外伝・その四十九(超巨大航空チート編):第二期国営空中蒸気飛脚・東亜環状線の運航令と、亜細亜の空を完全包囲して世界をハメ殺す大空の物流覇権
国営健胃甘味薬(至高の白糖大黄菓子)によって欧州の王侯貴族を胃袋から完璧にハメ殺し、大奥での怒濤の湯たんぽ熱湯注水と柚子皮拾いをも生き抜いた正一位・太政大臣たる織田信長。安土城の総大総督府の玉座に座る覇王の視線は、初春の清々しい風が城下を優しく包み込むなか、亜細亜全域の物流と移動の歴史を五百年先んじて完全白化(ホワイト化)する、次なる未曾有の超巨大航空地政学チートへと向けられていた。
元平の御世、新政庁が敷設した第三期海底電信線は大洋を即時同期し、世界環状空路は地球規模の超高速移動を可能にしていた。しかし、信長の持つ二一世紀の航空工学知識は、東西を結ぶ大動脈だけで満足するものではなかった。日ノ本、清国(中国大陸)、天竺、南洋諸島、そして豪州にいたる、我が新政庁の巨大な亜細亜経済圏を一文の狂いも無い精度で永久に統治するためには、激しい『季節風』の猛威による海路の遅延や不意の停滞(ブラック環境)を十割完全に無視し、広大な海域を一網打尽に繋ぐ前代未聞の航空網ーー『第二期国営空中蒸気飛脚(東亜環状線)』の敷設が必要不可欠であった。
信長は脳内の流体力学、気象予測知識、そして広域安全管理の知識を完全同期。国友鍛冶の天才たちと共に、気流の激しい亜細亜の空を安定して激走できる特製のからくり推進器と、多層防炎絹布を誇る最新鋭の大型空中船を開発。偏東風や季節風のうねりを一分の狂いも無い精度でハメ殺し(制御し)、亜細亜全域を時計回りに爆速で周回し続ける、全人類初の広域航空物流組織ーー『国営空中旅客東亜総局』の定期運航を電撃的に発令したのである。
「ーー信長様! 亜細亜大空開拓を率いる蒲生氏郷殿、ならびに明智光秀殿より電信! 亜細亜の空を包囲する不滅の東亜環状線が十割完全に繋がり、全域への『物資即時同期網』が、戦う前に盤上で完璧に完成いたしました!」
内政副総裁の直虎が、安土城の最奥に設置された新型のからくり多重電信印字機の前にて、興奮のあまり大粒の涙を流して平伏した。
信長は不敵な笑みを浮かべ、総大総督の直衣を翻してその巨大な電信盤の前に立った。
「うむ、直虎よ。南蛮の国々や欲深き大国どもが、天竺の紅茶や南洋の真珠を運ぶために、季節風の逆風に阻まれて数ヶ月の港湾待機(ブラックな時間浪費)を強いられている暗黒の時代において、我が新政庁はすでに亜細亜の風を十割先回り封殺する大空の回廊(東亜環状線)を完成させたのだ。これで亜細亜全域の物流覇権は、一兵も損なうことなく我が新政庁の盤上で完全に詰んだ」
信長が自ら電信の鍵盤を叩き、天竺および豪州総局へ向けて大空の定期便始動令を送信した。その僅か数秒後、電信機が「カタカタカタ……!」と激しく音を立て、万が一の遅延も無く、天竺国営製茶場の最高級茶葉や豪州の極上羊毛が、わずか数日の空路で安土へと十割完全に同期(空輸)された旨を一分の狂いも無い精度で印字し始めたのである。
その様子を目撃していた武田勝頼や上杉謙信ら近代官僚、そして安土に滞在していた世界中の商神たちは、驚愕のあまり腰を抜かしてその場にひっくり返った。
「な、何ということだ……! 船を一切使わぬというのに、天竺の至高の紅茶や豪州の富が、大空を滑るようにして今この瞬間に安土へと直接同期しているというのか!? 我々が数ヶ月かけて運んでいた航海の常識など、この東亜環状線の前には戦う前に児戯に等しい! 織田の航空地政学、マジ神仏……!」
南蛮の商神たちが涙を流して畳の床に平伏するなか、信長が提示したのは、世界を恐怖させる軍事力ではなく、新政庁が全額保証する『国営空中東亜環状線・広域安全航空の共有基本法度』であった。
