にハメ殺し、大奥での怒濤の葡萄皮数千枚拾いをも生き抜いた正一位・太政大臣たる織田信長。新たなる世紀の盤上へと足を踏み入れた安土城の総大総督府の玉座に座る覇王の視線は、初冬の澄み切った青空が広がるなか、全人類の物流と移動の歴史を五百年先んじて完全白化(ホワイト化)する、次なる未曾有の超特大技術チートへと向けられていた。
元平の御世、新政庁が敷設した第三期海底電信線は地球全域の情報を即時同期し、各地の定期空中蒸気飛脚は重要人物の移動を劇的に加速させていた。しかし、信長の持つ二一世紀の航空工学知識は、単発の往復空路だけで満足するものではなかった。地球規模の巨大な経済圏を一文の狂いも無い精度で永久に統治するためには、地球をぐるりと一周する強大な大気の大流ーーすなわち『偏西風』をはじめとする大気還流を一分の狂いも無い精度で完全活用し、安土からロンドン、新大陸、喜望峰を完全に一本の不滅の空路で繋ぐ前代未聞の航空網ーー『国営空中世界環状空路』の本格就航が必要不可欠であった。
信長は脳内の流体力学、気象予測知識、精度高き航空安全管理の知識を完全同期。国友鍛冶の天才たちと共に、巨大なからくり推進器と最新の多層防炎絹布を誇る超大型空中船を開発。地球規模の気流に乗って無音・爆速で地球を一周し続ける、全人類初の大航空物流組織ーー『国営空中旅客海運総局』の本格定期運航を電撃的に発令したのである。
「ーー信長様! 畏れながら、地球の気流を一割の狂いも無い精度でハメ殺し(制御し)、世界をわずか数日で一周する不滅の環状空路、ここに十割完全に本格就航いたしました! 各地の国営大空管制塔との同期も一分の狂いも無い精度で完了しております!」
空中旅客海運総局の初代総裁に就任した近代官僚(蒲生氏郷ら)が、精緻を極めた地球環状大空図を抱え、興奮のあまり大粒の涙を流して玉座の前に平伏した。
信長は不敵な笑みを浮かべ、総大総督の直衣を翻して安土城の天守閣(国営大空管制塔)の最前線へと立った。信長が自ら、二一世紀の知識を具現化させた巨大な大空進発の鐘を一文の狂いも無い手際で力強く打ち鳴らした瞬間、蒸気発動機の規則正しい重低音を響かせた巨大な黄金色の空中船が、大空の偏西風のうねりへと爆速で即時同期。海路や陸路の障壁、嵐による不意の遅延(ブラック環境)を十割完全に無視し、地球の空を滑るように激走する大航空物流の刃が、戦う前に世界の海の常識を完璧にハメ殺した(過去のものとした)のである。その圧倒的な大空の奇跡を目撃し、僅か数日でロンドンや新大陸から安土へと同期(空輸)された最重要物資を手にした世界中の商神や近代官僚たちは、驚愕のあまり腰を抜かしてその場にひっくり返った。
「な、何ということだ……! 船でも陸路でもなく、大空の風の道を完璧に手懐けて地球を一分の狂いも無い速度で一周させているというのか!? 我々が数百年かけて培ってきた航海の常識など、この世界環状空路の前には戦う前に児戯に等しい! 織田の航空内政、マジ神仏……!」
南蛮の商神たちが涙を流して管制塔の床に平伏するなか、信長が提示したのは、世界を恐怖させる軍事力ではなく、新政庁が全額保証する『国営空中世界環状空路・地球全域安全航空の共有基本法度』であった。他国が移動の過酷さと時間のブラックな浪費に喘いる段階で、新政庁は地球規模の富と要人を笑顔のまま数日で世界全域へと循環させ、先回りの経済主導権を握ることができる。織田の圧倒的な「未来技術・生存保証・ホワイト雇用」の航空物流の前に、欧州の旧式な世界覇権は、戦う前にこの大空を往来する黄金の空中船の前に完璧にハメ殺されるのだった。
