第21想 揺れる哀歌
前回までのあらすじ
幽霊少女――ななの願いを叶えるため、不知火燈也たちはバンドを結成した。
ひたむきに練習を重ねる彼らの姿に心を動かされ、少しずつ応援する者も増えていく。
ライブ本番まで残りわずか。
そんな中、セレナ先生に導かれて、ななの過去と深く関わる“ある人物”と出会うことになる。
旧校舎の音楽室は、夕暮れの光が斜めに差し込み、埃の舞う静かな空間だった。
さきほどまで鳴り響いていたピアノの余韻だけが、まだ空気に溶け残っている。
「二人とも、こんな所に何しに来たの?」
鍵盤から手を離したななみが、穏やかな声でそう問いかける。
その表情には警戒も疑念もなく、ただ純粋な好奇心だけが浮かんでいた。
――まさか、本当に……。
燈也は胸の奥がざわつくのを感じながら、柊ななみの視線の先を盗み見る。
そこには確かにななが立っている。少し怯えたように、しかし確実に“存在している”。
――ななの姿が、見えていないのか?
――いや……そんな漫画みたいなことがあるわけない……。
そう自分に言い聞かせるものの、ななみの様子には嘘や芝居の気配が微塵もなかった。
見えていない――その事実を疑う余地が、少しずつ現実味を帯びていく。
「あの……ななみさん、実はここに……」
意を決して口を開いた怜花だったが、
「あっ……」
その言葉は、ななの小さな手によって遮られた。
ぎゅっと、怜花の袖を掴むその力は弱々しいのに、必死さが伝わってくる。
(……話さないで、ってことか)
怜花は一瞬迷い、そして静かに口を閉じた。
「あー……えっとな」
沈黙を破るように、燈也がわざと軽い調子で割って入る。
「ピアノの音が聞こえたんでさ。つい気になってな。
悪い、練習中だったか?」
自分でも苦しい誤魔化しだと分かっていた。
それでも今は、これ以上踏み込む勇気が出なかった。
「あははは。そんなんじゃないよ。別に誰かに聞かせるつもりもなかったし」
その屈託のない笑顔に、燈也は胸の奥がちくりと痛む。
「いい曲だよな。なんて曲なんだ?」
少しでも空気を和らげようと、燈也は話題を繋ぐ。
「『虹のグランツ』……」
その瞬間、ななみの表情が柔らかく変わった。
さきほどまでの明るさとは違う、静かで、どこか切なげな微笑み。
「亡くなった妹がね、好きだった曲なの。
よく一緒に聴いてたんだ」
音楽室の空気が、そっと重くなる。
――そうか……。
燈也の脳裏に、ななが以前、小さな声で口ずさんでいた旋律がよみがえる。
――同じ曲だ……。
「妹と……仲が良かったんだな」
自然と、声が低くなった。
「うん……」
ななみは小さく頷く。
「でも、最後はケンカしちゃったままでさ。
だから……妹には、恨まれちゃってるかもしれない」
笑っているはずなのに、その目の奥には深い寂しさが滲んでいた。
「そんな……!」
思わず、怜花が声を上げる。
「恨んでるなんて……絶対にありませんよ!」
その言葉は、ななみではなく――
まるで、ななの心を代弁するかのようだった。
ななは怜花の隣で、じっと唇を噛みしめている。
「れいちゃん……」
ななみが、少し驚いたように怜花の名を呼ぶ。
「そうだぜ」
燈也も、力強く続けた。
「仲が良かったんだろ?だったら、恨むなんてこと……あるわけねえ」
一瞬、ななみは言葉を失ったように目を伏せ、
それから――ほんの少しだけ、救われたような顔で微笑んだ。
「……二人とも、ありがとう」
ななみはそう言って、静かに頭を下げた。
その声には、ほんのわずかな震えが混じっている。
「なんでかな……」
顔を上げ、どこか懐かしむように微笑む。
「二人の言葉を聞いていたらね。
妹も……同じことを思ってくれてるような気がするんだ」
淡く笑いながら、ななみは遠くを見る。
そこにあるのは、この音楽室ではない、過去の光景なのだろう。
「……あの時に戻れるなら、仲直りしたかったな……」
ぽつりと零れた言葉は、夕暮れの静けさに溶けていった。
「その……」
燈也は一拍置いてから、慎重に口を開く。
「ケンカした理由って、なんだったんだ?
