オーク大量発生イベント3
……ここは?
「バッタっっ」
慌てて体を起こす。
腹に痛みが走り起ききる前に力が抜けた。
そのまま再びぼさりと背中から何かの上に寝そべる。
「やぁ、気がついたのか」
横から聞こえた声に痛みから我に返る。
首だけを動かし見てみると、奴がいた。
そいつはまるで何事も無かったかのように穏やかな笑みを見せ眼鏡の位置をクイッと直して見せた。
「てめぇ……佐川ぁ」
「そう邪険にしないでください。あの場ではああすることが最善だったんですから」
最善? 俺を攻撃することが最善だった?
「本気で言ってんのかてめぇ」
「ええ、本気です。あなたは周りが見えなくなるところでした。撤退できなければ暦さんも死んでいましたし、あなたはきっとバッタさんを殺していたでしょう」
亨の言葉は事実だった。
暦を殺された時点で俺はバッタを殺しても構わないと思った。
目の前で殺されたんだ。
今まで一緒に過ごしていた仲間を、俺とバッタが命を救った暦を……だから、だからこそ許せなかった。
相手はバッタだってわかっていたし、あいつは嫌々命令に従っただけだって思ってた。
それでも……それでもあの時は頭の中グシャグシャで、後悔するって分かっていてもあいつを殺してやると思い始めて……
今思うとなんて考え無しの行動だったのか理解できる。
理解はできるけど、やっぱり許せない。皆を刺傷し暦を殺し……
「……ん? なぁ佐川、おまえ……今変なこと言わなかったか?」
「変なこと? 何か言いましたかね?」
「ああ、さっきの言葉もう一度言ってくれないか?」
「ええ、本気です。あなたは周りが見えていなかったでしょう。撤退しなければ暦さんも死んでいたところですし、あなたはバッタさんを殺していた……ですかね。細かくは覚えてませんよ。僕だって意識して言ってませんからね」
もう一度聞いてようやく違和感の正体が分かった。
「撤退しなきゃ暦が死んでた……ってことは、生きてんのか?」
まさかとは思いつつ俺は亨の言葉を待つ。
「なんとか一命は取り留めたようです。あなたの持っていた薬が役に立ちました」
安堵に思わず体の力が抜けた。
「無事なんだな……」
「予断は許せませんが、全治数週間。戦闘程度にならおそらく一週間も掛からず復帰できるでしょう。胸元ですし傷が開かなければですがね。心臓に入ってなくてよかったです」
「いいさ、しばらくは皆入院だしな。それで、俺の傷は?」
「そうですね。無理をすれば明日にでも動けます。あまり激しい運動は出来ませんけど、そうなるように突きましたから」
無理すれば……か。
こんなときだからこそ無理しないなんて言ってられるわけが無い。
「なぁ……」
「はい?」
「お前は……PKじゃないのか?」
俺の言葉に、亨は少し考える素振りをして、
「そうですね。しいて言えば、確かにそちら側の人間ですが、僕はフリーです。自由行動が許されているのでイベントを反故されてもそのチームを全滅させるってことはないですねぇ」
「じゃあ……信じてもいいんだな? 次は背後から斬りつけたりしねぇってよ?」
確かに、亨に裏切られたのは予想外だし痛いじゃすまないが、暦を助るためにしてくれたというならまだ許せた。それに……
「俺がバッタを殺すのを止めたってのはどういうことだ?」
「どういうって……あのバッタを消したあなたは後悔するでしょう」
「そりゃ……そうだろうけどよ」
「だったら、最後の賭けにでませんか?」
「賭け?」
亨の持ちかけに怪訝な顔で返す。
よほど食いついて見えたのだろう、亨はメガネを直し厳かに告げた。
「ゲームでよくあるでしょう。敵を説得して仲間に引き込む」
「話聞かねぇんじゃどうしようもねぇだろ」
「ですから、話が通るようにお膳立てをすると言っているのですよ、僕が。当然信じるかどうかは貴方次第ですが」
「バッタはまだあそこにいるのか?」
「ええ。あなた方全員が【死亡】するまであのイベントは消えませんから」
「じゃあ期間を置いて万全の体制でいけるわけな」
「そのとおりです。ですが相手も人間ですよ。あそこにある食料だけで一週間以上は保たないと思われますが」
「備蓄だけなのかっ!?」
「それはそうでしょう。あなた方がいつ来るか分からないですからね、下手に外へ出るわけには行きません」
約一週間。といっても今日から一週間って訳じゃない。
バッタがナスカたちを刺してからすでに数日過ぎている。
となると大体五日くらいがタイムリミットだろうか? 確かに食事を取らなくても数日は生きてられるだろう。
でも……
問題はこいつを信じるか信じないか……信じなくてもバッタはきっと帰ってこない。
同じ帰ってこないとしても、少しは希望の見える方を取りたいじゃないか。
たとえ、結局バッタを殺すことになったとしても……それは俺が選んだ道だから。
後悔は……きっとするだろうけど、恨むのは自分自身だけで済む。
「頼む。やっぱ俺、バッタを救いたい。だから……お前の力を貸してくれ」
俺の言葉に、亨は笑顔で頷いてくれた。
久我山環架
装備:スラッシュソード、厚革の鎧、皮のベルト
所持アイテム:火炎の杖、氷結の杖、雷鳴の杖、ガスマスク、煙球
万能回復薬
魔法:爆裂魔法(手榴弾)× 8
所持金:10L
佐川亨
クラス;冒険者 NPC
装備;ショートソード、アルミアーマー
所持アイテム:青いリュック、火炎の杖、氷結の杖、雷鳴の杖、ピッキングツール ニューナンブ × 2
所持金;2870
松明 × 7
シウレスの森地図 × 1
皮の鎧 × 1
レザーベスト × 1
ショートソード × 1
鉄穂の槍 × 1
テイムモンスター?
アンコウモドキ≪仮名≫ 種族名:パックンアンコウ
入院中
保科雄一
クラス:重戦士
装備:錆びた斧、壊れた鎧
所持アイテム:火炎の杖、氷結の杖、雷鳴の杖
所持金:0L
緋織ナスカ
クラス:侍
装備:刀、鞘
所持アイテム:着替え、干し肉×2
所持金:0L
高杉啓介
クラス:騎士
装備:ショートソード、ショートソード、レザーアーマー
所持アイテム:薬草×5、血清×2
所持金:0L
高杉暦
クラス:槍兵
装備:鋼穂の木槍、厚革の鎧
所持アイテム:火炎の杖、雷鳴の杖、万能回復薬
魔法:爆裂魔法(手榴弾)× 3
所持金:0L
入院費 12000L 支払済み
未収討伐金
オーク一体 50L
環架 290体
暦 87体
亨 1202体




