エピローグ
「で……結局またここに戻るわけな」
白で埋め尽くされた天井から視線を下げて、俺は目の前に居る雄一に不満を口にする。
ガリガリ男は俺の不満を聞いて意地悪そうに笑った後、ふぅと息を吐いた。
どうやら完治したようで、今はもう包帯塗れにはなっていない雄一。
オークの残党を狩りつつ俺の入院費を皆と稼いでくれている。
くそっ。盾要員だと認識してたのに頭が上がらない。退院したら彼の地位を見直さざるをえないようだ。
「でもよかったよ。そんな重症にならなくてさ。背中の傷、塞がるんだろ?」
背後に放った手榴弾の爆発で、背中の肉が焼け付いていたらしい。
幸い、致命傷と言うほどではなく、全治何週間。
痕は残るだろうが通常生活はすぐに出来るのだとか。
暦の方がまだ重症らしい。といってももう動けるくらいにはなっているらしいが。
「お前、カイザーマウスからこっち見せ場もなんもなかったよな」
「現実の怪我が宿屋一泊で治るくらいならよかったんだけどね、仕方ないさ」
治療代は亨が司会者側から出してくれたそうで、全員入院にもかかわらず追い出される心配はなかった。
雄一たちオーク狩りを行って入院費を稼ぎ始めたくらいから司会者側からの入金はなくなったけど。
ひとまず、俺たちは生き残ったんだ。
隣を見る。そのベットは今、空席だ。
何故かと言うと……
「よぉ~野郎ども。まだしばらくかかりそうね」
つい先日までナスカのベットだったのだが、彼女は一足早くに退院だ。
もともと既に戦闘を行える身体に回復していたので大事を取って一日入院しただけだしな。退院時には雄一も連れだってオーク狩りに精をだしていた。
「どうだ? なんか進展してたか?」
「うんにゃ。初めの町からの難民が数人来たらしいって噂以外は昨日と変わらないよ。ここはまだ安全ってとこかね」
「治り次第次の町に行こう」
「ここが治安悪くなんのはしばらくかかるだろうけど、次の町に着く時間はあるかな?」
ドアを開き、亨がやってきた。
「十分あるでしょう」
「なんだ、あんたも来たんだ」
「いろいろと後始末が大変でね、ようやく一段落しましたんで報告をと」
大切な用件だと、俺は身を起こす。
「バッタさんですが、正式にあなた方と行動する許可を頂きました。今後こちら側から命令があることは無いでしょう。ただ、通常のモニターと同じ扱いにされますが」
つまりは俺たちと同じ冒険者になったということらしい。問題は無い。
「一ヶ月後、本当に俺らは助かるのか?」
「さぁ? それについては何も聞いてませんが、この島にいる限りは心配はないかと」
それを聞いて、俺は残念に思いながらも、少し安心した。
このまま上手くやれば、バッタとずっと生きていられるのだ。
「さぁて、それじゃあ英雄様に戦利品の贈呈と行くかい」
亨が手を叩く。すると、ドアが開き、遠慮がちにそいつは入ってきた。
タンクトップと千切ったジーンズのラフな格好で、恥かしそうにやって来たのは、一人の少女。
可愛らしい笑顔を戸惑い気味に振り撒き、自らが傷つけた子供たちを見て申し訳なさそうに顔を沈ませる。
雄一が誰だあの子みたいな顔をしているので、正体を知ったこいつがどうなるか見ものだ。
「こっちこいよ」
俺は、バッタを呼び寄せる。
「紹介するぜ、これから俺たちの正式な仲間になったバッタだ。それから――――」
言葉を切って雄一が驚く様を観察、ヤバいぐらいに開いた口が笑いを誘う。
自分のことでもないのに得意な気分になりながら、俺は続けて言った。
「――――俺の彼女だ」
ここはリアルでRPGを体験する世界。
脱出する術は無く、リセットの聞かない現実の世界。
それでも、彼女が、そして仲間ができた。
だから、改めて誓おう。
英雄を演じよう。ハッピーエンドに繋げるために。
名前の通り、平和のそして人の環の架け橋になるように――――
この話は一端ここで終わらせて頂きます<(_ _)>
続きを書くかどうかは未定です。
とりあえずしばらくは別の作品を作る予定です。
ご愛読ありがとうございました(>_<)ノシ