よかったら、聞かせてくれないか」
ななみは一瞬だけ迷うように視線を落とし、
それから、覚悟を決めたように息を吸った。
「……今思えば、本当に他愛のない理由だったと思う」
静かな声で、ななみは語り出す。
「ある日ね、妹がうっかり……私のCDを壊しちゃったの。
それが、全部の始まり」
ななみの指先が、無意識にピアノの縁をなぞる。
「ちょうどその頃、コンサートの発表が近くて……
練習も忙しくて、気持ちに全然余裕がなかった」
自嘲するように、小さく笑った。
「だから、つい感情的になって……喧嘩になっちゃった」
音楽室に、重い沈黙が落ちる。
「コンサートが終わったら謝ろう、って……
本気でそう思ってたんだよ」
しかし――。
「でも、会場に向かってた妹と父が乗っていた魔導艇が……墜落して」
その言葉を口にした瞬間、ななみの声がかすかに掠れた。
「それで……もう、二度と会えなくなった」
燈也は息を呑む。
怜花も、言葉を失ったまま立ち尽くしていた。
「最初は信じられなかったし……
ショックで、しばらく入院してたしね……お母さんもまだ……」
表情は見えない。
だが、その背中から伝わってくる痛みは、あまりにも生々しかった。
ななもまた、その空気を感じ取ったのか、胸の前で手を握りしめ、
苦しそうに俯いている。
「……大変だったんだな」
燈也の声は、自然と低くなった。
「まぁね」
ななみは振り返り、どこか無理をしたような笑顔を浮かべる。
「でも、大丈夫だよ。
いつまでも落ち込んでるわけにはいかないし」
そう言いながらも、その笑みはどこか儚い。
「……それでも」
小さく、吐息のように続ける。
「一言だけでも……謝りたかったなぁ……」
簡単に割り切れるほど、浅い悲しみではない。
その想いが、燈也の胸にも痛いほど伝わってきた。
「ななみ……」
名前を呼ぶことしか、できなかった。
――このままで、いいはずがない。
――後悔と想いが、すれ違ったままなんて。
燈也は、胸の奥に芽生えた衝動を抑えきれず、口を開いた。
「……そうだ」
ななみが、不思議そうにこちらを見る。
「俺達のライブを……観に来てくれないか?」
その言葉に、音楽室の空気が一瞬止まる。
――繋いでやりたいと思った。
――すれ違ったままの、二人の心を。
このまま何もせずに終わらせたくなかった。
後悔の先に、ほんの少しでも救いがあるのなら――。
燈也は、まっすぐな眼差しでななみを見つめていた。
「ライブ……?」
ななみは、燈也の言葉を反芻するように小さく呟いた。
その視線は床へ落ち、指先がぎゅっと握りしめられる。
「でも……」
迷いの色は隠しようもない。
それも無理はないだろう――妹を失った記憶と、音楽。
それらは彼女の中で、今もなお強く結びついているはずだ。
「お前が音楽に抵抗ある気持ちは分かる……」
燈也は、真剣な表情で一歩踏み出す。
「だが……」
その先の言葉を探すように、一瞬だけ言葉を切る。
強く踏み込みすぎれば、逆に傷つけてしまう。
それでも、今は引けなかった。
その時――。
「あの……私からもお願いします」
怜花が前に出て、深く頭を下げた。
「……!」
ななみが目を見開く。
「あなたに聞かせたい曲があるんです。」
怜花の声は震えていたが、そこに迷いはなかった。
「頼む」
燈也もまた、一歩踏み出し、深く頭を下げる。
「ひと目だけでいいんだ!」
その必死な姿を、ななは黙って見つめていた。
胸の前で手を握りしめ、何かを堪えるように。
しばらく、沈黙が流れる。
ななみは二人を見つめ、そしてゆっくりと息を吐いた。
