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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第四章 夏の開幕――波乱の海合宿編

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第149想 炎は語り、覚悟は試される


――灼熱の空間。炎が唸り、空気が歪む。

 大精霊・イフリートの一挙手一投足だけで、地面が軋む。


 その圧に――


「……上等じゃない」


 流水(るみ)が、口角を上げた。


 足元に水をまとわせ、一歩踏み出す。


「でかいだけなら、いくらでも相手してきたわよ!」


「頼もしいな」


 燈也(ともや)が軽く笑う。


「当たり前でしょ!」


 振り返りもせず、言い切る。


 その背中を――


 膤斗(ゆきと)は、静かに見ていた。


(……俺も恰好良い所を見せないとな。)


 胸の奥で、何かが熱を帯びる。


「■■■■■■!!」


 イフリートが腕を振り上げる。


 次の瞬間――


 炎の奔流が襲いかかる。


「来るぞ!気を付けろ!」


「ここは任せて下さい!」


 愛紗が前に出る。


魔法障(プロテクション・)壁展開(ウォール)!!!≫


 障壁が展開し炎がぶつかる。


 ドォンッ!!


「くっ……!」


「踏ん張れ!」

 燈也が声をかける。


「だっ……大丈夫です!」


 だが炎の動きは止まらず分裂し、無数の槍となる。


「ちっ、面倒ね!」


 流水が舌打ち。


「――行くわよ!」


 踏み込む。


『蒼海を駆ける一撃!!』

≪オーシャンアーツ壱の技 藍鯆(あおいるか)!!≫


 軽やかに跳び、回転蹴りで炎槍を弾く。


「今度はこっちから行くわよ!」


 さらに加速。


『流れに乗る…』

≪オーシャンアーツ壱の型 流歩(りゅうほ)


 水面を滑るように疾走し、一直線に接近。


「こっち見なさいよ!」


 挑発するように声を張りイフリートの視線が向く。


 その瞬間――


「今よ!」


「了解だ。」


 膤斗が動く。


 その動きに、一切の迷いはない。


『凍てつけ!氷界!!』

 ≪氷弾・フロストバイト!!≫


 パァンッ!!


 鋭く放たれた銃弾が、炎の核を正確に撃ち抜く。


 さらに――


『貫け、氷結の牙!!』

 ≪冬牙・フリーズバレット!!≫


 氷の弾丸が空間を走り、炎の流れそのものを“凍結させる”。


「……流石、執行部のエースね。」


 流水が小さく笑う。


 その一言に――

 膤斗の目が、わずかに鋭くなる。


「…そっ…それはどうも。」


 短く返す。


 だがその声には、確かな熱があった。


「追撃、行くぞ!」


 地面を蹴り一直線にイフリートに迫る。


『絶対零度の一撃!交わり砕けろ!!』

氷牙(ひょうが)蒼龍斬(そうりゅうざん)!!≫


 銃剣を大きく振り抜く。


 ×字を描くように放たれた氷の斬撃が、空間ごと炎を裂く。


 ズバァァンッ!!


 炎が大きく揺らぎ、イフリートの巨体がわずかに後退する。


 そして着地。


 ――静かに、決めポーズ。


「……決まったな」


「いや決めんな、今は!」


 燈也が即ツッコミを入れる。


 だが、その目はどこか楽しそうだった。


「あら、余裕あるじゃない」


「これぐらい、朝飯前ですよ。」


 膤斗は短く答える。


 その姿は、確かに“魔法執行部のエース”だった。


 だが――


「■■■■■■■■!!」


 イフリートが怒りを上げる。


 炎が膨張し空間全体が赤く染まる。


「まだだ。お前ら気を抜くなよ!」


 燈也が静かに構える。


 ――その頃。


 外の岩壁上部。

 静かに風が吹き抜ける中で、セレナは腕を組んでいた。


「……ふーん」


 目の前には、淡い光の映像。


 ロクサスが空中に投影している“遠隔観測”だ。


「ちゃんとやってるじゃない」


 隣でロクサスが浮かびながら言う。


「あの子たち、結構優秀だよ。ボクには及ばないけどね。」


「優秀、ねぇ」


 セレナは口元を少し上げる。


 炎が爆ぜる映像を見ながら、ぽつりと呟く。


「燈也くんは……やっぱり“切り札”タイプ」


「愛紗ちゃんは後方型。契約の伸びしろも悪くない」


「で、あの氷の子」


 膤斗の動きが映る。

 

銃剣が炎を裂いた瞬間。


「……あれも、いいわね」


 セレナの目が細くなる。


 ロクサスが少し得意げに言う。


「でしょ?」


「流水は?」


「分かりやすいわよ。前衛特化の突撃型。しかもメンタル強い」


 セレナは少し笑う。


「面倒なタイプね、あれ」


「褒めてる?」


「もちろんよ。」


 炎の中でぶつかる影を見ながら、セレナは腕を組み直す。


「ふふ……悪くないわ」


 ぽつりと。


「このパーティ」


 そして、少しだけ視線を上げる。


「でも――ここからが本番ね。


 イフリート、はまだ“本気出してない”から。」


 セレナ口元に、わずかに笑み。


「さて、あの子達は超えられるかしら?」


 炎はさらに膨れ上がっており、


 試練は、まだ序章に過ぎなかった。




次回予告  『第150想 灼熱の覚醒、第二形態』


――限界を超えた一撃が、確かに届いたはずだった。


 だが、その瞬間、世界は“まだ終わっていない”ことを告げる。


 揺らぐ炎。増していく圧。

 そして――目覚める、本当の力。


 試練は、まだ終わらない。


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