第43話 線と印を分ける者達
実は普通に強い系の従者です。
「それじゃあ行ってみようか」
「はい、気を付けてくださいね、ユイガさん」
「うん。マジで気を付けるよ」
プラシアに心配を掛けさせちゃったかな?
でも大丈夫。ちゃんと忠告は受けるよ。
とりあえず気を引き締めることにしたら、まずは奥の部屋……ん?
プチン!
腕に付けていたミサンガが千切れた。
リミエナが編んでくれた特注品で、魔力や呪いを弾き飛ばせる。
その中でも、ミサンガが千切れるってことは、相当ヤバい奴がいるかも?
僕は警戒すると、プラシアは目を見開く。
「どうしたんですか、ユイガさん?」
「プラシア、防御魔法」
「は、はい?」
「掛けれるならお願い。急いで!」
僕はつい急かしてしまった。なんだか嫌な予感がする。
プラシアもすぐさま状況を飲み込んだ。
杖を構えると、僕とプラシアに魔法を掛けた。
ジリリリリィィィィィィィィィィィィィィィ!
目の前の扉の魔法陣が映し出された。
けれど見たことの無い魔法陣で、僕は一瞬で気が付く。
流石に目は悪くないんだよね。咄嗟になって、マントを払った。
「危なかったね」
「は、はい。あの、今のは……」
「多分だけど、仕掛けて来たね。面白い魔法だよ」
扉に魔法陣が描かれると、そこから魔法が放たれた。
僕は何とかマントを払って弾き飛ばしたけど、危うく即死だったよ。
本当リミエナの魔導具は凄い。もちろんそれだけじゃなくて、プラシアが魔法を掛けてくれた。
「プラシア、魔法を掛けてくれてありがとう」
「すみません、発動が遅れてしまって」
「大丈夫だよ。でも今の魔法……一つじゃないね」
「えっ!?」
プラシアはよくやってくれた。僕の無茶ぶりに砂約応えてくれた。
流石は、ジョイの無茶に付き合わされてきただけのことあるよ。
って感心している場合じゃなくて、問題は別にある。
扉に映し出された魔法陣。アレは二つの魔法が重なったものだ。
そもそも、魔物は魔法陣なんて必要としない。
まともに戦えば、魔物の方が断然強いんだ。
「二つの異なる魔法が組み合わされていたね。一つは雷、でももう一つは……印かな?」
僕は魔力を感知出来ない。あくまでも客観的に見ただけだ。
これが出来るのは、純粋に魔力に対する抵抗が無いから。いや、僕が特殊なだけ。
逆に大抵の魔力に引っ掛からないからこそ、ハッキリと見えた。ぜんぜん色の違う魔法陣から、別の魔法が飛び出した。普通にビックリ箱だよ。
「印の魔法から雷の魔法が飛び出した。いや、雷の魔法を一本の線に描き直して放ったってことかな?」
恐ろしい魔法だ。恐ろしい魔法の組み合わせだよ。
僕は気持ちが悪くなってしまう。マントをグッと引き寄せた。
これだけ強力な魔法の組み合わせとなれば、相当な知識を持っているのは言うまでもないからだ。
「変わった魔法ですね」
「うん。でも面白いよ……でも」
でも、何か引っ掛かる。
正直この程度の威力だと期待外れだよ。
僕はもっと強いことを期待していた。
だけど実際には想像よりも弱めで、表情が濁る。
そう言えばボルトロンから得た情報だけど、魔物は……
「三体いたんだよね? ってことはこれで二人、もう一人いるのかな?」
瞬時に気が付いた。ジョイを襲った魔物は三体。
ってことは、もう一体潜んでいる?
そう言えば、探知機によると、もう一体は……まさかね。
「ふぅ。こんにちは、誰かいないかな?」
「ゆ、ユイガさん!?」
僕は試しに呼び掛けてみた。
プラシアは驚いていて、僕の頭がおかしくなったと思ったみたい。
でも大丈夫。ちゃんと自分の意思で、声を上げたからね。
「流石に返答は……」
「「ココカラタチサレ」」
声が聞こえた。僕やプラシアのものじゃない。
おまけに何処かたどたどしい。上手く人間の言葉を話せていない。
如何やら扉の向こうから聞こえたようで、意思疎通が出来るらしい。
「ユイガさん、今の声は!?」
「僕はユイガ。君達に会いに来たんだ」
「ユイガさん!?」
そう慌てないでよ、プラシア。僕は別に戦いに来た訳じゃない。
この廃屋を隠れ家にしている魔物に会いに来た。
勧誘するために来たんだから、声を掛けるのは普通でしょ?
「アイニキタ?」
「アヤシイワネ。サキホドノケイコクガミエナカッタノ?」
「見えたよ。見えた上で話し掛けているんだ」
やっぱり先程の攻撃は警告だったんだ。
危うく死にかけたけど、即死ってことは無い。
上手く調整されていたみたいで、マントも無事で穴も開いていない。
「ふぅ。ねぇ、君達のボスは何処にいるの?」
「「ボス!?」」
「そう。君達のボスのことだよ。いるんだよね、一体?」
聞こえて来た声は二つ分だ。
一つは男性、もう一つは女性。
姿は見えないけれど、高い知性を有しているので、話し合いは出来る。
「単刀直入に言うね。僕はこの大陸の魔王。君達を勧誘しに来たんだ」
「「マオウ!! カンユウ??」」
「そうだよ。どうかな、君達の安全と住処、自由を保障する。代わりに魔王軍に従事して、力を発揮して欲しいんだ。ダメかな?」
魔物相手の勧誘なので、条件や目的は、簡略化しておく。
分かりやすさを重視すると、二体の魔物は理解してくれた。
とは言え、首を縦に振る気は無いらしい。
「コトワルヨ」
「ソウネ。マオウニクミスルキハナイワ」
「そうだよね。それじゃあ君達はお終いかもね」
普通に拒否されてしまった。
そうだよね。初対面で、顔も合わせていない僕の言い分を聞いてくれない。
笑ってしまって理解を示したけど、困るのは魔物達の方だ。
「「オシマイ?」」
「うん。この場所は冒険者達に知られているんだよ。だから、魔物討伐の命を受けた冒険者達が来るかもしれないね」
僕は別に脅しのつもりで言っていない。
凶悪な魔物として、冒険者達が討伐しに来るかもしれない。
「ボウケンシャガクル!?」
「アノヨワイボウケンシャタチガ?」
「確かにディアレイの冒険者は、君達にとっては大したことないかもしれない。けれどそれは表面上の話だよ。本質の部分で言えば、ディアレイの冒険者もなかなかに強者かな」
魔物二体は、冒険者のことを弱いと言った。
確かにジョイは特別弱かったかもしれない。
けれどアレは特別で、ディアレイの冒険者全体が弱い訳では無いのだ。
勘違いをすれば痛い目を見る。ボス格の魔物は、教えていなかったのかな?
「とりあえずだけど、僕は忠告したからね。それじゃあ、さようなら」
僕は扉越しにそう伝えると、プラシアの手を取る。
スッと引き寄せると、帰るように促す。
驚いた顔をするけれど、既に踵は返してる。
正直、このまま押し問答した所で変わらない。
きっと反撃の機会を与え続けるだけだと思い、僕の判断は間違っていないと確信。
ボス格に出会えなかったのが心残りだけど、仕方が無いと割り切った。
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