「……分かったわ」
その声は、決意を含んでいた。
「ライブ……楽しみにしてるね」
その一言で、張り詰めていた空気が一気にほどける。
「ありがとうございます」
怜花はほっとしたように、再び頭を下げた。
「ありがとう」
燈也も顔を上げ、真っ直ぐにななみを見る。
「期待に応えられるような、良いライブにしてみせる」
自分に言い聞かせるように、そして約束するように。
「……ふふ」
ななみは、柔らかく微笑んだ。
「お礼を言いたいのは……私のほうだよ」
その笑顔は、先ほどまでの寂しさをほんの少しだけ和らげている。
「ありがとうね」
音楽室に、優しい余韻が残った。
それは、止まっていた時間が、わずかに動き出した証のようだった。
***
夕暮れに染まり始めた中庭。
校舎に囲まれた静かな空間に、ベンチがぽつんと置かれている。
そこに並んで腰掛ける三人の間には、少しだけ気まずく、それでいて温かな沈黙が流れていた。
「なな、悪かったな……」
先に口を開いたのは燈也だった。
視線を落とし、噛みしめるように言葉を続ける。
「ごめんなさい、ななちゃん」
怜花もまた、申し訳なさそうに頭を下げる。
二人とも、旧音楽室での出来事が胸に引っかかっていた。
ななは、そんな二人の様子を見て、小さく首を振る。
「……別に、二人は悪くないのだ」
静かな声だったが、はっきりとした口調だった。
「いけないのは、ななの方なのだ」
「違います」
怜花が、食い気味に否定する。
「ななちゃんが悲しい想いをしていたのに、気付いてあげられなかった私が悪いんです」
その声は震えていた。
後悔と自責の念が、ありありと滲んでいる。
「いや……」
今度は燈也が顔を上げる。
「悪いのは俺だ」
二人の視線が、彼に集まる。
「俺はななのことを、ちゃんと信じてやれてなかった……」
拳をぎゅっと握りしめる。
「もっと真剣に考えていれば、あんなに辛い想いをさせずに済んだかもしれない」
一拍置いて、低く言った。
「……本当に、すまない」
その言葉には、誤魔化しのない後悔が込められていた。
ななは少し驚いたように目を瞬かせ、それからゆっくりと微笑む。
「燈也が信じられなかったのも、無理はないのだ」
責める調子は、まったくなかった。
「でも燈也は……お姉ちゃんをライブに誘ってくれた」
ななの声が、ほんの少しだけ柔らかくなる。
「なな一人じゃ、出来なかったのだ」
胸の前で手を握りしめ、続ける。
「だから……二人には、感謝してるのだ」
その微笑みは小さかったが、確かに温かかった。
「ななちゃん……」
怜花が、思わず呟く。
胸の奥がじんと熱くなるのを感じていた。
「俺はもう、お前を疑わない」
燈也が立ち上がり、ななを真っ直ぐに見る。
「ななを信じる」
力強く、断言する。
「ライブ、絶対成功させようぜ!」
「……はい」
怜花も深く頷く。
「私も、精一杯頑張ります」
夕暮れの中庭に、三人の決意が静かに重なった。
それは、ただの約束ではない。
互いを信じ合うと誓った、確かな一歩だった。
***
漣家の階段を降りながら、燈也はふっと鼻を鳴らした。
夕方特有の、どこか懐かしい匂い。台所から漂ってくるそれに、自然と夕食の時間を意識する。
「……腹減ったな」
そう呟きながらリビングに足を踏み入れ、ダイニングテーブルを視界に入れた瞬間——
「な……」
一瞬、言葉が詰まる。
「なんじゃこりゃあああああ!!」
思わず叫んでしまったのも無理はなかった。
テーブルの上には、明らかに“気合い”だけは十分に伝わってくる料理の数々が所狭しと並んでいる。
