第229想 決着目前!雪村、最後の一太刀
「さぁ……最後の死合といきましょう。」
雪村の身体を走る魔力回路が、限界を超えて異常なほどの光を放っていた。
青白い光が全身を駆け巡る。
それは、既に限界を越えた肉体を無理やり動かすための最後の火だった。
「……ッ」
凛が息を呑む。
鉄景は言葉も無くただ、固く拳を握り締める。
「……これで、最期です。」
目の前に立つ雪村から、凄まじい殺気が放たれている。
ドクンッ!!と雪村の魔力回路が一際強く輝き
次の瞬間、雪村の姿が消える。
「来るぞ!」
凛が叫ぶ。
「ああ!」
鉄景が一歩も退かずに構える。
≪黒鉄流 金剛不壊。≫
鉄景の全身を鉱物キューブが幾重にも重なり、超硬質の装甲へと変え正面から、迎え撃つ。
同時に凛も続く。
『岩よ、我が身に宿れ。』
≪白金流格闘術 不動≫
凛の全身の筋肉と骨格が硬化し、岩のような質量を帯びる。
鉄景の横へ並び、その中心へ雪村が迫る。
「帝国式雪村流剣術最終奥義――」
雪村の姿がさらに加速し、青白い光が一条の線となった。
≪禁式・無間絶界!!≫
空間が裂け、音が遅れ視界が追いつかない。
それでも、二人は逃げずに受けるために立つ。
「おおおおおおおおッ!!」
鉄景が拳を叩き込み、硬質化した身体が唸る。
岩ではない、“砕けぬ意志”そのもの。
「はあああああッ!!」
同時に、凛も不動の身体で斬撃を受け止める。
ガギィィィィィィン!!
衝撃が大ホールを揺らす。
「ぐぅぅぅぅぅっ!!」
鉄景の装甲に亀裂が走り、凛の足元の床が砕ける。
それでも二人は退かない。
「まだだ!!」
鉄景が吠える。
「ああ、押し返す!!」
凛の身体が軋みながらも、それでも耐え続け、雪村の刃が初めて止まる。
「――ッ!!」
雪村の眼が揺れ手が震えるが、それでも力を込め続ける。
限界を超えた一撃。
そこへ、鉄景が一歩踏み込み、拳が叩き込まれる。
「砕けろォォォォッ!!」
ズガァァァァァン!!
雪村の身体が吹き飛ぶ、鉄景も膝をつく。
「ぐっ……!……っ、あ……!」
凛も床へ転がる。
「……まだ……」
それでも、雪村がゆっくりと立ち上がろうとする。
軍刀を握る指が、震え力が入らず、思うように身体は動かない。
点滅していた魔力回路の青白い光が、次々と消えていく。
薬によって無理やり引き上げられていた肉体が、限界を迎えようとしているのだ。
「……まだ、任務が残っているというのに……。」
雪村は静かに呟き、軍刀が手から落ちる。
カラン……。
乾いた音がホールへ響き、雪村の膝が折れる。
「……ヴォルフ閣下。……お役目を果たせずに申し訳ありません……。
……。我々の帰る場所を……再び……。」
そう言い残すと雪村は事切れ、身体がボロボロと崩れていく。
鉄景が立ち上がり、凛もまた痛みに顔を歪めながら立った。
二人とも何も言わずに雪村の最期を見届けていた。
しばらくの沈黙の後。
「……ヴォルフ閣下か…最後まで己を貫いたな。」
鉄景が低く呟いた。
「そうだな。やり方は間違っても、この人の信念は本物だった。」
凛は視線を落としたまま、小さく息を吐く。
「……ああ。」
鉄景は短く息を吐いた。
敵であり、人質を巻き込むことすら厭わず、任務を果たそうとした軍人。
それでも。最後まで彼が守ろうとしたものは、自分自身ではなかった。
祖国、仲間の為に――
歪んだ形であれ、確かに存在した「守るべきもの」への執念。
そのために、雪村は最後まで自分の命を燃やし尽くしたのだ。
「全く……敵ながら大したヤツだ。」
鉄景が呟く。
雪村の倒れた姿を静かに見届けるように、その姿が消えるまで二人はその場を離れなかった。
次回予告 『第230想 死してなお、ここは通さない』
ベルガ、紅音VS真田龍牙。激戦はついに正念場へ。
紅音は炎魔法を限界まで重ね、さらに氷魔法で真田の動きを封じる。
対する真田も、最後の切り札を解禁。
互いに一歩も譲らぬまま、限界を超えた必殺技が激突する!
果たして、この死闘を制するのは――!




