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まだ君が僕を呼んでいる  作者: 甘宮るい
第二章「それでもそれは、正しい選択」
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第二章/第六話「たとえ今日が雪の降る夜でも、彼女はきっとここにはいない」



 カフェからの帰り道、わざと街灯のない裏道を進む。工事現場の周りのフェンスがあの屋上のフェンスと重なって手を伸ばしたくなった。


 結論としてノアは、ハーフであるということに悩んでいた。

 慕ってくれる大学のみんなにも日本人だと扱われていないようで、疎外感を覚え距離をとってしまうらしい。それなのに本音が言えず仲良くするしか出来ない。勤めていたバイト先では日本語が話せるだけですごいと騒がれ、それだけでも嫌になってしまう、心の小さい自分がノアは嫌になった。国際結婚をした父親と母親は一時期別居をしていたが、同居し始めてから問題が多発。日本食をあまり食べないノアの父親は、日本食しかほとんど作らない母親に怒ってしまったそうだ。その日は父親のほうがすぐに謝ったらしいが、彼女はそれを許さなかった。

 それからノアの弟がいじめられるようになってノアの母親はどんどん精神を病んで、すぐに声を荒げるようになってしまったそうだ。それからノアはハーフであるということを今まで以上にコンプレックスだと思うようになってしまい一層、人と関わるのが怖くなったと言う。

 どうしようもなくなってきたころに、両親の間で離婚の話が出始めた。22歳になったとき、二重国籍の自分がどちらを選ぶかをゆっくり考えられると思っていたノアは、追い詰められた。やがてどちらでもないのではないか、という考えに至るようになってしまったそうだ。どちらでも、ハーフである自分が人と距離をとってしまうのではないか。そうすれば、自分はどうしていいかわからない。そう思ったノアは、親戚の家へ旅行に行った。一人で向かうと親戚たちの対応は少し良くなかった。その後、店に行ったりイベントに参加したりしてみたが、ノアは自分がアメリカの人たちとも自分が距離をとってしまうことに気が付いたらしい。

 折角の夏休みを少し無駄にした気分だったよ、とノアは冗談のように言った。ノアは家庭のことだけで悩んでいたのではなかった。学校でのことも家でのことも含めて、自分について悩んでいた。

 俺はこれからゆっくり探していこうだとか、結論が出たわけじゃないだとか、そういった言葉を捻り出した。ノアの笑みが諦めた表情に見えて、その悲しげな顔がノアの意思を表していて、俺は益々どういっていいのかわからなかった。

 カフェオレなんて味わう余裕もないまま、21時過ぎまで逃げるように関係ない話をした。ノアの話を聞いて、時には自分が話した。噛み合っていた、と思う。


 ぼぅっと空を見上げる。まだ雪なんて降る訳がない時期なのに、雪が降ればいいと思った。冷凍庫のように寒ければ、あの日のことも今日のこともすべて冷凍して仕舞っておけるかもしれない。

 何だか真っ暗の空間に一人で浮かんでいるような気がして、明るい大通りに出てコンビ二に立ち寄った。肉まんは無かった。焼き鳥を購入したけれど、どうしても肉まんが食べたくてスーパーにも立ち寄った。家はもう通り過ぎていた。閉店ギリギリに滑り込んで、肉まんを買って急いで家に帰った。冷凍食品の肉まんを電子レンジで暖めて口に運んで漸く息をついた。

痛いくらいに実感する。はふはふと肉まんを食べてタバコを口に突っ込むと咳き込んで、楽しそうに笑って踵を返した会長様はこの世界に居ない。


二重国籍のお話です。親友ノアくんが打ち明ける様子は、主人公のぬぎやまが受け止められない様子を示す意図で、描写しませんでした。


次の投稿も今月のうちに。

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