色合いは独創的、盛り付けは前衛的。料理というより、何かの儀式に使われそうな迫力すらあった。
「えっへん!驚いたか?」
その声の主はもちろん、ななだ。
胸を張り、腕を組んで、これでもかというほどのドヤ顔。
「二人に聞いてもらって作ったのだ!」
「……おい」
燈也は顔を引きつらせたまま、そっと癒水に近づき、小声で囁く。
「なあ……あれ、ちゃんと食べられるんだよな?」
「見た目はちょっと……いえ、だいぶあれですけど」
癒水は困ったように微笑みながらも、フォローする。
「味は大丈夫なはずですよ。なな、すごく頑張ってましたし」
「……そうか」
少しだけ安堵した、その直後。
「ななが頑張って作ったんだから」
流水が鋭い視線を燈也に向ける。
「残したら、許さないわよ?」
「わっ……わかってるよ!」
凄まれた燈也は、反射的に背筋を伸ばして答えるしかなかった。
「おお~」
そこへ階段を降りてきたのは、漣家の家長——水月だった。
テーブルいっぱいの料理を見渡し、目を丸くする。
「随分と豪華だね。今日は何かあったのかい?」
「ふふふ……」
流水が意味ありげに微笑む。
「結婚記念日が今日だって知った、ななちゃんが頑張って作ったのよ」
「……あら」
水月の後ろから現れた清水が、その言葉にぱっと表情を明るくする。
「そんな素敵なことをしてくれたの?」
ななの方を見て、目を細める。
「本当にありがとうね」
水月も深く頷き、穏やかな声で言った。
「いやぁ、嬉しいじゃないか。こんなに想ってもらえるなんて」
「にへへ」
ななは照れくさそうに、けれど誇らしげに笑う。
(良かった。元気を取り戻してくれたようだな)
その笑顔を見て、燈也は改めてテーブルの料理に目をやった。
(さて……見た目はともかく)
胸の奥が、少しだけ温かくなる。
(これは、ちゃんと“ごちそう”だな)
そう思いながら、覚悟を決めて席に着くのだった。
***
夕食を終え、自室に戻った燈也は、ベッドに腰を下ろしたまま天井を見上げていた。
「そっかぁ……ななみちゃんの妹だったとはね……」
机に腰掛けたリエラが、指先で机の縁をなぞりながら呟く。
燈也は今日の出来事を、一つ一つ噛みしめるように語り終えたところだった。
「ああ……」
燈也は視線を落とし、低く息を吐く。
「ななには、悪い事しちまった……」
その声には、後悔と自責が滲んでいた。
「でもさ」
リエラは顔を上げ、少しだけ柔らかく微笑む。
「そのおかげで、ライブに来てくれることになったんでしょ? だったら結果オーライじゃない?」
「……そうかな」
燈也は曖昧に返し、拳を軽く握る。
「俺のやってることは、ななを傷付けているだけなんじゃないかって思う時があるんだ」
「俺の選択は間違ってるんじゃないか……ってな」
胸の奥に溜め込んでいた疑念が、ぽつりぽつりと零れ落ちていく。
「……それは」
リエラは一度言葉を切り、少し考え込む。
「正直、私にも分からないわ」
意外なほど率直な答えだった。
「……すまん」
燈也は苦笑しながら頭を掻く。
「つまらない愚痴を聞かせちまったな」
「ううん」
リエラは首を振り、真っ直ぐに燈也を見る。
「……でもね」
その声は、穏やかで、それでいて芯があった。
「正しいか、間違っているかを決めるのは……他の誰でもない、自分自身じゃない?」
「――!……」
「らしくないわよ、燈也くん」
リエラはくすっと笑い、いつもの調子で言う。
「燈也くんは、いつもみたいに自分が正しいと思ったことをやればいいのよ」
