オーク大量発生イベント4
「ひぃ、ふぅ、みぃ……残り八つか」
沢山あった手榴弾はすでに八つになっていた。
オーク戦で暦のフォローが主にすり減った原因だが、あの団体抜けるのに30くらいの犠牲が必要だった。
別に補充するのもありだが、有り金はすでにオーク軍団を倒したときの金だけ。
コレを使って一体いくつの手榴弾が買えることか……俺一人でまたオーク軍団と闘うとなると少々心もとない。皆の治療代も必要になる。
特に四人の治療代なので3000L×4で12000L。
これが一日の治療代である。
払えなくなれば皆無理矢理外に放り出されてしまう。
まぁ今回の作戦が成功すれば皆しばらくこの町にいるだろうし、食事用のお金だけ残して全て手榴弾につぎ込むか。
ベットから身を起こし、自分の体がなんとか動くことを確認した俺は、着替えを済ませて手榴弾を補充しようと部屋を出た。
「久我山君、ちょっといい?」
「え?」
思わずかけられた声にドアも閉めずに反応すると、早百合に連れられた和則がいた。
相変わらずの青いセーラー服の少女は、和則に肩を貸しているせいか少し恥ずかしそうだ。
和則は気にしていない様子で彼女に持たれているが、片足を地面に付けていない所を見ると、まだ完治には至らないようだ。
「やあ、なんだか大変なことになってるみたいだな」
「あ、ああ……知ってんのか?」
返事をしながらドアを閉める。
この個室、雄一たちの収容された大部屋とは造りは同じだが亨曰くこっちの方が値段が高いと言われて焦った。
幸い、俺は治療する必要が無かったので金は取られなかったそうだが。
「さっきの会話聞かせてもらった。お前が入院したって聞いたから心配して来たんだが……大丈夫なのか?」
「ああ、まぁ気絶させられただけだし」
入院といっても治療はしていないので金は取られていないからどこも痛くない。まぁ、仮に取られてもアイツが払っているだろう。
と、思わず俺は先程閉めたドアを見た。
亨がまだ部屋に居る。
あいつはあいつで他にやることがあるそうで、バッタの所までは今回俺だけで行かなければならなかった。
腹の痛みは我慢すればいいのだが、多勢に無勢なのはどうにも出来ない。
手榴弾だけは幾つか用意できるものの、戦力差が開きすぎていてバッタのところまで進めるかどうか分からない。
全員の入院費は亨が持ってくれるらしい。あいつ今回の戦いで60100Lくらい稼いだとか言ってたから五日くらいは余裕がある。
その間、俺はオークを狩って十分な装備を整えてバッタの元へ向えばいい。
そう考えると、少し余裕があった。
バッタが衰弱死してない事を祈るが、こればっかりは俺にはどうしようもない。
俺が行くまで生きててくれることを祈るばかりだ。
「行くんだろ?」
「へ? あ、ああ」
「俺は行けないけどさ、代わりに早百合連れてってやってくれないか?」
「はぁっ!? ちょ、ちょっと待てよ……」
早百合って呼び捨てかよとも思ったが、それよりも美織早百合を連れて行け?
思わず早百合を見ると、彼女も了承しているらしく、やる気に満ちた顔をしている。
「連れて行けって、遊びじゃないんだぞ?」
「知ってるわよ、そんくらい」
「だったら……」
俺の言葉を遮り、今度は早百合が口を挟む。
「あんただって、命かけて和則助けてくれたじゃない。……お礼、したいのよ」
照れくさそうにいう早百合。珍しいくらいにしおらしい。
「だからって、死ぬ確率が高い場所に進んでいかなくても……」
正直、手伝ってくれるのはありがたい。
でも二人になったところであのオークの集団を抜けるのは無理そうだ。
ついでにいえば早百合は弓兵だったはず。
あのオークの大軍に分け入るには不利な装備だ。
さすがにフォローしながらだと一人の方が良い様な気がしてくる。
「なぁに、別に二人っきりで行かせるわけじゃないんだから、素直に喜べ青少年」
と、二人とは別に俺の背後から声が聞こえた。
「うわ、ナスカ!? お前大丈夫なのか!?」
和則たちと反対の廊下からやってきていたのは、まだ少し痛むのだろう。脇腹を押さえたまま壁にもたれているナスカだった。
病院の患者服を着ている彼女は、血色が悪い。
無理してわざわざこの病室前にやってきたのは明白だった。
「私も行くわよ。バッタには問いただしたいことが沢山あんのよ」
「無理だって、お前腹突かれてんだろ!」
「あはは、大丈夫大丈夫。なんか上手い具合に臓器傷つけず突かれててさ、動脈も上手く避けてあるんだと。人間業じゃないね全く」
髪を掻き揚げ壁から身体を離すと、俺の肩に片手を乗せる。
「まぁそういうわけで、どうして殆ど完治しそうな傷をつけたのか聞きたいわけよ」
「いや、つったって……」
「三日頂戴。その間に治すから。お願いだから私も連れてって、リーダー」
ナスカの気迫に思わず気圧される。
どうしたら良いのか俺一人では判断しかね、助けてくれと和則を見る。
「三日後だったら俺もなんとかなるかもしれない。環架、俺からも頼む」
助けを求めた先の答えが一つしかないのなら、もはや俺も頷く以外何も出来なかった。




