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ワタクシ、少々ブクマが好きなものでして。
皆さま、寒い日もお疲れ様です。ワタクシです。
シーキス艦長の軍艦は、シャイカ地方南東部の軍港へ到着しました。
なんでも、軍艦が街の港へ着くと大事になるとかで。
ワタクシ、クルーの方々に続いてガン爺さんと一緒に軍艦を降りました。
「なんや仰々しいとこやな!もっときらびやかなとこかと思っとったわ!」
軍港なだけあり、警備が頑丈で御座います。
さっきからワタクシ、警備の方々の視線を結構集めております。
ガン爺さんの方が騒がしいと思うですが。もしかして、ゾンビだとバレているのでしょうか。
「おうおう皆!恩人を困らせてはいかん。この方は我々をニテンから助けて頂いたのだ!それに魔族感応結界も通っているのだから怪しむ所は無いだろう」
ワタクシが視線に困っていると、シーキス艦長が助け船を出してくれました。さすが出来る男!しかし、魔族感応結界なんてものがあるのですね。ワタクシ、聖属性だったから反応しなかったのでしょうか。
「いやぁ、皆がすみませんでしたな」
「いえいえ、お構いなく。それよりも、ここから帝都へはどの様に向かうのでしょうか」
「おお、心配させてしまって申し訳ない。帝都までは魔導車を用意しているのですが、少々ここでも仕事がありましてな。暫く時間が掛かりますので、退屈しのぎに施設内を案内させましょう」
シーキス艦長が手で合図を出すと、傍にいた女性の兵士が一歩前へ出てこられました。
「施設内を案内させて頂きます!情報管理官フラミュです」
フラミュさんはまだ10代の様な見た目で御座います。
ガン爺さん、意外にもデレデレされている様子。
フラミュさんに案内されている途中、鼻腔をくすぐる良いにおいがして参りました。
「フラミュさん、この匂いは一体何でしょうか?」
「これは、カレーの匂いです。軍港なだけあって施設内で魚の養殖もおりますので、ここのシーフードカレーは絶品なんです!」
絶品!ワタクシ、興味津々!
「ほぇー、食ってみたいのぉ!」
「食べてみたいですね」
ガン爺さんとも声が揃いました。
「勿論、お二方の分もありますので、後程のお楽しみに」
ワタクシ感激!
早く食べたい。次はどこへ行くのでしょうか。
「今回は特別に、ここへ案内する様に言われてました。先に軍艦内で捕らえていた捕虜の特級収監室です。ニテンが我々を沈めきれなかった理由でもあります。我々にも決定打となるような火力が無く、ほぼ膠着状態でしたが……」
収監室にしては綺麗な扉です。その扉をフラミュさんが開いて行きます。
室内は……何と豪華な内装でしょうか。
部屋全体が輝いているかの様な……何でしょうコレ、実際に輝いてません?ワタクシの錯覚?
ワタクシがフラミュさんを見ると説明を続けて下さいました。
「ここは、魔力封じの部屋なんです。この輝きが魔力線をジャミングし、且つ発せられた魔力そのものを高速で吸収し、連鎖するようにして勢いを減衰、霧散させてしまうんです。かなりのお金が掛かっているんですよ。さ、どうぞこちらにお入り下さい」
フラミュさんは、そう言って部屋に入るとワタクシの手を掴み、部屋へ引き入れてくれました。
あっ、これはまさか恋の始まりでしょうか。
そんな。ワタクシはゾンビですので、禁断の恋になってしまいます。
そう思うと胸が苦しく……胸が……これは。
「おい、ねーちゃん!綿串が苦しんどるやないか!なにしたんや!!」
危ない!このままではガン爺さんもこの部屋に入ってしまう。
すると、どこからともなくガン爺さんの両脇に軍人が現れ、ガン爺さんを抱えて何処かへ連れていってしまいました。
「すみません。綿串さん。私はジャミングを防ぐ装置を持っているので平気なんです。あなたの様に身体能力を向上させるタイプには、ここのジャミングは良く効きますよね」
「フラミュさん。一体、ワタクシに何を……」
フラミュさんは溜め息をついたあとに、説明を始めて下さいました。
ワタクシ、やはり素性がバレていたのでしょうか。
「簡単に言えば、あなたの潔白を証明して頂くのが目的です。ニテンが我々を攻めきれなかった理由がこの部屋に、そこに居ます。今時鑑定が通用しない冒険者なんて珍しくも無いですが、タイミング的にあなたの登場は、コレを取り返す為の魔族側の作戦とも取れるのです」
フラミュさんが指で示した場所には、3本の角がありオッドアイの男の子がおりました。右目が青、左目が黄色。なかなか綺麗な瞳で御座います。
この部屋で平気でいるという事はフラミュさんが持っている物と同じ装置を持っているのでしょうか。
「この魔族の子供がどうかなさいましたか」
ワタクシが苦しみながらも、フラミュさんに質問をしたところ、魔族の子がワタクシに対し反応しました。
「子供ではないぞ!無礼なのっぺり野郎!!お前みたいに色の薄い奴は、陰も薄くて辛気臭くなってしまうわ!あー臭い臭い」
「なんと、ワタクシ。こんな口の悪いお子さま初めてです!流石は魔族の子供。口の悪さは一級品で御座いますね!育ちの悪さが滲み出ております!フラミュさん!一体この魔族の子供が何だって言うんです!?」
只今、ワタクシはこの部屋による苦しみよりも魔族の子供への憤りの方が勝っております。
「はい。この子は前魔王の子供です。この子こそがニテンを出撃させ私の仲間達を、他の艦隊を沈めさせた張本人なのです。とても憎い相手ですが、我々も軍人の端くれ。人質と割りきってこの部屋に隔離しています」
えっ、前魔王のご子息様?!
「ふんっ、彩りの勇者達がいなければ、余の側近とニテンで貴様らを殲滅出来ていたのだ!」
「えぇ、前魔王の子供がニテンの頭上に現れる様なバカで非常に助かりました。貴方の側近も間の抜けた感じでしたし、今頃は我々を逃がしてくれた彩りの勇者達に倒されている事でしょう」
あぁ、話が入ってこないですね。ワタクシ、どうしましょう。
こうなったらやはり……全力でしらばっくれるしか御座いません。取り敢えず話題を変えましょう。
「へー前魔王の子供ですか。議論が白熱しているところ申し訳御座いませんが、フラミュさん。ワタクシはいつまでこの状態なのでしょうか。潔白を証明するには一体何をすれば宜しいのですか」
ワタクシが声をかけるとフラミュさんはハッとした顔をし、手を上げ何処かへ合図を送りました。
あら、ようやく苦しみが消えました。ワタクシ、スッキリ。
「取り乱してしまってすみません。先程の綿串さんの反応及びこのバカの反応を見て、貴方は魔族側の見方で無いと判断致しました。このバカへの侮蔑は本物でした。言っておりませんでしたが、私は人のクセや仕草から嘘をついているか見抜く術を持っているんです。魔力封じの部屋では余程偽装できないので、こういった方法を取らせて頂きました。誠に申し訳御座いません」
えっ。前魔王ご子息様への侮蔑が本物って……
今、言わなくても……もう、ワタクシ後戻り出来ません!!
「いえ、その様な事情があったのであればワタクシ、構いません」
ワタクシ、この後どうしましょう。とほほ。




