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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第一章 幽霊少女編

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第28想 放課後カデンツァ ~幽霊と奏でる六重奏

 

 朝の光が差し込む校舎の廊下。


「どこから探すのだ?」


 振り返るななの瞳は期待にキラキラ輝き、燈也は苦笑しつつ肩をすくめた。


「そうだな……まずは知り合いからあたってみるか」


「怜花ちゃんはどう?」

 リエラが提案する。


「あ……そういえば前にピアノやってたって言ってたな……」


 思い返すと、昨日ななが落ち込んでいた時も真っ先に寄り添っていたのが怜花だった。

 頼るなら、まず彼女が一番だろう。


「……というわけなんだが……」


 燈也が簡潔にまとめて話すと、怜花は驚くどころか喜んで承諾してくれた。


「はい!ななちゃんの力になれるのなら私も嬉しいです。

 全力でサポートさせて下さい!」


 ななはぱぁっと顔を輝かせた。


「ありがとうなのだ!」


 小さな体でポンと跳ねるように喜ぶ。

 怜花はそんなななを“可愛い妹を見るような眼差し”で見つめ、そっと手を取った。


「一緒に頑張りましょうね、ななちゃん」


 その優しさに、ななは嬉しくなって怜花の手をぎゅっと握り返す。



「キーボードはこれで大丈夫だな。

 ベースは俺がやるとして……あとはドラムとギター辺りが欲しいところだな。

 他のヤツらにも声を掛けてみよう」


 怜花も「はいっ」と元気よく頷いた。



 魔法執行部の部室の扉を開けた瞬間、部室内に響き渡った声。


「却下ァァァァ!!!!」


 高天原帝亜(たかまがはらてぃあ)が両腕で大きくバツ印を作りながら、目をひん()いていた。

 椅子ごと後ろに転がりそうな勢いだ。


「まだ何も言ってないだろうが……」


 燈也が呆れたように言うも、帝亜はまったく聞く耳を持たない。


「幽霊に取り憑かれているヤツに話すことはないわ!」


 その言葉に、ななは「むっ」と頬をふくらませる。


 工藤英明(くどうひであき)がため息をついた。


「スマン……ずっとこの調子でビビッているんだ」


 すかさず帝亜が机を叩いた。


「だ、だから!ビッ……ビビッてなんかいないわ!」


 ……声が震えている。


「それじゃあ協力してやれよ」


「いやよ!呪われたらどうするの?」


「こんな可愛い子が呪う筈ないと思うのですが……」


 怜花が首を傾げながらななを見ると、ななは少し考え──

 目を輝かせて、ひらっと腕を上げた。


「わー、おばけだぞー」


 ぷらんぷらんと手のひらを揺らす、明らかに“可愛いだけ”のポーズ。


「ぎゃーー!!呪われるっ!?」


 帝亜は悲鳴を上げて、椅子の後ろに全力で隠れた。


 燈也は額を押さえる。


「……この様子じゃダメそうだな」


 怜花も苦笑し、肩をすくめる。


「……しょうがない…他を当たろう」


 帝亜が机にしがみついて震えているのを横目に、三人は静かに部室を後にした。



 昼下がりの中庭。

 風が植え込みを揺らし、遠くで部活動の声が響く。

 そんな中、三人はベンチ周りに集まり、どんよりとした空気をまとっていた。


「見つからないのだ…」


 なながしょんぼりと地面に落書きを描くように指でなぞる。


「はぁ…全然ダメだな……」


 燈也はベンチにもたれ、頭の後ろで手を組んだまま空を見上げた。


「もっと生徒が集まる場所を回ってみましょうか…?」


「うーん…」


 そんな疲れ切った空気の中──


「おーい、誰かを忘れてるんじゃないか?」


 どこからともなく、軽薄(けいはく)な声が響いた。


「なんだ…ヘンタイか…」


 ななの辛辣(しんらつ)すぎる言葉が一刀両断。


 風間郷夜(かざまごうや)は、胸に手を当ててオーバーに傷つくフリをした。


「オイオイ、随分(ずいぶん)な言い方だな!」



「なな達は忙しいのだ。どっか行くのだ」


