表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第三章 演劇部再建編 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

98/118

第97想 再建を目指す、新たな光――光野黒子との出会い

 

 次に三人が向かったのは、校舎裏の訓練スペースだった。


 金属がぶつかり合う乾いた音。

 そこでは白金凛(しろがねりん)が、一人黙々と近接戦の鍛錬を続けていた。


「白金…」

 燈也が声をかける。


「……不知火か」

 動きを止め、鋭い視線を向けてくる。


 事情を説明すると、凛は少しだけ考え込むように腕を組んだ。


「悪いが、断る」

 即答だった。


「私は自分の鍛錬を最優先にしている。部活動に時間を割く余裕はない」


「レースだけでも――」

 怜花が食い下がるが、凛は首を横に振る。


「勝負ごとは好きだが、“目的が違う”」


 その言葉に、聖妓は悔しそうに歯を食いしばりつつも、何も言い返せなかった。


「……分かったわ」

「ありがとう、聞いてくれて」


 凛は一瞬だけ目を細める。


「演劇部か」

「面白いことを考えるな」


 そう言い残し、再び訓練に戻っていった。



 中庭。

 部員集めのため校内を回っていた燈也たちが、掲示板の前を通りかかった時だった。


「――ぷっ」


 突然、背後から小さな笑い声。


 振り返ると、数人の男子生徒が腕を組みながら立っていた。


 制服の着崩し方からして、真面目なタイプではない。


「なあなあ、今の聞いた?」

「演劇部、再建だってよ」


「ははっ、まだそんな夢見てる奴いるんだな」


 聖妓の足が止まる。


「……何か言った?」

 鋭い視線を向ける。


「いやいや、別に?」

 男子生徒は肩をすくめ、わざとらしく笑う。


「たださ、演劇部って――」

「去年、廃部になったんだろ?」


「観客ゼロ、部員バラバラ、最後は顧問も逃げたって噂」

「そんなゴミ部活、今さら作ってどうすんの?」


「……っ」

 怜花が言葉を詰まらせる。


「舞台で感動? 笑わせるだろ」


「しかも魔法も使えねー奴が、スポットライト浴びたいって?」

 男子の一人が聖妓を見て、にやりと笑う。


「身の程って言葉、知ってるか?」


 ――空気が、張り詰めた。


「……言わせておけば」

 燈也が一歩前に出ようとするが、


「待って」

 聖妓が腕を伸ばして制した。


 彼女は、男子生徒たちを真正面から見据える。


「確かに、今の演劇部は何もない」


「――でも」

 声が低く、芯を帯びる。


「だからって、バカにしていい理由にはならないでしょ?」


「正義を、笑う人間が一番嫌いなの」


 男子生徒の一人が鼻で笑う。


「正義? ぷっ…。何それ、ヒーロー気取り?」


「せいぜい頑張れや」


「どうせレースに参加すら出来ないだろうけどなw」


 背を向けて立ち去る男子生徒たち。


 残された三人。


 聖妓は拳を握りしめ、強く言った。


「見てなさい。絶対に――」


「演劇部は、私が復活させるんだから」


 燈也はその横顔を見て、静かに笑った。


「……だな」




 校舎裏のベンチ付近。

 次に燈也たちが声をかけたのは、ピンク色の髪をふわりと揺らした少女だった。


「あっ、ともくんじゃん!それにれいちゃんも〜!」


 (ひいらぎ)ななみは満面の笑みで駆け寄り、燈也の腕に自然と抱きつく。


「お、おい……近いって」

「えへへ〜久しぶりだもん。元気そうで安心したよ〜」


 怜花にもぐっと距離を詰め、手をぎゅっと握る。


「れいちゃんも元気~?」


「は、はい……」


 怜花は少し驚きつつも、悪い気はしていない様子だった。


 燈也は軽く咳払いをして、本題に入る。


「実はななみ。俺たち、演劇部を再建しようとしててな」


「部員を集めてるんだ。良ければ――」


「……あっ」

 ななみは一瞬だけきょとんとし、それから困ったように笑った。


「うーん……それはね、ごめん」


 ななみは両手を合わせ、申し訳なさそうに首を傾げた。


「わたし、今は歌の活動に集中したくてさ。コンサートも近いし」


「……そっか」

 怜花が小さく頷く。


「でもね!」

 ななみはぱっと表情を明るくし、聖妓の肩にぽんっと手を置いた。



「演劇部を再建したいって気持ち、すっごく素敵だと思う!」


「正義ちゃん、目が本気だもん」


「なっ……正義ちゃんって呼ぶな!」

 聖妓が顔を赤くする。


「えー?だって正義って言葉が似合うんだもん」

 くすくす笑いながら、ななみは少し声を落とした。


「それに……演劇部に入ってくれそう子に心辺りがあるよ。」


 三人の視線が集まる。



「元演劇部員の光野黒子(みつのくろこ)ちゃん」


「……!」

 聖妓の表情が変わる。


「去年の廃部の時、最後まで残ってた子。

 真面目で、舞台のこと本気で好きだった」


「でも……」

 ななみは少しだけ、寂しそうに微笑む。


「演劇部がなくなってから、かなり落ち込んでて」


「今は人と関わるの、避けてるかも」


「どこにいるか分かるか?」

 燈也が尋ねる。


「旧校舎の資料室の近くかな」

「人目につかないとこ、好きだったし」


「教えてくれてありがとう」

 聖妓が静かに言う。


 ななみはにっと笑って、親指を立てた。


「どういたしまして!」

「れいちゃん、ともくん。正義ちゃんを支えてあげてね」


「……ああ」

 燈也は少し照れながら頷いた。


「ふふっ。うまくいったら、舞台観に行くからね」


 明るく手を振って去っていくななみを見送りながら、

 三人は自然と顔を見合わせる。


「……行くか」

 燈也が言う。


「ええ」

 聖妓は強く頷いた。


 次の目的地は――

 元演劇部員・光野黒子。



次回 『第98想 仲間集めは一筋縄じゃない――元演劇部員・黒子の心を開け!』


旧校舎に潜む、過去の影――。

元演劇部員・光野黒子は、心の扉を閉ざしていた。

「もう、演劇部は終わった……」

断られた聖妓たちに立ちはだかるのは、過去の痛みと孤独。

しかし、諦めない正義の魂は、どんな絶望も跳ね返す――!

果たして、三人は黒子を再び舞台に立たせることができるのか!?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