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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第二章 魔法試験編

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第28想 チーム結成――それぞれの思惑

前回までのあらすじ



魔法嫌いな元・学園最強――不知火燈也。


魔法執行部に渋々加入した彼は、幽霊調査の任務で未練を抱えた少女・ななと出会う。


彼女の願いを叶えるため、燈也は仲間たちと共に“バンド”を結成し、ライブという挑戦に踏み出す。


衝突、挫折、そして失われていく記憶――


それでも想いは消えず、歌は奇跡を起こした。




ライブは成功し、ななの未練は晴らされる。


次に待ち受けるのは、学園最大の試練――魔法試験。

その試験に向けての準備が始まる。



 

「チームか……めんどくせーな」


 朝のざわめきが満ちる校舎の廊下で、燈也(ともや)は小さく呟いた。

 魔法試験――それもチーム制。

 協力だの連携だの、正直気が重い。


「……あっ、燈也さん」


 聞き慣れた声に振り返ると、そこには怜花(れいか)が立っていた。

 控えめに手を胸元で揃え、少し緊張した様子だ。


「怜花か。そういやお前、チームはもう決まったのか?」


 何気なく尋ねると、彼女は一瞬視線を泳がせ、困ったように笑った。


「いえ……全然です。私、弱いですし……皆さんの足手(まと)いになっちゃいますから……あっ、はは……」


 自嘲(じちょう)気味なその笑みに、燈也は小さく息を吐く。


「そっか……実は俺もまだ決まってないんだ」


 一拍(いっぱく)置いてから、続ける。


「良ければ、一緒に組むか?」


「……え?」


 怜花は目を丸くし、信じられないといった様子で燈也を見上げた。


「ほ、本当によろしいんですか……?」


「ああ。お前が良ければな。気の合うヤツの方が、やりやすいから」


 その言葉に、怜花の表情がぱっと明るくなる。


「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」


「こっちこそ、よろしくな」


 こうして、怜花がチームに加わった。


「さて……これで残りは三人か」


 燈也は腕を組み、周囲を見回す。


「誰か良いヤツいないか……せめて、うるさくないといいんだが」


 二人で廊下を歩きながら、目ぼしい生徒に声をかけていく。


「おーい。おーい」


「……すみません、私は特に……」


「おーい!!」


「怜花もか……まぁ、しょうがないか」


 燈也は肩をすくめる。


「とりあえず、片っ端から当たってみるか」


 その瞬間。


「二人とも無視しないでくれよぉぉ!!」


 突如、背中に強い衝撃。

 次の瞬間、何かが燈也にしがみついた。


「だあああ!! 分かったから! とりあえずくっつくのはやめろ!」


郷夜(ごうや)さん……?」


 怜花が声をかけると、郷夜は即座に切り替わり、(さわ)やかな笑顔を浮かべた。


「やぁ怜花ちゃん。今日も綺麗だねぇ」


「……そういうのはいいから、本題を言えよ」


 燈也が面倒くさそうに睨む。


「なああ~頼む!不知火(しらぬい)!オレサマもチームに入れてくれよ!」


「おわっ! だからくっつくなって言ってんだろ!」


 無理やり振りほどこうとするが、郷夜は離れない。


「頼むよぉ~!追試なんて絶対嫌なんだよぉ!」


 切羽詰(せっぱつ)まったその声に、周囲の視線が集まり始める。

 燈也は耐えきれず、こめかみに指を当てた。


「ああ……それでか」


 事情を察し、深いため息をひとつ。


「悪いな。他のヤツ選ぶから」


 はっきりと言い放つ。


「そんなぁ~!不知火!オレサマ達、親友だろぉ?」


 涙目で訴えてくる郷夜に、燈也は冷めた視線を向けた。


「いや。だってお前、弱いじゃん……それにうるせーし。他を当たってくれ」


 容赦(ようしゃ)のない言葉だったが、それでも郷夜は引き下がらない。


「そ、そんな!頼むよ!オレサマにはお前しかいないんだ!」


 燈也の腕にしがみつき、必死に食い下がる。


