後
【ガルシア!ガルシア!ガルシア!】
ガルシアがいなくなったわ。
「リサリサ、もう、ガルシアがいなくなっても大丈夫じゃねえ?」
「そうだよ。リサリサ、今度、俺と遊びに行こうぜ」
「俺と遊ぶのだよ!」
パーティーを男で揃えたのは目移りして欲しくなかっただけ・・・
変な女に言い寄られたら、ガルシアは優しいから拒否しないわ。
心配だわ。
【何も分からないくせに!ガルシアの悪口を言うな!】
ガルシアがいないのだったら、また、独りで良い。
私は家出した男爵令嬢だった。
☆☆☆回想
父は軍事貴族だった。
義兄たちは武芸を仕込まれたが、私も例外ではなかった。
『出来損ない!何でこんな簡単なことも出来ない!』
男と同じように剣術を習わされた。
『我がカミユ家は軍事で王家にお仕えする家門だ!女とて例外ではない!』
『はい、お父様』
『いいか、手本を見せる。同じようにやれ!』
ロングソードだ。
『いいか、戦場では!』
いつも戦場ではと口にしていた。
だから、私は聞いてみた。
『お父様はどこで武勲をお立てになったのですか・・・』
そしたら、殴打された。
『出来損ないのくせに!』
『キャア、ごめんなさい。ごめんなさい』
戦争があったのはお父様が生まれるずっと前。
お父様も戦場は知らなかった。
お母様はお父様の言いなり・・・
私はその日のうちに屋敷を出て森に逃げた。
宛てもなく彷徨っていると・・・・捜索に来た義兄に遭遇した。
お父様が武術の才能があると養子にした領民の息子。
そんな義兄が数人いたわ・・・
『やあ、リサエル、屋敷に戻ろう』
『お義兄様、嫌ですわ。もういたくありません』
いつもは優しげだが・・・いきなり手を取られた。
『リサエル、良いだろう。私が跡取りになってやる』
『ダミアン義兄様・・・・や、やめて!』
覆い被されたわ。
一番剣術の見込みのある義兄と夫婦になるとお父様は言っていたわ。
その時、飄々とした声が耳に届いた。
『あれ、何やっているの?彼女嫌がっているように見えるけど、お邪魔ですか?』
それがガルシアだった。
だから、
【助けて!】
と叫んだわ。
「あいよ。お前、彼女から離れ剣を構えろ。勝負だ」
わざわざ義兄に戦えるように仕向けた。
義兄はこの地域でも剣術の才能がある。私は勝てた試しがなかったけど。・・・
「な、何だ!」
ガルシアは自分の剣を光に反射させて、目をくらませて、義兄を剣で強打した。峰打だわ。
そして・・・
「ほい、お仕置き」
「グギャー!」
股間を蹴り上げたわ・・・・
「どうして、私は一度も勝てたことなかったのに・・」
「あ、そう。なら、いつか勝てばいいじゃない?今じゃなくてもいいぜ」
そう言ってくれた。
父はこの辺の領主だわ。知っていたら連れ返されるかもしれない。
『リサリサです。村娘です。孤児です。どうか、外に連れて行って下さい』
ガルシアはジィと見つめて。
『痣とかあるけど、まあ、いいか』
と言ってくれたわ。
・・・・・・・・・・・・・・・・
一月経ってもガルシアは見つからない。
「リサリサちゃん。いないわ・・・見つからないわ」
「サミー・・・さん」
もう、私の本名を名乗って捜索依頼を出さなければいけないまでになった。
「リサエル・カミユです。男爵家出身、貴族の特権で冒険者ギルドの魔道網を使わせて下さい」
「ああ・・・」
私はこのギルドのエースだ。ギルマスも断らない。
だが、見つからない。
頭が良いわね。どんな手を使っているのかしら。
だが、逆に実家に知られる事になった。
「リサエルお嬢様、旦那様がお呼びです」
「そう・・・」
実家から家紋付の馬車が来たわ。
「行くわ」
「リサリサちゃん。大丈夫?」
サミーさんが心配してくれた。泥棒猫かと思って冷たく当たったけど・・・
「サミーさん。大丈夫、私は強いから、・・・今まで辛く当たってごめんなさい」
「良いのよ。冒険者になるのは訳ありが多いからね。特に女の子はね」
手を振って見送ってくれたわ。
屋敷に戻ったら、挨拶もそこそこにお父様から。
「リサエル、婿が決まったぞ。マルコと結婚しろ」
義兄達の中で一番が決まったらしい。
だから、私は条件をつけた。
「カミユ家は武で王家にお仕えする家門、せめて私よりも強い夫が欲しいですわ。私と死合いをして下さいませ。勝ったら妻としてお仕えしますわ」
「・・・リサエルよ。少し冒険者で活躍したらしいが、しょせん。魔物と盗賊相手だ。本物の武を身につけたマルコにかなうまいが良いだろう。私が直々に実戦剣術を教えた」
私はサーベルを取りだした。
レイピアでは簡単に殺せてしまう・・・
「じゃあ、お嬢様いきますよ。こちらは木刀を使います。顔は打たないから安心して下さい」
マルコはニヤニヤしながら打ち込んできた。
今なら分かる。お父様の習った剣術は・・・
マルコの斬撃を左足を引きながら後ろに下がって躱して、手首を回してサーベルを振った。最小限の動きだわ。
ポトッとマルコの手首が床石に落ちた音がした。
「えっ?・・・ウギャアアアーーー手が、手が!」
「お父様の習った剣術は村祭りで行われる剣術興業ですわ・・・」
