第149想 炎は語り、覚悟は試される
――灼熱の空間。炎が唸り、空気が歪む。
大精霊・イフリートの一挙手一投足だけで、地面が軋む。
その圧に――
「……上等じゃない」
流水が、口角を上げた。
足元に水をまとわせ、一歩踏み出す。
「でかいだけなら、いくらでも相手してきたわよ!」
「頼もしいな」
燈也が軽く笑う。
「当たり前でしょ!」
振り返りもせず、言い切る。
その背中を――
膤斗は、静かに見ていた。
(……俺も恰好良い所を見せないとな。)
胸の奥で、何かが熱を帯びる。
「■■■■■■!!」
イフリートが腕を振り上げる。
次の瞬間――
炎の奔流が襲いかかる。
「来るぞ!気を付けろ!」
「ここは任せて下さい!」
愛紗が前に出る。
≪魔法障壁展開!!!≫
障壁が展開し炎がぶつかる。
ドォンッ!!
「くっ……!」
「踏ん張れ!」
燈也が声をかける。
「だっ……大丈夫です!」
だが炎の動きは止まらず分裂し、無数の槍となる。
「ちっ、面倒ね!」
流水が舌打ち。
「――行くわよ!」
踏み込む。
『蒼海を駆ける一撃!!』
≪オーシャンアーツ壱の技 藍鯆!!≫
軽やかに跳び、回転蹴りで炎槍を弾く。
「今度はこっちから行くわよ!」
さらに加速。
『流れに乗る…』
≪オーシャンアーツ壱の型 流歩≫
水面を滑るように疾走し、一直線に接近。
「こっち見なさいよ!」
挑発するように声を張りイフリートの視線が向く。
その瞬間――
「今よ!」
「了解だ。」
膤斗が動く。
その動きに、一切の迷いはない。
『凍てつけ!氷界!!』
≪氷弾・フロストバイト!!≫
パァンッ!!
鋭く放たれた銃弾が、炎の核を正確に撃ち抜く。
さらに――
『貫け、氷結の牙!!』
≪冬牙・フリーズバレット!!≫
氷の弾丸が空間を走り、炎の流れそのものを“凍結させる”。
「……流石、執行部のエースね。」
流水が小さく笑う。
その一言に――
膤斗の目が、わずかに鋭くなる。
「…そっ…それはどうも。」
短く返す。
だがその声には、確かな熱があった。
「追撃、行くぞ!」
地面を蹴り一直線にイフリートに迫る。
『絶対零度の一撃!交わり砕けろ!!』
≪氷牙蒼龍斬!!≫
銃剣を大きく振り抜く。
×字を描くように放たれた氷の斬撃が、空間ごと炎を裂く。
ズバァァンッ!!
炎が大きく揺らぎ、イフリートの巨体がわずかに後退する。
そして着地。
――静かに、決めポーズ。
「……決まったな」
「いや決めんな、今は!」
燈也が即ツッコミを入れる。
だが、その目はどこか楽しそうだった。
「あら、余裕あるじゃない」
「これぐらい、朝飯前ですよ。」
膤斗は短く答える。
その姿は、確かに“魔法執行部のエース”だった。
だが――
「■■■■■■■■!!」
イフリートが怒りを上げる。
炎が膨張し空間全体が赤く染まる。
「まだだ。お前ら気を抜くなよ!」
燈也が静かに構える。
――その頃。
外の岩壁上部。
静かに風が吹き抜ける中で、セレナは腕を組んでいた。
「……ふーん」
目の前には、淡い光の映像。
ロクサスが空中に投影している“遠隔観測”だ。
「ちゃんとやってるじゃない」
隣でロクサスが浮かびながら言う。
「あの子たち、結構優秀だよ。ボクには及ばないけどね。」
「優秀、ねぇ」
セレナは口元を少し上げる。
炎が爆ぜる映像を見ながら、ぽつりと呟く。
「燈也くんは……やっぱり“切り札”タイプ」
「愛紗ちゃんは後方型。契約の伸びしろも悪くない」
「で、あの氷の子」
膤斗の動きが映る。
銃剣が炎を裂いた瞬間。
「……あれも、いいわね」
セレナの目が細くなる。
ロクサスが少し得意げに言う。
「でしょ?」
「流水は?」
「分かりやすいわよ。前衛特化の突撃型。しかもメンタル強い」
セレナは少し笑う。
「面倒なタイプね、あれ」
「褒めてる?」
「もちろんよ。」
炎の中でぶつかる影を見ながら、セレナは腕を組み直す。
「ふふ……悪くないわ」
ぽつりと。
「このパーティ」
そして、少しだけ視線を上げる。
「でも――ここからが本番ね。
イフリート、はまだ“本気出してない”から。」
セレナ口元に、わずかに笑み。
「さて、あの子達は超えられるかしら?」
炎はさらに膨れ上がっており、
試練は、まだ序章に過ぎなかった。
次回予告 『第150想 灼熱の覚醒、第二形態』
――限界を超えた一撃が、確かに届いたはずだった。
だが、その瞬間、世界は“まだ終わっていない”ことを告げる。
揺らぐ炎。増していく圧。
そして――目覚める、本当の力。
試練は、まだ終わらない。