ーーその頃、地球規模の巨大な大空物流無双を空中から完璧に詰ませ、世界の民から「天空の神仏」と唱念されていた最高権力者、織田信長は、安土城の総大総督府の裏手にて、再び別の意味での滝のような冷や汗を流していた。
世界の移動環境の完全白化という偉大なる計略を見事成し遂げた信長であったが、夜の大奥に足を踏入れた瞬間、帰蝶、直虎、英国王女、そして甲斐姫らが、本格的な真冬の寒さを凌ぐために設置された、大奥特製の超巨大「からくり国営特大炬燵」と、国営植物園で収穫されたばかりの大量の「極上蜜柑」を前に、一分の狂いも無い完璧な温もり包囲網を敷いて待ち構えていたのである。
「信長様、お帰りなさいませ。国営空中世界環状空路による未来の大空物流ハメ手、誠に見事な計略にございました。さあ、今夜は大奥一同、真冬の寒さを炬燵の中から芯から温める『初冬の国営炬燵開き大会』の温もりを執筆(開催)いたしますが……労働者にございます我らの有給休暇および冬の安息の規律に基づき、十割黄金の炬燵の中に潜って動かなくなった我らのための、大量の炬燵の一分の狂いも無い『炭火・温度のからくり管理』、ならびに深夜の炬燵の敷物の下に散らばった数千個の蜜柑の皮の国営手拾いと敷物の手洗い片付けの交代制職務、本日の深夜番は信長様、あなた様に十割完全に割り振られておりますよ?」
帰蝶が最高の笑顔で、すでに蜜柑の汁と皮で散らばった広大な特大炬燵と、一分の狂いも無い手拾いでの清掃指示書を信長に手渡した。
「ま、待て……! 余は今、地球の大空に不滅の環状空路を本格就航させ、世界の物流概念を戦う前に完璧にハメ殺してきたばかりなのだぞ……!? なぜ戻ってきた瞬間から、長椅子から一歩も動かぬお前たちのために、一人で真夜中に赤子をあやし、冷え固まった蜜柑の皮のゴミを拾うために広大な炬燵の中に潜り込み、四つん尋(つん這い)になってタワシでガシガシと畳を磨くという過酷な単独職務に奔走せねばならぬのだ!」
信長の悲痛な叫びに対し、十五歳に成長した甲斐姫が、蜜柑の皮を美しく剥きながら笑顔の先回り牽制を仕掛けてきた。
「太政大臣たるもの、世界環状空路の利潤を精査する前に、まずは身内の初冬の一分の狂いも無い衛生環境を一から完璧に白化(ホワイト化)していただかねば困ります。さあ、一皮の拾い残しも許されぬ炬燵の中の潜行の激走、お励みください!」
英国王女も「コタツ、マジ神仏! ノブナガ様、みかんの皮お片付けよろしく!」と、炬燵の中で丸くなりながら完璧な笑顔を見せている。
「世界をハメ殺すより、深夜に一人で大奥の炬燵のみかんの皮を拾う方が十割むずかしいわ! というか、蜜柑の匂いで余の再生したばかりの限界胃壁がストレスと真冬の激務で本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよーー! 誰か、余の胃薬(胃壁保護剤)を世界環状空路の爆速で持ってきてぇーー!!」
昼間は冷徹に地球規模の天空物流を統治する総大総督でありながら、夜は大奥の完璧なる冬の規律の前に白目を剥き、嬉しさと緊張の冷や汗で炬燵の中をピカピカに清掃する覇王信長。だが、ぐっすりと眠る子どもたちの愛らしい寝顔と、至高の炬燵開きを楽しそうに満喫する妻たちの笑顔を見つめ、胃壁の激痛を堪えながらも、心の底から幸福なる微笑を浮かべるのであった。
(外伝・その五十一・超特大航空地政学チート編・完)




