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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 魔法試験編

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第59想 謎の組織――十月花

 廃墟(はいきょ)と化した高層ビル。

 窓ガラスは割れ、風が吹くたびに瓦礫(がれき)が乾いた音を立てて転がる。

 かつて人が行き交っていたであろうその場所は、今や闇に閉ざされた“会議場”と化していた。


 薄暗いフロアの中央、円を描くように立つ十の影。

 それぞれがフードマントに身を包み、異様な仮面を被っている。


 ――十月花(じゅうげつか)

 学園の裏で暗躍する、正体不明の組織。


「遅過ぎだぜ。ゼクス。時間も分からねえのか?」


 そう声を上げたのは、

 Ⅳと刻まれた骸骨(がいこつ)の面を被る男――フィーア。

 骨ばった仮面の奥から、苛立ちを隠さない視線を向ける。


「ガハハハッ!」


 それに応じるように、豪快な笑い声が響いた。


「悪いな。日課の筋トレが長引いちまってよ」


 Ⅵと書かれた、ホッケーマスクのような仮面。

 大柄な体躯(たいく)の男――ゼクスが肩をすくめる。


「それにしてもよォ、フィーア。お前、相変わらずガリガリだな。ちゃんと肉食ってんのか?」


「……ああ?」


 空気が一瞬、張り詰める。


「喧嘩売ってんのか?」


 フィーアの声が低くなる。


「まあまあ」


 間に割って入ったのは、

 Ⅹと刻まれた、不気味に笑う仮面を被った人物――ツェーン。


「お二人が暴れたら、このビルが持ちませんよ」


「ツェーンくんの言う通りです」


 続いて、

 Ⅴと書かれた三日月のように歪んだ笑みの仮面――フュンフが肩を揺らす。


「それにフィーア。キミも、ついさっき来たばかりですよね? 他人に文句を言える立場ではないかと(笑)」


 (あざけ)るような声音に、フィーアが舌打ちする。


「……あんた達、そこまでにしな」


 重く、鋭い声が場を制圧する。


 Ⅲと刻まれた般若(はんにゃ)面の人物――ドライが一喝(いっかつ)する。


「話を始められないだろ?」


「相変わらずうるせーなぁ、ドライ……」


 フィーアは不貞腐(ふてくさ)れたように肩を落とす。


「あー、分かったよ。とっとと始めてくれ」


「――俺たちの目的は、理解しているな?」


 場の空気を切り替えるように、

 Ⅱと刻まれたペストマスクの人物が静かに口を開いた。


 その声には、明確な“命令”の響きがある。


「もち知ってるし~」


 場の緊張を無視するように、

 Ⅶと刻まれたヴェネチアンマスクの人物――セッテが軽い調子で答える。


「レアなアイテムを、たぁくさん~見つけてることでしょ~?」


「そうだ」


 Ⅱは淡々と続ける。


「中でも、伝説の魔導書――()()()()()()を探すことが、我々の大きな目標だ」


「で?それがどうしたっていうんだ?」


 フィーアが眉をひそめる。


「まさか……」


「ええ」


 その言葉に応えたのは、

 Ⅰと刻まれた狐面の人物――アイン。


「先日、一瞬ですが……強大な力を感知しました」


 静かな声。しかし、そこに込められた確信が、場をざわつかせる。


「アイン! 本当にヒメユリの書なのかい!?」


 ドライが思わず声を上げる。


「いえ。まだ断定はできません」


 アインは冷静に首を振った。


「ですが、調べる価値はあります」


「こうしちゃいられねえ!」


 フィーアが一歩前に出る。

 床に溜まった瓦礫を蹴散(けち)らしながら、勢いよく声を張り上げた。


「早速探しに行こうぜ!」


 その言葉が、会議場の空気を一気に熱くする。


 しかし――


「それは行けません」


 即座に、静かな声が割って入った。


 狐面の奥から覗くアインの視線は冷たく、

 (たかぶ)った空気を一刀で断ち切るようだった。


「あ?」


 フィーアが眉をひそめる。


「なんでだよ?」



