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Himeyuri ―魔法を嫌う元学園最強の主人公ー  作者: 小鳥遊 千夜
第六章 マジック・ウィザード・トーナメント前夜祭――魔導客船テティス編

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第229想 決着目前!雪村、最後の一太刀

 

「さぁ……最後の死合といきましょう。」

 雪村(ゆきむら)の身体を走る魔力回路が、限界を超えて異常なほどの光を放っていた。


 青白い光が全身を駆け巡る。

 それは、既に限界を越えた肉体を無理やり動かすための最後の火だった。


「……ッ」

 (りん)が息を呑む。


 鉄景(てつかげ)は言葉も無くただ、固く拳を握り締める。



「……これで、最期です。」

 目の前に立つ雪村から、凄まじい殺気が放たれている。


 ドクンッ!!と雪村の魔力回路が一際強く輝き

 次の瞬間、雪村の姿が消える。


「来るぞ!」

 凛が叫ぶ。


「ああ!」

 鉄景が一歩も退かずに構える。


≪黒鉄流 金剛不壊(こんごうふかい)。≫

 鉄景の全身を鉱物キューブが幾重にも重なり、超硬質の装甲へと変え正面から、迎え撃つ。


 同時に凛も続く。


『岩よ、我が身に宿れ。』

≪白金流格闘術 不動(ふどう)

 凛の全身の筋肉と骨格が硬化し、岩のような質量を帯びる。


 鉄景の横へ並び、その中心へ雪村が迫る。


「帝国式雪村流剣術最終奥義――」


 雪村の姿がさらに加速し、青白い光が一条の線となった。


禁式(きんしき)・無間絶界(・むけんぜっかい)!!≫


 空間が裂け、音が遅れ視界が追いつかない。


 それでも、二人は逃げずに受けるために立つ。


「おおおおおおおおッ!!」

 鉄景が拳を叩き込み、硬質化した身体が唸る。


 岩ではない、“砕けぬ意志”そのもの。


「はあああああッ!!」

 同時に、凛も不動の身体で斬撃を受け止める。


 ガギィィィィィィン!!


 衝撃が大ホールを揺らす。


「ぐぅぅぅぅぅっ!!」


 鉄景の装甲に亀裂が走り、凛の足元の床が砕ける。


 それでも二人は退かない。


「まだだ!!」

 鉄景が吠える。


「ああ、押し返す!!」

 凛の身体が軋みながらも、それでも耐え続け、雪村の刃が初めて止まる。


「――ッ!!」

 雪村の眼が揺れ手が震えるが、それでも力を込め続ける。


 限界を超えた一撃。


 そこへ、鉄景が一歩踏み込み、拳が叩き込まれる。

「砕けろォォォォッ!!」


 ズガァァァァァン!!


 雪村の身体が吹き飛ぶ、鉄景も膝をつく。


「ぐっ……!……っ、あ……!」

 凛も床へ転がる。


「……まだ……」

 それでも、雪村がゆっくりと立ち上がろうとする。

 

 軍刀を握る指が、震え力が入らず、思うように身体は動かない。


 点滅していた魔力回路の青白い光が、次々と消えていく。

 薬によって無理やり引き上げられていた肉体が、限界を迎えようとしているのだ。


「……まだ、任務が残っているというのに……。」

 雪村は静かに呟き、軍刀が手から落ちる。


 カラン……。


 乾いた音がホールへ響き、雪村の膝が折れる。


「……ヴォルフ閣下。……お役目を果たせずに申し訳ありません……。

 ……。我々の帰る場所を……再び……。」

 そう言い残すと雪村は事切れ、身体がボロボロと崩れていく。


 鉄景が立ち上がり、凛もまた痛みに顔を歪めながら立った。

 二人とも何も言わずに雪村の最期を見届けていた。


 しばらくの沈黙の後。


「……ヴォルフ閣下か…最後まで己を貫いたな。」

 鉄景が低く呟いた。


「そうだな。やり方は間違っても、この人の信念は本物だった。」

 凛は視線を落としたまま、小さく息を吐く。


「……ああ。」

 鉄景は短く息を吐いた。


 敵であり、人質を巻き込むことすら厭わず、任務を果たそうとした軍人。

 それでも。最後まで彼が守ろうとしたものは、自分自身ではなかった。

 祖国、仲間の為に――

 歪んだ形であれ、確かに存在した「守るべきもの」への執念。


 そのために、雪村は最後まで自分の命を燃やし尽くしたのだ。


「全く……敵ながら大したヤツだ。」

 鉄景が呟く。


 雪村の倒れた姿を静かに見届けるように、その姿が消えるまで二人はその場を離れなかった。



次回予告 『第230想 死してなお、ここは通さない』


 ベルガ、紅音VS真田龍牙。激戦はついに正念場へ。


 紅音は炎魔法を限界まで重ね、さらに氷魔法で真田の動きを封じる。

 対する真田も、最後の切り札を解禁。


 互いに一歩も譲らぬまま、限界を超えた必殺技が激突する!

 果たして、この死闘を制するのは――!


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