「人助けだと思ってさ! なあ……」


「……ったく」


 これ以上(こば)めば、さらに面倒なことになる。

 燈也は天井を(あお)ぎ、観念(かんねん)したように息を吐いた。


「分かったよ」


「不知火、恩に切るぜ!! 流石はオレサマの親友だぜ!」


 ぱっと表情を輝かせ、勢いよく親指を立てる郷夜。


「いや、別に親友じゃねぇし……」


 燈也は即座に否定し、(にら)みを利かせる。


「試験で足手纏いになるようだったら、見捨てるからな?」


「おう!ありがとうよ!!へへっ……大丈夫!タイ〇ニックに乗ったつもりでいてくれ!」


「……それ、余計不安になる例えだろ」


 ぼそりと(つぶや)く燈也に、怜花が慌てて間に入る。


「だ、大丈夫ですよ。郷夜さんも……仲間なんですから」


 その優しい言葉を聞いた瞬間、郷夜のテンションは一気に最高潮(さいこうちょう)へ達した。


「やっほー!今日も元気?」


 スキップしながら、次々と女子生徒に声をかけていく。


「……あれでも、か?」


 遠い目で呟く燈也。


「た……多分」


 怜花も苦笑しつつ頷いた。


「……とりあえず、これで三人だな」


 燈也は頭を()き、改めて状況を整理する。


「あと二人か……残りは、せめて静かな子が欲し――」


「コラァァ!!!! 風間ァァ!!!!!」


 廊下に雷鳴(らいめい)のような怒声(どせい)が響き渡った。

 次の瞬間、――郷夜の体が宙を舞い、情けない悲鳴とともに床へと転がる。


「もう……すぐに騒ぎを起こすんだから!」


 腕を組んで仁王立(におうだ)ちしているのは流水(るみ)だった。

 その背後には、呆れ顔の生徒たちと妹の癒水(ゆみ)が集まっている。


「ぐへっ……」


 床にうつ伏せになったまま、郷夜が情けない声を漏らす。


「流水姉、今日も流石だな」


 燈也は半ば感心、半ば諦めたように(つぶや)いた。


「燈也、あんたはもうチームは決まったの?」


 鋭い視線を向けられ、燈也は肩をすくめる。


「全員じゃないけどな……ここにいる怜花と俺、それと……そこの風間だ」


 その名前を聞いた瞬間、流水の(まゆ)がぴくりと動いた。


「なっ! ちょっと、こんなヤツと組んでるの?」


「バカだし、今からでも考え直した方がいいわよ」


 容赦のない言葉が、郷夜に突き刺さる。


「いや……俺も最初はそう思ってたんだが」


 燈也は苦笑(くしょう)しながら後頭部を掻く。


「必死に頼み込まれてな……」


「もう、甘いんだから!」


 流水は大きく息を吐き、呆れたように首を振る。


「……でも、そこがあんたの良い所でもあるのよね。」


 周りに聞こえないぐらいの小さな声でそう付け足す。


「なら、私と癒水も一緒に入ってあげる」


 その言葉に、場の空気が一変する。


「癒水も、それで良いでしょ?」


 問いかけられた癒水は、控えめに(うなず)いた。


「はい。私もまだ決まっていませんでしたし……」


「二人とも……ありがとう」


 燈也は素直に礼を言った。


「決まりね」


 流水は腕を組み直し、倒れたままの郷夜を一瞥(いちべつ)する。


「風間がヘマしないように、私がしっかり見てるわ」


「ひっ……!」


 郷夜の体が小さく震えた。


「私も戦闘は苦手ですが、回復ならお任せ下さい」


 癒水が穏やかな笑みで続ける。


「お二人がいれば、心強いですね!」


 怜花も嬉しそうに声を上げた。


「そうだな」


 燈也は集まった仲間たちを見渡し、静かに、しかし力強く言う。


「皆で頑張ろう!」


 こうして、魔法試験に挑むためのチームは――

 少し騒がしく、だが確かな絆を持って、揃ったのだった。



 一方――

 魔法執行部の部室では、いつもより少し張り詰めた空気が(ただよ)っていた。


 机を囲むようにして集まったメンバーたちの前で、部長――高天原帝亜が淡々と告げる。


「魔法試験のチームに関してだけど……私、工藤(くどう)雄介(ゆうすけ)、そして――復帰した、ななみね」


 その名前が出た瞬間、部室の空気が一段明るくなる。


「またよろしくね!」


 ななみが柔らかな笑顔で手を振ると――


「うおおおお!!」


 突如として雄介が立ち上がった。


「ななみさんの為に俺、頑張ります!!!