村祭りで行われる剣術興業、それ自体は悪くないが、力任せの一辺倒の斬撃だわ。
お父様は義兄達に発破をかけた。
「ええい。油断したからだ。リサエルを倒した者が次の婿だ!」
だが、三人も倒したら、もう、私と戦いたい者はいなくなったわ。
簡単だった・・・・嫌だわ。慢心しそうだわ。勝った時こそ反省しろとガルシアは言ったわね。
集団で来られたら苦戦したかも知れない。
お父様の態度は豹変した。
「・・・リサエル、よくその剣術を身につけた。うむ。うむ」
「お父様は殺らないのかしら。また、昔、みたく剣術の稽古をつけて欲しいですわ」
「いや・・・女に本気は出せない。男爵にしてやる」
「いらないわ。それよりも使用人を借りるわよ」
「はい・・・・」
「お母様に優しくして下さいませ」
「うむ・・・・」
他の領主に協力依頼を出した。
そしたら、それらしき人物が見つかった。
「歳は31歳、汚れた金髪で小汚い服装、ロングソードを背負っている男が確認されました」
「汚れた金髪に小汚い服装、ガルシアだわ。登録していないのかしら?」
「はい、無登録で賞金首を狩ったり、常時依頼を受けていたそうです」
「そう、やるわね。それなら登録しなくても良いわね」
「でも、お嬢様、ガルシア様はソロと聞きましたが、女冒険者と組んでいますね」
「はあ?それはないわ。誰よ?」
「赤毛の女戦士だそうです」
馬に乗り該当ギルドに向かったわ。
☆☆☆ガルシア視点
「あたいはハンマー使いだよ!それは譲れない!」
「アグネスよ。この前のクエストの時、一回も当たらなかったじゃん」
「そう、そう、その格好で酌婦をした方がいいぜ」
リサリサと別れた後、他の冒険者ギルドで仕事をしようとしたら修羅場が起きていた。
「アグネスよ。追放だ!」
女戦士が追放を受けていた。
素肌に皮鎧を着ている。肩、腹、太ももが露出している。
防御よりも動きやすさを選んだ格好だ。
追放という言葉が何か心を引いた。声をかけた。
「あんた。ハンマー使いにこだわらなければいけるんじゃないか?短刀で飛び込む度胸があればアタッカーになれるぜ」
「フン、あたいはお父ちゃんの跡をついでハンマー使いになると決めたんだい!」
「なら、仕方ない。ちょっと、やって見てくれ」
ブン!ブン!と振り回すが、初動が大きい。
「はあ、はあ、どうだい!」
「それじゃ、当たらないだろう。魔物でも簡単に躱すだろう」
「じゃあ、どうやれば良いのさ!」
「逆の発想だ。おそらく君の父君は速さと連撃でカバーをしていたと思う・・・君は一撃必殺を目指した方が良い」
持ち方を逆にするように教えた。
「いいか。ハンマーを脇腹で抱え。体の移動で柄を振り回す。柄だって武器さ」
ハンマーの柄を当ててから超近接でハンマーをブチあてる方法を教えた。
これも修業時代に得た知識だ。
「はあ、はあ、こうかい?何か振りやすいわ」
「うむ。しかし、これでは超近接戦闘だな。間合いの長い武器も併用した方が良いぞ」
これはリサリサから学んだ。二つの武器の併用だ。いろいろ試したが、鎖分銅を使う事に決まった。
鎖ハンマーという新武器が誕生したぜ。
「いいか、円を描くように振り回しながら・・・」
「こうかい?円の動きってなんだい?」
「実は円の動きはリサリサって弟子から学んだ。まるでダンスのような動きだ。俺も修行中だ。二人で模索しようぜ」
「二人で・・・」
何か変な事を言ったか?アグネスの顔が赤くなった。
その時、馬のいななきと・・・リサリサの声がした。
馬がアグネスと俺の間に割って入ってきた。乗っているのはリサリサだ。
「ガルシア!危ないわ!」
「おい、無茶するなよ!危ないのはお前だろうが!」
「それよ、それ、また、マスターに戻りなさいよ!何だったら男爵にしてあげるのだから!」
「いらねえよ!やっぱ貴族令嬢だったんじゃないか?」
それから、俺はリサリサと長い間話し込み気持を述べた。
「・・・居場所がない・・・分かったわ。居場所を作るわ」
「ああ、そうしてくれ。リサリサは俺を超えた。不釣り合いだ。ギルドの雑用でいい」
そして、俺に用意された居場所は・・・
「ギルド教習役!クエストに付き合いなさいよ!パーティー員の戦いを見て欲しいわ!」
「はい、リサリサ・・・」
俺は教習役になった。
冒険者の戦闘指導や悩み相談だとかだ。
今はアグネスはリサリサに追いつつある。
「勝った方が、教習役をもらえるわ!」
「フン、貴族には負けないよ!」
アグネスを教えているが、リサリサは上機嫌だ。
「ガルシアは教えるのが上手いのだから、こんな赤いじゃじゃ馬でいっぱしの戦士にしたのだからね!」」
「言ったな!没落令嬢!」
「待て、待て、俺のために争うな・・・あっ?」
気がついていたら、信じられない言葉を発していた。
『俺のために争うな』
もしかして、恋されているのか?
いつか聞いて見ようと思う。
『諾』だったときの答えはまだない。俺も修行中だ。
弟子と一緒に成長する師匠がいてもいいじゃないか?と思う日々だ。
最後までお読み頂き有難うございました。