「学校側――特に魔法執行部に目を付けられるわけにはいきません」


 淡々と告げられる現実的な理由。

 その一言で、数人のメンバーが小さく舌打ちをする。


「確かに」


 フュンフが肩をすくめる。


「最近、新入りも増えたとか……」


「なに! そいつは強ぇのか!?」


 ゼクスの目が輝く。


「なんでも……S()()()()の所持者だそうですよ」


「――なにィ!?」


 ゼクスの声が、廃墟に反響した。


「Sランクだと!!」


 握り締めた拳が鳴る。


「腕が(うず)くぜ!!!!」


 興奮を隠しきれない様子で、ゼクスは吠える。


「全く……」


 ドライが(あき)れたように言う。


「戦闘狂はこれだから。リーダーの話、聞いてなかったのかい?」


 呆れと諦めが混じった声音。


「今は派手な行動は(つつし)んで下さい」


 アインが釘を刺す。


「特に――ゼクス」


「ぷぷぷっ……名指しで言われてやんの」


 その様子を見て、フィーアが吹き出す。


「それと、フィーア」


 間髪入れず、アインが続ける。


「おい!」


 フィーアが即座に噛みつく。


「なんで俺もなんだよ!!」


「――あははは~!」


 場の空気を読まず、

 セッテが腹を抱えて笑い出す。


「超ウケる~」


 セッテが楽しそうに笑った瞬間――


「……セッテてめぇ……!」


 フィーアの声が、刃のように鋭く響いた。


「ぶっ殺すぞ!」



「セッテに手ぇ出したら……」


 Ⅷと刻まれた鬼面(きめん)の男――オットが低く唸る。


「オレッちが絶対許さねぇから、覚悟しとけよ?」


 今にも衝突しかねない殺気と殺気。


「……そこまでだ。」


 低く、しかし絶対的な響きを持った一声。


 Ⅱ――ツヴァイの言葉が落ちた瞬間、

 張り詰めていた殺気が消える。


 鬼面のオットが一歩引き、フィーアも舌打ちしながら視線を逸らす。

 ゼクスの闘気も、渦を巻いたまま胸の奥へと沈んでいった。


「……では」


 沈黙を()うように、アインが口を開く。


「では……調査はドライに。ノイン、ツェーンはフォローをお願いします」


 アインが指示を出す。


「任せておきな」


「了解した」「分かりました」


 短く返事が返る。


「では……本日の会議はここまでです」


 アインの言葉を合図に、

 一人、また一人と、闇へ溶け込むように姿を消していく。



 誰もいなくなったフロアで、狐面の奥で、アインの瞳だけが細く光る。


「……なんとしてでも、見つけなければ」

 その声は小さく、決意を押し殺したようなものだった。



 ◇

 崩れた階段を降り、ビルの外に出た後。

 ()びた鉄骨の影に、二つの気配が残っていた。


「なあ……アインはああ言ってたけどよ」


 骸骨の仮面――フィーアが、

 横に並ぶ大柄な影を見上げる。


「どうすんだ?」


「ガハハハッ!」


 夜気を震わせるような豪快な笑い声が響く。


「漢なら、やることは一つだろ?」


 ゼクスは肩を鳴らし、拳を握り締める。

 骨が(きし)む音が、はっきりと聞こえた。


「強ぇヤツがいるなら――語り合うまでよ!!」


「くくっ……だと思った」


 フィーアは小さく笑う。

 骸骨の仮面の奥で、口角が吊り上がるのが分かる。


「止める気はねえが、はしゃぎ過ぎんなよ」


「心配すんな」


 ゼクスの笑みが、獣のそれに変わる。


「お前の分も、ちゃんと残してやるよ……

 ――相手が潰れなけりゃ、な」


 月明かりに照らされた仮面の奥で、

 ゼクスの笑みだけが、不気味に浮かび上がる。


 十月花は、静かに――だが確実に動き始めていた。







次回 『第60想 魔法試験開幕!挑戦者たちの絆と試練』


――魔法試験会場に広がる緊張の空気。

燈也たちのチームは、未知のダンジョンへと足を踏み入れる。

教師陣が仕掛けた試練、待ち受ける敵――すべては仲間と絆で乗り越えるため。


「行くぞ!」

決意と勇気が光となり、彼らを突き動かす――

果たして、最奥に待つものとは――?

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