 ななみさんの為なら、たとえ火の中、水の中!この身が滅びようとも、あなたをお守りします!!」


 全身全霊、魂の叫びだった。


「いや……」


 ななみは少し困ったように首を傾げる。


「滅んだら……守れないんじゃ……?」


「――っ!」


 雄介は一瞬言葉に詰まり、だがすぐに立て直す。


「あっ……ははは。えっと……あんまり無理しなくてもいいからね?」


「ななみさん……なんとお優しいお言葉……」


 雄介の目に、みるみる涙が溜まっていく。


「俺、感動しました……うおおおおおおお!!」


「泣くほどのことではないだろ……」


 英明(ひであき)が冷静に突っ込みを入れるが、雄介の耳には届いていない。


「ところで」


 帝亜が話を戻すように言った。


「もう一人はどうする?」


「心配ないわ」


 帝亜は静かに視線をドアへ向ける。


「確か……もうそろそろ来る頃だと思うけど……」


 その直後、部室の扉が勢いよく開いた。


「――“鏡 膤斗(かがみ ゆきと)”、ただいま戻りました!」


 快活な声とともに現れた青年を見て、工藤が目を細める。

 膤斗は青龍魔術学園二年、魔法執行部部長補佐にして、工藤に次ぐ実力者だ。

 180センチの長身の(さわ)やかなイケメンで、クリーム色のくせ毛をしている。

 魔法ランクはA、氷魔法が得意。戦隊モノや漫画好き。


「そうか……お前か」


「久しぶりだな、工藤」


  膤斗はにやりと笑い、工藤の肩を軽く叩く。


「少し見ないうちに、また強くなったんじゃねえか?」


「フフっ……お前もな」


 短い言葉の中に、互いを認め合う空気が漂う。


「……誰、この人?」


 ななみが小さく首を傾げる。


「ななみとは面識がなかったわね」


 帝亜が説明を引き取る。


「彼は朱雀魔導学院(すざくまどうがくいん)との交流学習の一環(いっかん)として、しばらく向こうに行ってたのよ。」


「まぁ……そういうことです」


  膤斗はななみに向き直り、軽く頭を下げる。


「可愛いお嬢さん。改めてよろしくな」


「はい。こちらこそ」


 丁寧に返すななみの横で――


「……むむっ!相変わらずだな」


 雄介が露骨(ろこつ)に警戒の視線を送る。


「そういや……」


  膤斗がふと思い出したように言った。


「部長のこと、気にしてましたよ?……良かったんですか?」


 部室の空気が、一瞬だけ静まる。


「……ええ」


 帝亜は迷いなく答えた。

「今の私は、もう青龍学園の生徒だからね」


「……部長がそう言うなら、俺は構わないんですが……」

  膤斗は少し間を置き、部長を見る。



「……ねえ、鏡クン?」


「なんですか?」


「おかえりなさい。――また、頼りにしてるわよ」

 帝亜が柔らかく微笑む。


 その言葉に、膤斗は一瞬驚いたように目を(まばた)かせ――すぐに真剣な表情になる。


「はい」


 力強く、はっきりと。


「全力で頑張ります」


 こうして魔法執行部の試験チームもまた、

 それぞれの想いと過去を胸に――静かに、だが確かに動き出していた。



次回予告 『第29話 十月花』


魔法試験に向け、生徒たちはそれぞれの想いを胸にチームを結成していく。

実力、信頼、そして覚悟――すべてが試される舞台の裏で、学園の影に蠢く気配があった。


誰にも知られぬまま暗躍する、謎の組織。

彼らの目的は魔法試験か、それとも――。


迫り来る不穏な影に、燈也たちはまだ気づいていない。

試験は、ただの実力測定では終わらない。

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