他国が風待ちによる足止めによって商業の停滞を余儀なくされている段階で、新政庁はその日のうちに不滅の物資を亜細亜全域へ循環させ、先回りの経済のハメ手を打つことができる。織田の圧倒的な「未来技術・即時同期・ホワイト雇用」の航空物流の前に、欧州の旧式な世界覇権は、戦う前にこの大空を激走する黄金の空中船の前に完璧にハメ殺されるのだった。
ーーその頃、地球規模の巨大な航空無双を空中から完璧に詰ませ、世界の民から「天空の神仏」と唱念されていた最高権力者、織田信長は、安土城の総大総督府の裏手にて、再び別の意味での滝のような冷や汗を流していた。
亜細亜の空の完全白化という偉大なる計略を見事成し遂げた信長であったが、夜の大奥に足を踏み入れた瞬間、帰蝶、直虎、英国王女、そして甲斐姫らが、先回り環境保護令で清らかに育てられた安土特選の藺草を用いた大量の「新しい青畳」を前に、一分の狂いも無い完璧な温もり包囲網を敷いて待ち構えていたのである。
「信長様、お帰りなさいませ。亜細亜の空を貫く環状空路による未来の航空ハメ手、誠に見事な計略にございました。さあ、今夜は大奥一同、初夏の訪れを前に全ての畳を新調する『春の国営畳替え大会』の清々しさを執筆(開催)いたしますが……労働者にございます我らの有給休暇および春の安息の規律に基づき、十割馨しい青畳の上から動かなくなった我らのための、大量の古畳の一分の狂いも無い『からくり搬出・新畳の国営寸法同期』、ならびに深夜の床板の埃払いと、女女(女たち)が落とした数千個の着物の飾り紐の手拾い片付けの交代制職務、本日の深夜番は信長様、あなた様に十割完全に割り振取り(割り振られて)おりますよ?」
帰蝶が最高の笑顔で、大奥の広大な御殿を埋め尽くす大量の埃まみれの古畳と、一分の狂いも無い手作業での床下埃払い指示書を信長に手渡した。
「ま、待て……! 余は今、亜細亜の空に環状空路を敷き詰め、世界の覇権国を戦う前に完璧にハメ殺してきたばかりなぞ(ばかりなのだぞ)……!? なぜ戻ってきた瞬間から、長椅子から一歩も動かぬお前たちのために、一人で真夜中に赤子をあやし、埃が立ち込める床下を四つん尋(つん這い)になって箒で一人で掃き続け、数千個の飾り紐のゴミを爪先で一人で拾い上げるという過酷な単独職務に奔走せねばならぬのだ!」
信長の悲痛な叫びに対し、十五歳に成長した甲斐姫が、新しい青畳の上にゴロリと寝転び、藺草の甘い香りを吸い込みながら笑顔の先回り牽制を仕掛けてきた。
「太政大臣たるもの、国営東亜空路の利潤を精査する前に、まずは身内の初夏の一分の狂いも無い衛生環境を一から完璧に白化(ホワイト化)していただかねば困ります。さあ、一筋の埃の残しも許されぬ床下清掃の激走、お励みください!」
英国王女も「タタミ、マジ神仏! ノブナガ様、お床下お掃除よろしく!」と、新しい畳に頬を寄せながら完璧な笑顔を見せている。
「世界をハメ殺すより、深夜に一人で大奥の床下の埃を払う方が十割むずかしいわ! というか、埃の匂いで余の再生したばかりの限界胃壁がストレスと初夏の激務で本当に戦う前に跡形もなく崩壊しちゃうよーー! 誰か、余の胃薬(胃壁保護剤)を東亜環状空路の爆速で持ってきてぇーー!!」
昼間は冷徹に地球規模の航空物流を統治する総大総督でありながら、夜は大奥の完璧なる春の規律の前に白目を剥き、嬉しさと緊張の冷や汗で床下をピカピカに清掃する覇王信長。だが、ぐっすりと眠る子どもたちの愛らしい寝顔と、至高の青畳の香りを嬉しそうに楽しむ妻たちの笑顔を見つめ、胃壁の激痛を堪えながらも、心の底から幸福なる微笑を浮かべるのであった。
(外伝・その四十九・超巨大航空チート編・完)




