表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第一章 幽霊少女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/156

第20想 思い出させたくない夜


「幽霊?……そういや昼間に聞こえた噂話……あれも」


 燈也には思い当たるものがあった。


「そう。数日前から報告が急増してるの。

 夜になると校舎内を彷徨う“白い影”。声だけの怪現象。備品が勝手に動いている。

 …まぁ、ありがちな話ばかりなんだけど」


 帝亜は肩をすくめながらも、すぐ真剣な表情に戻した。


「でもよ。幽霊なんて迷信だろ?本当にいるわけが……」


 燈也が眉をひそめると、帝亜はわざとらしく咳払いした。


「私だって幽霊なんて信じてないわ。

 でもね、こうして生徒の話が集まる以上、放っておけは置けない。

 だから調査が必要なの……あ、言っとくけど怖いとかじゃないわよ? 全然」



「ひひ……」


 誰かのニヤついた声が背後から聞こえる。


「ヒトデだあああぁぁーーー!!」



「……ッッッ!!!???」


 帝亜の喉のどから、悲鳴とも無音ともつかない息が漏もれた。完全に固まっている。


(っていうか…なんでヒトデなんだ……?)


 燈也が目を細めた瞬間、帝亜の背後からひょっこりと影が現れる。



「ふふふっ……セレナ先生だぞ〜」



「先生までどうしてここに?」



「仲間外れは寂しいじゃない?

 それに私は魔法執行部の新しい“顧問”なんだから問題は無いと思うけど?」



「アンタが顧問かよ……」



 燈也の眉がピクリと跳ね上がる。


 “なんでよりにもよってこの人が”と言いたげな顔だ。



「不満なのかな?」

 セレナは笑顔のまま、しかし目だけが鋭くなる。


「いや別に……俺はただの助っ人だから誰が顧問でも構わねぇよ」


「それより、部長さんよ。どうやって“白い影”を探すつもりなんだ?」


 その瞬間、帝亜の肩がビクリと震えた。


(あ、これガチで怖がってるやつだ……)



「……? 顔色悪いが大丈夫か?」

 英明がのぞき込むと、帝亜はびくっと後ずさりした。


「だ、大丈夫に決まってるでしょ! ぜ、全然怖くないし!!」


 声が半音上ずっている。


「流石、部長さん! 凄いです!」


 愛紗が純粋無垢(じゅんすいむく)な瞳でキラッと褒ほめた。


 帝亜は一瞬で背筋を伸ばし、ドヤ顔を作る。


「フッ……当然じゃない」


 自信満々に胸を張った、その直後。



「わぁっ!!」



「ひっ!!?」

 

 セレナが背後から手を伸ばして驚かせると、帝亜は情けないほど高く跳び上がった。


(完全に怖がってるな……)


 燈也は心の中で静かに突っ込む。


 帝亜は息を荒げながら必死に平常心を取り戻し、ひとつ咳払せきばらいして本題へと入る。


「はぁ……はぁ……と、とにかく。

 何か“正体不明のもの”がいる以上、単独行動は危険よ。

 これから班に分かれて校内を調べるわ」


 校舎の奥から吹き抜けてくる風が、夜の冷気をさらに強くする。


 窓ガラスがキィ…とわずかに鳴った。


「皆さん、気をつけていきましょう!」


 怜花が皆を鼓舞する。


「大丈夫さ! ハニー達はオレ様が守るからね!」


 いつの間にか戻ってきていた郷夜が、胸に手を当ててキメ顔。


「お前、いつの間に戻ってきたんだよ……」


「良いじゃねぇか。オレ様だって可愛い子ちゃんとイチャイチャしたいんだよ」


「……ったく。遊びじゃねぇんだぞ」


 燈也は呆れ、リエラは苦笑い。


 怜花は相変わらず微笑んだままだ。


「こんな連中で……本当に大丈夫、なんだよな?」


「大丈夫ですよ、燈也さん。大勢の方が楽しいですし」


 怜花の柔らかい声に、燈也は僅かに肩の力を抜いた。


「……まぁ、お前が言うなら」



 帝亜は気持ちを切り替えるように手を叩いた。


「それじゃあ――愛紗、皆にアレを」


「はい! じゃじゃ〜ん! その名も“どこでも無線機~!”ですっ!」


 愛紗が得意げに、側面が青白く光る腕時計のようなものを配り始める。


 魔導製品っぽいが市販さているようなものではない。


「使う時は真ん中のボタンを押してください。」


 燈也は眉を寄せた。


「色々……大丈夫か?」


「はい! 自信作ですから!」


「いや、そういう意味じゃ……まぁいいか」


 愛紗の満面の笑顔に押されて、もう何も言えなくなった。


 ふと燈也は、周囲にいるべき人物の姿がないことに気づく。


「あれ? ……そういえば」


「なにかしら?」


「ななみの姿が見えないんだが。何かあったのか?」


 帝亜の瞳が、一瞬だけ揺れた。


 さっきまでの大げさな反応とは違う、静かな揺れ。


「あら、気になるのかしら?」


「そんなんじゃねぇよ。真面目に答えろ」


 帝亜はかすかに笑い、そして伏し目ふしめがちに呟つぶいた。


「……大したことじゃないわ。ただ――あの子、可愛いでしょ。

 夜なんかに出歩いて、また変なヤツに絡まれたら困るのよ」


「それに――今は“()()()()()()()()()”のよ」


「どういう意味だ?」


 燈也は言葉の裏を探ろうとするが、帝亜が遮さえぎる。


「なんでもない。忘れなさい」


 その表情は、どことなく脆く見えた。


「お前らしくないな」


「うるさいわよ、工藤」


 帝亜は話題を完全に切り上げるように、パンッと強めに手を叩いた。



「それじゃあ。私達C班は1階。B班は2階。A班は3階を調べるわ。――いい? 気を抜かないで」


 夜の校舎は、息を呑むほど静かだった。


 そして――


 校舎の奥の闇で、確かに“誰か”が笑った気がした。






次回 『第21想 幽霊少女の序曲』


班に分かれ、静まり返った夜の学園で幽霊調査を始めた燈也達。

闇に包まれた校舎、軋む廊下、現れる白い人影の姿。

それは本当に幽霊なのか、それとも――。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