第166想 肝試し――運命のペア決め
「それじゃあ、肝試しスタート。…の前にペアを決めないとね。」
セレナの提案。
「ペア?どうやって分けるの?」
流水が腕を組みながら言う。
「まさかそのまま適当、とかじゃないでしょうね?」
その横で、セレナが小さな箱を取り出した。
「それじゃ、面白くないでしょ?というわけで――
ジャジャーン!!くじ引きよ」
「はい出た。運ゲーっスね」
恒一が肩をすくめる。
「公平でしょ?何か文句ある?」
セレナは淡々と返す。
「……まぁ、良いんじゃない。」
「異議なし。」
全員、なんだかんだで納得する。
「じゃあ順番に引いていって、
引いた紙には魔法でペア相手の名前が表示されるようになっているわ」
セレナが箱を差し出す。
最初に手を入れたのは――
「よし来い……!」
日向雄介。妙に気合いが入っている。
「お前なんでそんなガチなんだよ」
燈也がツッコむ。
「いやだってよ!ここでななみさんと組めたら――」
「はいはい、フラグ立てんな」
一枚を選び引き、紙を開く。
数秒の沈黙。
そして――
「っしゃあああああああ!!」
ガッツポーズ。
「な!?マジかよ!?」
「えーと、よろしくね」
ななみが笑う。
「お、おう!!任しといてください!!」
テンション爆上がり。
「次、俺な」
膤斗が無表情で箱に手を入れる。
だが――
(流水と来い)
内心は割とガチ。
紙をひらく目が一瞬だけ止まる。
「……流水だ」
「ふーん?アンタとね…。まぁいいわ。よろしく」」
流水が笑う。
「…あっ…ふつつかなものだけどよろしくお願いします!」
「その返答、なんか変だぞ?照れてんのかよ?」
「うるせーよっ!」
完全にからかわれている。
「よっしゃ、次オレ様だな!」
郷夜が勢いよく箱に手を突っ込む。
「来い……!来い……!愛しのレディー達…」
「お前もかよ」
燈也が呆れる。
数秒後。
「……」
「どうした?」
「……翔太」
「頑張りましょうね!」
即、翔太に肩を組まれる。
「いやあああああああああ!!」
郷夜、絶叫。
「なんでだよ!!なんでこの流れで男なんだよ!!」
「いいじゃねえか別に!」
「よくねえよ!!」
「防御魔法は得意なので何かあったら守ります。」
「守られたくねえ!!」
周りが盛り上がる中、郷夜は地面に膝をつく。
「次は……私ね」
聖妓が引く。
ちらっと帝亜を見る。
(こいつだけは嫌)
「……は?」
「どうしたのよ」
帝亜が覗き込む。
そして――
「は?」
同時に言う。
「なんでアンタと組むことになるのよ!」
「それはこっちの台詞よ!!」
「最悪なんだけど!」
「奇遇ね、私もよ!!」
完全に言い合い。
「チェンジ、チェンジよ!」
「チェンジすんな!!」
周囲が笑いをこらえる。
次に引いたのは黒子。
「……恒一」
「お、おう……!よろしくッす」
恒一が一瞬固まる。
「ええ」
黒子の落ち着いた返答。
だが恒一の方はガチガチ。
(冷静に……冷静に……)
全く緊張を隠せていない。
黒子が引き終えた時点で――
残っているのは、
燈也、怜花、愛紗、癒水、英明の五人。
「次はそうね。燈也くん、引いてみたら?」
セレナが差し出す。
燈也は軽く息を吐き、紙を引いた。
そして――
「……怜花だ。」
燈也が紙を見せる。
「よろしくな」
「……あ、はっ…はい……」
怜花は一歩近づく。
だがその足取りは、少しだけぎこちない。
「……大丈夫か?」
「顔、ちょっと青いぞ?」
「そ、そんなこと……」
否定しようとして――視線が森の奥へ向く。
「……ちょっとだけ、怖いかもです……」
ぽつりと、本音が漏れる。
燈也は一瞬だけ黙り――
「…大丈夫だ。俺が前に行く。お前は後からついてくればいい。」
ぶっきらぼうだが、はっきりとした声。
怜花は少し目を見開いて――
「……はい、よろしくお願いします。」
小さく頷く。
その表情は、さっきより少しだけ柔らかく少し頬を赤らめている。
「はい、残りは自動的に決定ね」
セレナが手を叩く。
「愛紗、癒水、英明は三人でペアを組みなさい。」
一方、上空では――
「……なんで私があなたと組むまないとけないのよ?」
セフィリアがそっぽを向く。
「それはこっちの台詞です。
怖いなら私一人でやるからあなたは帰れば?」
リエラが腕を組みながら答える。
「非合理的な存在を私が怖がるわけありませんよ。
それよりもオカルトなんて信じるあなたの方が怖がってるのでは?」
「なんですって!?」
いつもの言い争いが始まる。
だが、二人とも監視としてしっかりと全体を見渡しているようだ。
全ペアが揃う。改めて並ぶと――
「……なんかカオスね」
流水がぼそっと言う。
「否定できないな」
燈也も苦笑。
「さてペアも決まったことだし、始めるわ。
いい?ペアごとに間隔を空けて進むこと…それじゃあ、肝試しスタートよ。」
セレナの声が、夜の森に響くと、
それぞれのペアが、順に闇の中へと歩き出す。
まだ――
この時は、誰もが少しだけ余裕を持っていた。
これから起こる“本番”を、まだ知らないまま。
次回 『第167想 肝試し開始――その声に、ついて行くな』
夜の森へ足を踏み入れた一行。
最初は、ただの肝試しだった。軽口を叩いて、笑い合って。
少し怖いくらいで終わるはずだったのに――。
次第に濃くなっていく霧、少しずつ狂い始める“距離感”。
「……今の、誰?」
聞こえたはずの声。見えたはずの影。
遊び半分だった夜は、静かに姿を変えていく。