 手をしっしっと追い払う仕草。


 郷夜は笑顔のまま一歩距離を詰めてきた。


「いくらオレ様がイケメンだからって照れなくてもいいんだぜ?」


「ガブっ!!」


 ななが勢いよく噛みついた。


「ぎゃーー!クソ離れろ!!」


 郷夜は両腕をぶんぶん振り回してななを引きはがそうとする。

 その様子に燈也は溜息(ためいき)をついた。


「ハァ…やれやれ」


 怜花は困ったように笑う。


「ど、どうします?」


「…しょうがねーな。ほら、これでも食って落ち着けよ」


 燈也はポケットから煎餅(せんべい)を取り出す。

 ななは郷夜から離れ、目を輝かせて受け取った。


「わぁ…すごく美味しいのだ!」


 あっという間に機嫌が戻り、燈也はほっとしたように笑う。


「ハハハ…それは良かった」


 (ただの残り物だけどな…)


「それで、風間。なんのつもりだ?」


 燈也が問うと、郷夜は自信満々に親指をぐっと立てた。


「オレ様も手伝ってやるよ!」


 三人は一瞬、「え?」という顔で固まる。


「お前が…?何が狙いだ?」


 完全に疑いの目。

 郷夜は胸に手を当て、大袈裟に肩を落とした。


「そんな身構える必要はねーよ」


 そして決めポーズ。


「オレ様はただ──困ってる女の子を放っておけないだけさ」


 怜花は思わず感動したように手を組んだ。


「風間さん…素敵です…!」


(いつか騙されなきゃいいが…)と燈也は心の中で思う。


「ななどうする?」


 燈也がななに選択を委ねる。

 ななは腕を組み、少しだけ考え──


「…仕方ない。仲間に入れてやるのだ」


 そう言うと、郷夜は両拳を突き上げた。


「よっしゃー!!」


「音楽経験はあるのか?」


 燈也が問う。


「勿論、こう見えてドラムやったことあるからな!

 泥船に乗ったつもりで任せておけ!」


「それを言うなら大船だろ…」


 いつも通りの鋭いツッコミ。


 怜花は笑顔で言う。


「ともかく、これで一人決まりましたね」


 燈也も頷いた。


「そうだな…後はギター辺りが欲しい所だが…」


 その時、郷夜がニヤリと笑って指を立てた。


「それならオレ様に心当たりがあるぜ?」


「ヘンタイ仲間は嫌だぞ?」


 ななはまだ警戒モード。


「大丈夫だって!…って…ん?誰がヘンタイだ!コラ!」



 燈也は郷夜の心当たりの相手である――漣流水(さざなみるみ)と妹の癒水(ゆみ)を捕まえ、事情を説明した。


 流水は腕を組んで小さく息を吐く。


「…なるほど。事情は分かったわ。仕方ないわね」


 癒水はすぐに優しい顔で笑った。


「私もフルートでしたらお手伝い出来ますよ。」


「ありがとう。二人とも助かるぜ」


 怜花が首を傾げる。


「でも風間さんはなんで知ってたんでしょうか?」


 燈也は苦笑いで頭を掻く。


「分からん…こいつの情報網も侮れないな」


 流水が問いかける。

「それで本番はいつの予定なの?」



 燈也が腕を組んで考え込んでいると──


「ならさ、次の創立祭とかはどうだ?」


 郷夜が胸を張って提案する。


 怜花が目を丸くした。

「一か月もありませんが大丈夫でしょうか?」


「オレ様がいるんだ。心配はいらねーぜ」


 流水は即ツッコミ。

「アンタが一番心配なのよ」


 癒水が微笑んで続ける。

「一致団結すれば、きっと上手くいきますよ」


 ななは胸の前で手を握りしめた。


「皆、ありがとうなのだ」


 燈也は笑い、力強く宣言した。


「よーし!明日の放課後から練習開始だ!」


「おー!!」


 中庭に、六人の声が響き渡った。



次回予告 『第29想 問題発生――虹のカケラ 前編』


バンド練習へ向かう途中――

 燈也たちの前に現れたのは、学校で暴れる魔法生物だった。

 どうやら、実験に失敗したらしい。生徒達の悲鳴、制御を失った魔力。 


 「面倒くさいが、放ってはおけないな。」


 仲間と視線を交わし、それぞれの力を解き放つ。




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