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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第三章 演劇部再建編 

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第96想 演劇部再建計画、始動――信念を賭けたレース

 翌日――

 登校した生徒たちの視線は、例外なく校内の掲示板へと吸い寄せられていた。


 魔法執行部の名が刻まれた、公式通達。

 いつもなら素通りされがちなそれの前に、今日は異様なほどの人だかりができている。


「な、なんだこれ……?」

「部活動設立……レース?」


 ざわり、と空気が揺れる。


 掲示には、簡潔ながらも衝撃的な内容が記されていた。


 ――魔法執行部主催・部活動設立選抜レース開催

 ――魔法、アイテム、魔導具、乗り物の使用も自由

 ――魔法執行部とのレースに勝利したチームを、正式な部活動として認可する

 ――さらに、優勝チームには部費三倍の特典を付与する



「すげぇ…何でもアリじゃん!」

「しかも部費……三倍!?」

「マジかよ、そんなの初めて聞いたぞ!」

「これ、勝てば一気に環境整うじゃん……!」


 次第に声が大きくなり、廊下はちょっとした騒ぎになる。

 普段は目立たない同好会志望者、部活を諦めかけていた生徒、そして野心を抱く者たち――

 それぞれの思惑が、掲示板の前で交錯していた。


「魔法執行部が相手ってことは……本気ってことだよな」

「でも逆に言えば、勝てば一発逆転だ」


 生徒たちの目に、次第に熱が宿る。

 ただの“部活動設立”ではない。

 これは、夢と利権と意地を賭けた競争だ。


 校舎のあちこちで、早くも仲間集めの声が上がり始めていた。


 静かだった学園に、

 新たな火種が投げ込まれた瞬間だった。


 部活動設立レースの告知が出されたその日から、

 燈也(ともや)怜花(れいか)聖妓(せいぎ)の三人は、校内を駆け回っていた。


「まずは人数よ。四人以上いないと話にならないわ」

 腕を組み、きっぱりと言い切る聖妓の表情は真剣そのものだった。


「言うは(やす)し、だな……」

 燈也は頭をかきながら、最初の候補の元へ向かう。



「おっ、不知火(しらぬい)じゃねぇか?」

 軽い声と共に現れたのは――郷夜(ごうや)だった。


「……ああ、風間(かざま)か。良い所に…」

 燈也が手を上げる。


 だが、郷夜の視線は最初から別の一点に釘付けになっていた。


 金髪のツインテール。

 きりっとした目元。

 正義感が服を着て歩いているような少女。


「――おおっ!!」

 郷夜がニヤリと笑い、一歩前に出る。


「なんだよ不知火、こんな可愛い子連れて歩くなんて聞いてねぇぞ?」


「は?」

 聖妓が怪訝(けげん)そうに睨み返す。


「……アンタ、誰よ」

「オレ様は風間郷夜。新聞部のエースであり、将来有望な情報屋だ。」

 親指で自分を指し、やけに爽やかな笑顔。


「で?お嬢ちゃんの名前は?」


「……真条聖妓(しんじょうせいぎ)

「へぇ〜、名前まで素敵じゃねぇか」


 燈也が即座に割って入る。


「おい。今はナンパしてる場合じゃないんだが…」


「細けぇこと言うなよ。人生は出会いだろ?」


 聖妓は腕を組み、冷たく言い放つ。


「悪いけど、今は部員集めで忙しいの。用がないならどいて」


「部員集め?」


 郷夜の目が輝く。


「部活作んのか!?」

「演劇部を再建する」

「ほぉ〜……」


 一瞬、真剣な顔になる郷夜。


「それならオレ様、入ってやっても――」

「無理よ」

 即答。


「えっ」

「アンタ、チャラそうだし」


「ひでぇ!?」

 郷夜が胸を押さえる。



 その様子を見ていた怜花が、困ったように小さく手を挙げた。


「あの……そもそもうちの学校って、兼部は禁止ではなかったでしょうか?」


 控えめながらも的確な指摘。


「……あ」

 燈也が思い出したように呟く。


「そういえば、そうだったな。」


「悪い、すっかり忘れてたぜ。」

 郷夜は頭をかき、照れたように笑う。


「でもよ、レースの情報とかあったら教えてやるよ。」

「……情報?」


「新聞部ナメんなよ?」

 ニッと笑う。


 聖妓は少しだけ考え――ふん、と鼻を鳴らした。


「……使えそうね」


「でも変なことしたら即通報するから!」

 聖妓が指を突きつける。


「こわっ!? 正義こわっ!!」


 郷夜は大げさに両手を上げた。


「分かった、分かった。健全に応援するぜ、演劇部候補さん」


「候補じゃない。再建するの!」


「いいね~、強気な所も最高だな。」


 そう言って背を向ける。


「じゃあな。健闘を祈ってるぜ、正義のお嬢ちゃん」


「……名前で呼びなさいよ」

「おっと失礼。聖妓ちゃん、だ」


 去っていく郷夜を見送りながら、聖妓が小さく息を吐いた。


「……ムカつくけど悪人ってわけじゃなさそうね」

 聖妓は腕を組み直す。


 燈也は苦笑した。


「……だな。」


 その後、三人は校舎裏の中庭へ向かう。


 ベンチに腰掛けていた癒水(ゆみ)流水(るみ)が、三人の気配に気づいて顔を上げた。


義兄(にい)さん……? 怜花さんとそれに…」


「二人に話があるんだ」

 燈也が切り出す。


 聖妓のこと。演劇部再建。部員集め。

 そして、レースのこと。


「……なるほどね」


 流水は腕を組み、少し考えるように視線を泳がせる。


「悪いけど、アタシは無理よ」


「即答だな」


「だって、水泳部のレギュラーだもの」

 きっぱりと、迷いなく言い切る。


「大会も近いし、兼部は禁止でしょ?

 それに――」


 少しだけ笑って続ける。


「舞台より、アタシは水の中の方が向いてるの」


 聖妓は悔しそうに唇を噛んだが、流水の真剣な眼差しを見て、何も言えなくなった。


「応援はするわよ。レースもね」


「私も……その……」

 癒水が指先をぎゅっと握りしめる。


「支援なら、出来ることもあるかもしれません。でも……

 人前に立つの、どうしても苦手で…」

 首を振る。


 怜花が慌てて首を振る。

「い、いえ! 無理にとは言いませんから!」


「……本当にごめんなさい。」

 癒水はそう言って、精一杯の笑顔を向けた。

「でも皆さんが頑張ってるの、ちゃんと分かってますから」


「ありがとう」

 聖妓は短く、でも真剣に頭を下げた。



次回 『再建を目指す、新たな光――光野黒子との出会い』


演劇部を再建せよ――!元部員・光野黒子との出会いが、仲間と友情、そして未来を動かす。

次回、心揺さぶる新たな挑戦が始まる!

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