文化祭にて 1
そうしてやってきた文化祭。俺たちは出し物の最後の準備をしていた。女子は先に着替えており、もうちらほらと教室に帰ってきている。
「じゃあ、男子もそろそろ衣装に着替えようか」
最後の調整を終えて翔太がそう号令をかけた。俺も着替えようと空き教室に向かうべく、教室のドアに手をかけたその時、後ろから袖をぎゅっとつままれる。体をひねり、掴んだ人の方へ向ける。そこには予想していた通り、七海がいた。俺は目を合わせて微笑んで、
「大丈夫だから、隣の教室で待っていてくれ」
そう言い、それに七海はコクリと頷いて一緒に教室をでる。俺は着替えのための教室へ、七海はその隣の教室に入る。俺はそのまま着替えを済まし、身嗜みを整えてから隣の教室に入った。
「七海〜着替えたぞ」
「あきと!すごい似合ってるよ!カッコいい…」
七海は顔を上げて、キラキラとした表情で俺のことをしばらく見たあと、ちょっと顔を曇らせた。
「どうしたの?」
「明人がかっこいいのは嬉しいけど。できればこれを1人占めしたかったなって。これで明人に人気が出ちゃうと思うと少し複雑な気持ちになっちゃう…」
俺はドアを閉めてからそんな愛らしい彼女を抱きしめる。そのまま、セットされている彼女の髪を崩さないようにぽんぽんとして、
「安心して、俺は七海しか見えてないから。ね?今だけは独り占めしていいから」
「うん…。あと少しいい?」
「いいよ」
そのまま何分か抱き合ってからみんなとは少し遅れてから教室に戻った。
「お!戻ってきたか。あと30分ぐらいで店開けるぞー」
「了解」
開店に向けてみんなで配置につく。すると文化祭の始まりを知らせる放送が流れた。
「よし!じゃあみんな頑張ろうぜ!」
そうして俺たちの文化祭が始まった。