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 冷たい瞳をしていた。射殺すような瞳をリオルは真正面から受け止めていた。

 恐ろしいわけではない。

 初めから望んでいたわけではないが、多くの命を預かる立場にある。たとえ会えずとも幸せに暮らしてくれればと願っていた。その我が子を犠牲にしてまで己が責務を果たそうと覚悟を決めたのだ。今更自分の命など惜しくはない。

 リオルは自分に向けられた小刀を握りしめる。

 ジルは少し息を吐き、微笑んだ。そして、自らも刃に手を添える。

 滴る二人の血は小刀を伝い、混ざり、地に落ちた。

 ドクッ。

 心臓を鷲掴むような感覚。おそらくそれは正しくて、錯覚なのではない。混ざり合った血が地面で生き物のように動き回る。

 血が何かしらの文様を描き、光を放っているのを見た。意識が酩酊していく中、金属音が響く。

 真っ青な顔のジルが小刀を投げ捨てていた。

「始まるわ」ジルはリオルに布切れを渡し、自らも傷口に布を巻き付け止血した。

 ジルの目線の先には巨像。その眼には光が宿っていた。

「ここからは私が。ティナちゃんをよろしくね」

 リオルはこくりと頷き、ティナを抱え後ずさった。

「私が読んだ本の通りなら願いを叶えてくれる素敵な魔人さんなのだけど、どうかしら?」

 ジルの問いかけに魔人は目を輝かせた。そして、巨体に似つかわしくない風音のような小さな声がジルの耳元をくすぐる。

「対価をもって願いはかなう」「この私の命を」「是。願いは?」「そこにいる男と赤子、そしてその妻の幸福を」

 リオルは目を見開き「待ってくれ!それでは話が違う!」そう叫んだ。

 ジルはリオルの言葉を抑えるように手をかざす。

「あなたの村の平穏があなたの幸せの一部なのだというのなら、これでも何も問題はないはず。そして、あなたと私の願いが叶ういい方法だと思わない?」

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