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15)藤村美雪

*前回までのあらすじ*


 忘れ物を取りに夜の学校を訪れた幹原。

 そこで、教室で居眠りしていた吉田と共に、女の子の幽霊に遭遇する。

 幽霊は、何故か二人に悪意を向けてきて、学校に閉じ込められて……。

 何とか幽霊を迎撃しつつ、二人は幽霊の悪意に晒されながら出口を探します。

 けれど出口は全て幽霊によって出られなくされていました。

 突破口を切り開くべく、幽霊の情報を得る為に、二人は新聞部と資料室へ。

 資料室では、幽霊の死因がついに判明して……?


 今回、吉田視点です。


 俺は、見つけた彼女の事故の記事とその関連記事を幹原に見せながら、考える。

 新聞では名前を伏せられているけれど、学校新聞のほうではきちんと名前が載っている。


 藤村美雪。

 十六歳。

 一年二組。

 図書委員。

 

 ……十二年前の在校生か。


 写真の優しげな笑顔からは、俺と幹原への悪意は感じられない。

 まぁ、当然だよな。

 写真なのだし。


 俺と幹原と、この藤村との接点はないように思える。

 同じ学校で、同じ一年二組だけれど、それだけだ。

 年代が違うから、同級生というわけでもない。

 彼女が生きていた頃、俺と幹原はまだ小学生にすらなっていないのだから。

 生前、彼女と知り合っている可能性はほぼないと思う。


 高校生と幼児が出会うとしたら、どこだろう。

 幼稚園へのお迎えに、親の代わりにくる等がありえるのか?

 彼女に一回り歳の離れた妹弟がいたらの場合だけれど。

 歳の離れた兄弟は、意外とよくいるし。

 俺の母と叔父さんが確か一回りぐらい離れてたと思う。昔はよくほんとのお兄ちゃんみたいに遊んでもらったし。

 片山の妹もまだ幼稚園だ。

 でも幼稚園の送り迎えで俺と藤村が遭遇する場合、藤村の妹弟が同じ幼稚園に通っていないと成立しない。

 

 ……無理がありすぎるよな。


 同じ高校に通っていたとはいえ、地元とは限らない。

 天文学的偶然でどこかで会っていたとして。

 高校生が幼児に何かされて、亡くなってから、報復をしようと思うだろうか?

 絶対にないとはいわないけれど、まずありえないと思う。


 とすると、生前は関係ないのか?

 もしもこの学校で彼女に会うとしたら、文化祭だろうか。

 卒業生はもちろん、文化祭のときは誰もが自由に校内に入れるし。

 俺がこの高校に初めてきたのは中学生の時だ。

 受験する前に色々と高校を見て回っていたから、その時はうちの学校も当然文化祭のときに見に来ていた。

 でもその時は、何の気配もなかったと思う。

 俺はこんな体質だから、暗い気配がするところは出来る限り避けている。

 この学校にはそんな気配は感じなかった。

 彼女が亡くなったという裏門を見ても、何も感じない。

 何度か使ったこともあると思うけれど、その時も特に異変はなかった。


 生前も、今も。 

 俺も幹原も、彼女との接点がわからない。

 幹原が何かするとも思えない。

 仮に何かあったとして、今日まで何もなかったのだから、彼女に原因はないと思う。

 俺達が幼児の頃の交通事故だ。

 今日が命日だというわけでもない。

 少なくとも、命を狙われるほどに憎まれるような何かをやらかしようがないはずだ。

 

 ……名前と死因がわかっても、問題が解決しないな。


「綺麗な人だよね」


 写真を見ていた幹原が、ポツリと呟く。

 見る所、そこか?

 

 そう思いつつ、俺はもう一度彼女の写真を見る。

 ……確かに美人だね。

 教室で睨まれた時は、悪意の塊を感じで吐き気がこみ上げてどうにもならなかったけれど。

 こうして落ち着いて写真を見ると、艶やかな黒髪と、理知的な瞳が魅力的な人だと思う。

 

「どうして、彼女は夜の学校にいたんだろう?」

「ん? 幽霊だからじゃないか?」

「ううん、ちがくて。ほら、ここ。事故の時間がね、夜というか、夕方かな? でも、十九時頃だと、もう暗くなっちゃうよね」


 俺は幹原の指した新聞記事の切抜きを読み直す。

 確かに、事故の発生時刻が微妙だ。

 部活動か何かで遅くなったんだろうか。

 正門でなく裏門で事故に合ったことも気になるといえば気になる。

 でも部活は書道か。

 書道で遅くなる事ってあるんだろうか。

 運動部ならともかく。

 あぁ、でも。

 俺も美術部でついつい、遅くまで描いている事があるんだから、それと同じか?

