前
俺はこう見えても剣聖を目指していた。
剣術講習所を転々し学んでいた時期があった。
まあ、自信満々で若気の至りってな状態だ。
ある剣術講習所で口論になり。真剣での勝負になった。
『当方では駆け出しを相手にして頂くのが決まり。もし、勝ったのなら上級、マスターがお相手をして差し上げよう。勝てたならな』
ああ、嫌な剣術講習所だったよ。他の流派の悪口ばかり言う。
しかし・・・
奴らの流派の特徴はロングソードを左右からぶん回したかと思えば、足への斬撃もする。
手強い。
駆け出し相手に苦戦をした。
そして、やっと倒せた。足への斬撃の時に隙が出来る。
俺は剣で頭をかち割った。
『はあ、はあ、はあ、はあ』
息が切れた。
『ほお、駆け出し相手に苦戦するとは、次は私が相手だ!』
もお、ダメだ。死ぬと思ったが・・・・
簡単に倒せたよ。
『なっ!まぐれに違いない。次はマスターである我輩と戦え!』
次も簡単に倒せた・・・・
何故ならば・・・
皆、師匠の影映しだ。技やタイミング、剣筋まで全く同じだった。
『マスターを倒したぞ!仇討ちを所望する者はおるか?』
他の講習生は手をあげなかった。
それから深く考えた。
良いマスターとは?
まあ、俺は剣聖にはなれなかった。上級と中級剣士の間を彷徨い。
冒険者になった訳さ。
・・・・・・・・・
「だからな。リサリサ、俺の真似をするな。三流剣士だぞ」
リサリサ、12歳の女の子だ。森で拾った。
飯炊きでもさせるかと思って連れて来たが。
暇を見つけては拾った剣で素振りをしている。
俺の修練を真似ているらしい。
「では、どうしたらよろしいのですか?」
『よろしいのですか?』ってどこか令嬢臭さがある。
中流の平民出身だろな。
「君は女だ。特性を生かせ・・・まあ、剣を変えよう」
武器屋に行って彼女に合う剣を選んだ。
レイピアだ。細くて先端が尖った刺突に特化した片手剣だ。
女騎士がよく使う。
「わあ、軽い・・・」
表情がぱあと明るくなった。
「いいか、基本は教えられる。俺も見たことしかないけどな。後は自分で考えろ」
「考えるって・・・」
「ポケットに何が入っているか思い出せ。そしたら自然と考えが浮かぶ」
それから彼女は暇を見つけては修練を始めた。
ああ、筋は良かった。
大きく踏み込んで剣を繰り出す。
「いいか?あくまで護身だ」
「はい、ガルシア」
その頃から俺を名前で呼ぶようになった。
そしてな。相変わらず俺は流れの冒険者としてパーティーに臨時で加わって小銭を稼ぐ日々を送った。リサリサは飯炊き要員だ。
だが、ある日。
「おい、ガルシア、その娘はいいな。今夜寄越せよ」
「リーダー、勘弁して下さい」
「金出すからよ。お前も抱いているのだろう?」
リサリサは銀髪の美少女だった。美しく成長したリサリサに目をつける奴が出てきた。
「いらねー、このクエスト降りる!」
リサリサの手を引きクエストを降りることが度々あった。
なら、女の冒険者パーティーだ。
女が多くいるパーティーに潜り込ませようとしたが。
「いいよ。リサリサちゃんなら」
「サミー、有難う!リサリサを頼む。行け!」
「ガルシア・・・嫌・・」
「何故だよ?!」
「アハハ、嫌われちゃったね」
理解に苦しむ。
だが、女冒険者に接触させたことで成果はあった。
「リサリサ、サーベルをもらったのか?」
「うん。こっちも練習する」
レイピアとサーベル、両方、肩に担ぐようになった。
二種類の剣を持ち歩き使い分ける。
俺は剣士だがその発想はなかった。俺はロングソード一択だった。
そのうち、様子の良い男がリーダーのパーティーに臨時雇いされた。
ゲルドという魔法剣士がリーダーのパーティーだ。20代前半、まるで吟遊詩人のように洗練された服ときらびやかな剣を腰に差している。
対応も柔らかい。
「ガルシアさん。リサリサちゃん。よろしく」
「どうも、剣士のガルシアです。リサリサは雑用が出来ます」
もう、15歳だ。だが、俺の背中に隠れて挨拶も出来ない。
「リサリサ、どうした?」
「似ている・・・・義兄と・・・」
怖がっているのか?
野営の時にそれは起きた。
いつも野営は一つの天幕でリサリサと二人で寝ていたが・・・
ゲルドはリサリサ専用の天幕を建ててくれた。
「ほら、女の子と二人じゃ、さすがに聞こえが悪くなるよ」
「その通りだな。リサリサ、好意に甘えさせてもらえ」
「・・・」
深夜、大声で目が覚めた。
ゲルドの声、リサリサの天幕だ。
【いてぇ~!俺のイチモツ、イチモツが・・・・】
リサリサの天幕に向かうと、ゲルドが股間を押さえ血がダラダラ垂れていた。
リサリサの目が赤く光っているように思えた。まるで狂戦士か?
