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Himeyuri ―魔法嫌いの元学園最強と、幼馴染の約束から始まる魔法学園譚ー  作者: 小鳥遊 千夜
第四章 夏の開幕――波乱の海合宿編

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第148想 灼熱の試練――大精霊イフリート、降臨

 


 ――大精霊の庭、最奥。


 燈也(ともや)たちが辿り着いたのは、岩と炎に囲まれた巨大な空洞だった。


 天井は高く、まるで大地そのものがくり抜かれたかのような空間。

 足元には赤黒い岩盤が広がり、ところどころから炎が噴き出している。


 空気は熱く、息をするだけで喉が焼けるようだった。


「……暑っ」


 流水(るみ)が顔をしかめる。


「これは……結構きついですね」


 愛紗(あいしゃ)も額に汗を浮かべる。


「環境そのものも試練ってわけか」


 燈也は周囲を見渡す。


 そのとき――


 ごう、と。

 炎が、大きく揺らいだ。

 

 中心部の溶岩が盛り上がり、形を成していくと

 それは“人型”へと変わっていった。


「……来たな」


 膤斗(ゆきと)が低く呟く。


 燃え盛る炎の中から現れた存在。


 巨大な体躯に。全身を覆う業火。

 目の奥には、知性を宿した光。


 ――大精霊・イフリート。


 その存在だけで、空間が圧倒される。


「……これが、大精霊かよ」


 燈也が思わず息を吐く。


「……すごい……」


 愛紗も目を見開く。


 そのとき――


「■■■■■■■■――」


 低く、重く響く声。


 だが――


「……え?」


 流水が眉をひそめる。


「何言ってる?」


「……さっぱりだな」


 燈也も首を傾げる。


 イフリートは何かを語りかけている。

 だが、その言葉は人のものではない。


 意味が、分からない。


 その沈黙の中で――


「あ、精霊語だね。」


 ロクサスがぽつりと言う。


「分かるのか?」


 燈也が振り返る。


「うーん。僕より――」


 ちらりと愛紗を見る。


「そっちの方が早いんじゃないかな?」


 視線を向けられた愛紗は、少しだけ戸惑いながら前に出る。


「……やってみます」


 深く息を吸う。


 そして――


「……――」


 静かに、言葉を紡ぐ。


 空気がわずかに震える。


 それは人の言葉ではない。

 だが確かに、“意味”を持っていた。


 イフリートの炎が、わずかに揺れる。


「■■■■――」


 再び響く声。


 今度は、愛紗が頷いた。


「……通じています」


「マジか」


 流水が目を丸くする。


「何て言ってるんだ?」


 燈也が問う。


 愛紗はイフリートを見上げながら答える。


「ここまで来た理由を問われています」


「まあ、そりゃそうだな」


 燈也が一歩前に出る。


「試練を受けに来た」


 その言葉を、愛紗が精霊語に変える。


 静かに、丁寧に。


 それを聞いたイフリートは――


 炎を一層強く燃え上がらせた。


「■■■■■■■■」


「……えっと」


 愛紗が少しだけ困った顔をする。


「何て?」


「……覚悟を問いています」


 小さく言う。


「力を求めるなら、それ相応の代償を払う覚悟があるか、と」


 その言葉に、空気が引き締まる。


「……上等だ」


 燈也が即答する。


「ここまで来て、引く理由はねえ」


「同感ね」


 流水も肩をすくめる。


「試されるってんなら、受けて立つ。」

 

 膤斗が一歩前に出ながら、ちらり、と流水を見る。


 ほんのわずかに、気合いが入る。


「悪いが、勝たせて貰うぜ。」


 その声は、いつもよりわずかに強い。


「……張り切ってるわね」


 流水が小さく笑う。


「別に…」


 膤斗はそっけなく返すが、視線は逸らさない。


 ロクサスがくすっと笑う。


「分かりやすいね」


「おい、うるさいぞ。」


 短く返す膤斗。



「……ドラグ。」


 愛紗が小さく呼ぶ。


「任せろ!」


 小さな竜が元気よく飛び出す。


「どんな強い敵でも、愛紗はおれが守る!」


「無茶はしないでね?」


「大丈夫。おれ負けない!」


 胸を張るドラグ。


 その様子に、燈也が軽く笑う。


「頼もしいな。でお前はどうするんだ?」


「危なくなったら助けてあげるよ。

 これはあくまでキミ達の試練だからね。」


 ロクサスが肩の上で笑う。


「はははっ…セレナ(あの人)のペットらしいな。」


 そして――


 再び、イフリートが声を上げる。


 炎が大きく揺らぐ。


 空間全体が震えるような圧。


「■■■■■■■■」


 愛紗がその言葉を聞き取り、ゆっくりと息を吐く。


「……来ます」


「何て?」


 燈也が問う。


「“示せ”と……」


 顔を上げる。


「力と覚悟を」


 その瞬間、炎が爆ぜ、熱が一気に押し寄せる。


 地面が揺れ、空気が歪む。


「……気を付けろよ。」


 燈也が構える。


「いよいよね」


 流水が笑う。


「面白くなってきたぜ。」


 膤斗の声は、静かに燃えていた。


「……行きます!」


 愛紗も魔力を練る。


「おれも行くぞ!」


 ドラグが飛び出す。


 ロクサスが小さく呟く。


「張り切るのはいいけど、あまり無茶はしないでよ。」


 そして――

 イフリートが、腕を振り上げる。


 大自然の力の前に、燈也達はどう抗うのか?





次回 『第149想 炎は語り、覚悟は試される』


 灼熱の空間に現れた、炎の王――イフリート。


 言葉は通じずとも、その意志は明確だった。


 ――示せ。


 力と、覚悟を。


 圧倒的な炎が襲いかかる中、

 燈也たちはそれぞれの力を解き放つ。

 

 その炎は、ただの攻撃か。

 それとも――意志そのものか。


 仲間と共に、限界を越えろ!


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