その言葉は、夜の静寂に優しく溶け込みながら、燈也の胸に真っ直ぐ届いた。
「リエラ……」
燈也は顔を上げ、彼女を見る。
「ふふ」
リエラは、安心させるように微笑み返す。
「……お前の言う通りだな」
燈也はゆっくりと息を吐き、どこか吹っ切れたように笑った。
「ありがとう、リエラ。おかげで目が覚めたよ」
「どういたしまして」
軽く肩をすくめるリエラ。
燈也は再び天井を見上げる。
(——そうだな)
胸の奥で、迷いが静かに収まっていくのを感じながら。
(迷ってる暇はない。今は……俺に出来ることをやるだけだ)
そう心に決め、燈也は静かに拳を握った。
***
次の日の朝。
白く曇った空から差し込む光が、校舎の長い廊下をぼんやりと照らしていた。
本番まで、残り三日。
練習に向かうため、燈也とななは並んで廊下を歩いていた――はずなのだが。
「おーい! 早く練習やるのだ!」
振り返ると、ななはすでに数メートル先。小柄な体で腕をぶんぶん振りながら、やけに元気いっぱいだ。
「ハハハ、ずいぶん張り切ってるな」
燈也は苦笑しつつ、その背中を追う。
「どっちが先に部屋に着くか勝負なのだ!」
そう言うが早いか、ななは廊下を全力で駆け出した。
「ったく……子供じゃないんだから。おい、走ると危ないぞ!」
注意する声もむなしく、ななはスピードを上げる。
「失礼な! 子供じゃないのだ!!」
ぷりぷり怒りながら走り続け――
「わっ……!!」
鈍い音とともに、小さな体が前方に弾かれた。
「ほらみろ。だから言ったのに……」
燈也がため息混じりに言いながら駆け寄る。
ななは前にいた男子生徒と正面衝突していた。
「いたた……ごめんなさいなのだ」
床に手をつきながら、ななは素直に頭を下げる。
しかし。
男子生徒は、ななを一瞥することもなく――いや、まるでそこに誰もいないかのように、無表情のまま通り過ぎようとした。
「……おい、待てよ」
違和感に気づいた燈也が、男子生徒の腕を掴んで引き止める。
「いくらなんでも、それはないだろ。謝ってんだぞ?」
声音には自然と苛立ちが混じった。
ふざけているにしては、悪趣味すぎる。
「は? 急に何言ってんだ、お前」
男子生徒は露骨に不機嫌そうな顔で振り返る。
「は? じゃねえよ。女の子がぶつかって、謝ってただろ?」
燈也は一歩踏み込み、詰め寄る。
だが、次の言葉が――燈也の思考を凍りつかせた。
「女の子? どこにそんな子がいるんだよ。
俺とお前以外、誰もいないだろ?」
冗談を言っているような口調ではなかった。
本気で、そう信じている目だった。
「なっ……!!」
息が詰まる。
横には、間違いなくなながいる。
さっきまで謝っていた、小さな背中も、少し困ったような表情も――はっきり見えている。
「……ったく。寝惚けてんじゃねーよ」
男子生徒は呆れたように吐き捨てると、呆然と立ち尽くす燈也を置き去りにし、廊下の奥へと歩き去っていった。
その足音が遠ざかっていく中で。
――まさか……こいつまで。
胸の奥に、冷たいものが広がる。
――ななが、見えていない……?
燈也は、隣に立つななの姿を、無言で見下ろした。
次回 『第22想 魂の輪舞曲』
見えなくなっているのは、ななみだけではなかった。
少しずつ、確実に――“大切な存在”が世界から零れ落ちていく。
何が起きているのか。
ななの願いと未練、その代償とは――。
迫るライブ本番。
想いは届くのか、それとも失われてしまうのか。
すれ違う心と、残された時間。
果たして彼らは、最後まで音を鳴らし続けることができるのか。