「ガルシア・・・こいつ、襲おうとしたから・・・」
剣を・・・いや、ナイフで股間を突き刺したのか?リサリサと出会った時を思い出した。
そうだった・・・。トラウマになっていたのだろう。
「ああ、何も言うな・・・」
俺の胸元に飛び込んで泣きだした。
「俺が護身以外使うなといったからな。その通りしただけだ」
「うん・・・」
グスン、グスンと嗚咽が止らなかった。
その後、ゲルドは死亡、ギルドに報告したが不問に付された。
こういった報告が度々あったらしい。
処分は訓戒ですんだ。まあ、叱責だ。
「A級のゲルドが抜けた穴は大きいぞ。三流剣士が残ってどうすると言うのか?!まだ討伐は終わっていないぞ!」
何故か、付き添いの俺が叱責された。
「全く、・・・な、何だ?その目は!」
気がついたらリサリサがギルマスを睨んでいた。
「リサリサ、ギルマスに無礼だぞ」
リサリサを抑えたが、小声でうなるように
「・・・ゥヶ・・・ます」
受けますと言った。ゲルドが受けていたクエストを受けると言うのか?
「ほお、C級とF級のパーティーごときが受けるのか!なら、やってみせろ!」
二人で高難易度のクエストを受ける事になった。
何故かリサリサは上機嫌だ。
「ガルシアと初めての共同クエストだね♪」
鼻唄まで歌っている・・・理解出来ない。死ぬために行くようなものだ。
「ガルシア、防具つけて」
「ああ・・・て服を脱ぐな!」
浮ついているのか?
俺は男と認識されていないから平気で目の前で脱ぐようになったな。
「いいじゃない。ガルシアだもの」
「服の上から防具をつけるのだ」
やれやれという気持で森に行ったら、いた。討伐対象キメラだ。
頭は山羊、体は魔熊、尻尾は蛇、うっすらと魔力がもれていやがる。
「リサリサ、逃げるぞ!、おい、リサリサ」
しかし、何の躊躇もなくキメラに飛び込んだ。
大きく踏み込み。レイピアを打ち込み・・・逃げた。
皮膚の表面しか傷つけていない。
「レイピアでは厳しいわ。次は、サーペル!」
「おい、リサリサ・・・」
これも表面しか斬れてないが・・・
リサリサの姿勢はピンと背を伸し美しい。動きも円を描くように・・・これはダンスか?
「グギャ!ガアア!」
キメラの動きを見切ったのか?寸での所で躱し少しずつ削って行く。
これは・・・もしかして・・・貴族?
「ガルシア、魔法を使う!援護して」
「おう!」
最後はファイヤーボールだ。
俺が盾になり放った。
それでもキメラは倒せない。
しかし・・・
「ギャアアアーー!」
キメラは背を向けて森の中に消えた。
「はあ、はあ、やったね。血を流しているから追跡をすればいいね」
「リサリサ、貴族令嬢だったのか?」
「・・・そう。それよりも追跡だよ」
あの背筋を伸した姿勢は礼法、円を描く動きは幾何学を学んだからか?そして、魔法だ。
高額な授業料を払える・・・家出身。
中級平民の家出身だと思ったが・・・
三日後、弱り切ったキメラを森の奥で見つけ討伐した。成功だ。
「今、勝てなくても良い。いつか勝てばいい・・・ガルシアの教え通りにやったよ」
「ああ・・・そんなことも言ったか・・」
それからリサリサは剣士として開花した。
ギルマスも手の平を返す。
「さすが、見込んだだけのことはある。B級に昇進だ」
リサリサの元に人が集まりパーティーが出来た。
リサリサは男の冒険者を好むようになった。まあ、お年頃だな。これも良い。
だが、全部はないだろう・・・。
更にリサリサはA級になった。俺はC級のままだ。
「リーダーはガルシアだよ」
「リーダーが一番多く報酬を受けるべき」
「リーダーが一番美味しい物を食べる」
「天幕の割り振りは・・・ガルシアと私・・・」
まさかと思っていたが。
俺が女冒険者と話すと・・・怒るようにまでなった。
「ガルシア、リサリサちゃん大活躍だね」
「どうも、リサリサにサーベルを教えてくれて有難うございます」
女冒険者サミーと話していたら、リサリサが割り込んで俺に面と向かう。
「ガルシア!会議だよ!」
「リサリサ、恩を受けたサミーだ。今度、共同クエスト・・・」
「いいから来て!」
「ああ・・・」
行こうとしたらサミーに袖を掴まれた。
「フフフフ、慕われているね。いや、恋人かしら」
だから、俺は否定した。
「いや、リサリサは俺を父親と重ね合わせているみたいだ。恋人なんてあり得ない。15歳以上離れているぜ」
「まだ、リサリサちゃんは自分でも気持は分からないのよ。応援するわ」
そっと背中を押された。
「行きな。すぐに行かないと機嫌損ねるよ」
「ああ・・・」
だから俺はそのまま冒険者ギルドを去った。
もう、俺の居場所はない。
ギルドに追放届を出し去った。
自己追放だ。