 図書委員も、俺が知らないだけで遅くなることもあるのかもしれない。

 あ。

 まさか。


「時間、か……?」

「吉田?」

「俺達が学校にいた時間が関係してるんじゃないか。彼女が事故に合った時間に近いだろ」

「そういえば、わたしが学校に来たのって、暗くなっちゃってたから、そのぐらいの時間だったかも」

「だよな。俺も寝てたから正確な時間は覚えていないけどさ」

「でも、十九時ぐらいだったとして、どうして彼女はわたし達に怒ってるんだろう?」

「それは……」


 俺は思わず言葉に詰まる。

 裏門なんて使ってないし、俺は教室で寝てただけだし。

 幹原は忘れ物をとりに来ただけ。

 唯一の接点は、彼女が事故にあった時間と俺達が学校にいた時間が近いということ。

 これだけで憎しみを向けられるなんて意味不明だ。


「もう少し調べよう。十二年前の卒業アルバムとかね」


 俺は資料室の棚を探す。

 きちんと整理された棚からは、十二年前の卒業アルバムがすぐに見つかった。


「あ、遠足の写真だね。楽しそう」

「俺らも行ったよな。動物公園」


 幹原が彼女を見つけて、写真を指差す。

 そこは俺達もいった春の遠足で、動物公園だ。

 数匹のウサギと一緒に、数人の友達と笑っている写真はとても楽しそうだ。

 藤村の隣にいる女の子は、癖っ毛でなんとなく幹原に似ている。

 美人の藤村に負けず劣らず可愛らしい。

 その隣の男子生徒は……。


 ……叔父さん?


 俺は、彼女の隣でウサギを抱いている男子高校生を見る。

 母の歳の離れた弟で、俺にとっては叔父さんに当たる人に良く似ている。

 ただ、いつも会っている訳じゃないし、随分若いから絶対とはいえないけれど。

 俺と同じぐらいの背格好で、少しだけ、髪が茶色い。

 生まれつきの髪色で、染めたわけじゃない。

 俺も、俺の親もそうだから、遺伝だと思う。


「ちょっと、卒業生一覧見せて」


 幹原に断りを入れて、俺は卒業生名簿をチェックする。

 母方の名前、なんだっけ。

 いつも叔父さんとばかり呼んでいて、苗字がすぐに出てこない。

 それでも一覧をずっと追うと、ピンと来る名前があった。


『宮崎裕二』


 そうだ。

 やっぱり叔父さんだ。

 母がいつも叔父さんを裕二と呼んでいたし。

 年齢的にも、たぶん合っている。


 叔父さんは、かなり若い。

 正直、叔父さんと呼ぶよりお兄さんと呼びたくなる人だ。

 地元で雑貨屋を経営してて、昔は玩具をよく貰ってた。

 玩具のほとんどは叔父さんの手作りだと知ったときは、かなり驚いた。


「知っている人なのかな?」

「うん。この写真の人、俺の叔父さんだね」

「お友達だったのかな」

「隣に写ってるから、仲は良かったんじゃないかな」

「喧嘩しちゃったのかな?」

「なんで?」

「吉田と叔父さんって、なんとなく似てるから。髪形かな? だから間違えて、怒ったのかなって」

「そうか? 髪の色ぐらいだと思うけど。あとは背か? どっちかっていうと、この子と幹原が似てないか?」


 俺は、癖っ毛の女の子を指差す。

 瞬間、幹原が真っ赤になった。


「わ、わたし、こんなに可愛くないよっ」

「癖っ毛なところとか、小柄な所とか、かなり似てるよ」

「か、髪型だけなら、そ、そうかもっ」


 わったわったと、幹原が慌てるから、俺は思わず吹く。

 この写真の子よりも幹原が可愛い。

 口に出して言ったらもっと慌てるだろうから、黙っておくけど。

 言わない代わりにぽふぽふと頭を撫でると、幹原がより一層真っ赤になって完全に固まった。


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