第148想 灼熱の試練――大精霊イフリート、降臨
――大精霊の庭、最奥。
燈也たちが辿り着いたのは、岩と炎に囲まれた巨大な空洞だった。
天井は高く、まるで大地そのものがくり抜かれたかのような空間。
足元には赤黒い岩盤が広がり、ところどころから炎が噴き出している。
空気は熱く、息をするだけで喉が焼けるようだった。
「……暑っ」
流水が顔をしかめる。
「これは……結構きついですね」
愛紗も額に汗を浮かべる。
「環境そのものも試練ってわけか」
燈也は周囲を見渡す。
そのとき――
ごう、と。
炎が、大きく揺らいだ。
中心部の溶岩が盛り上がり、形を成していくと
それは“人型”へと変わっていった。
「……来たな」
膤斗が低く呟く。
燃え盛る炎の中から現れた存在。
巨大な体躯に。全身を覆う業火。
目の奥には、知性を宿した光。
――大精霊・イフリート。
その存在だけで、空間が圧倒される。
「……これが、大精霊かよ」
燈也が思わず息を吐く。
「……すごい……」
愛紗も目を見開く。
そのとき――
「■■■■■■■■――」
低く、重く響く声。
だが――
「……え?」
流水が眉をひそめる。
「何言ってる?」
「……さっぱりだな」
燈也も首を傾げる。
イフリートは何かを語りかけている。
だが、その言葉は人のものではない。
意味が、分からない。
その沈黙の中で――
「あ、精霊語だね。」
ロクサスがぽつりと言う。
「分かるのか?」
燈也が振り返る。
「うーん。僕より――」
ちらりと愛紗を見る。
「そっちの方が早いんじゃないかな?」
視線を向けられた愛紗は、少しだけ戸惑いながら前に出る。
「……やってみます」
深く息を吸う。
そして――
「……――」
静かに、言葉を紡ぐ。
空気がわずかに震える。
それは人の言葉ではない。
だが確かに、“意味”を持っていた。
イフリートの炎が、わずかに揺れる。
「■■■■――」
再び響く声。
今度は、愛紗が頷いた。
「……通じています」
「マジか」
流水が目を丸くする。
「何て言ってるんだ?」
燈也が問う。
愛紗はイフリートを見上げながら答える。
「ここまで来た理由を問われています」
「まあ、そりゃそうだな」
燈也が一歩前に出る。
「試練を受けに来た」
その言葉を、愛紗が精霊語に変える。
静かに、丁寧に。
それを聞いたイフリートは――
炎を一層強く燃え上がらせた。
「■■■■■■■■」
「……えっと」
愛紗が少しだけ困った顔をする。
「何て?」
「……覚悟を問いています」
小さく言う。
「力を求めるなら、それ相応の代償を払う覚悟があるか、と」
その言葉に、空気が引き締まる。
「……上等だ」
燈也が即答する。
「ここまで来て、引く理由はねえ」
「同感ね」
流水も肩をすくめる。
「試されるってんなら、受けて立つ。」
膤斗が一歩前に出ながら、ちらり、と流水を見る。
ほんのわずかに、気合いが入る。
「悪いが、勝たせて貰うぜ。」
その声は、いつもよりわずかに強い。
「……張り切ってるわね」
流水が小さく笑う。
「別に…」
膤斗はそっけなく返すが、視線は逸らさない。
ロクサスがくすっと笑う。
「分かりやすいね」
「おい、うるさいぞ。」
短く返す膤斗。
「……ドラグ。」
愛紗が小さく呼ぶ。
「任せろ!」
小さな竜が元気よく飛び出す。
「どんな強い敵でも、愛紗はおれが守る!」
「無茶はしないでね?」
「大丈夫。おれ負けない!」
胸を張るドラグ。
その様子に、燈也が軽く笑う。
「頼もしいな。でお前はどうするんだ?」
「危なくなったら助けてあげるよ。
これはあくまでキミ達の試練だからね。」
ロクサスが肩の上で笑う。
「はははっ…セレナのペットらしいな。」
そして――
再び、イフリートが声を上げる。
炎が大きく揺らぐ。
空間全体が震えるような圧。
「■■■■■■■■」
愛紗がその言葉を聞き取り、ゆっくりと息を吐く。
「……来ます」
「何て?」
燈也が問う。
「“示せ”と……」
顔を上げる。
「力と覚悟を」
その瞬間、炎が爆ぜ、熱が一気に押し寄せる。
地面が揺れ、空気が歪む。
「……気を付けろよ。」
燈也が構える。
「いよいよね」
流水が笑う。
「面白くなってきたぜ。」
膤斗の声は、静かに燃えていた。
「……行きます!」
愛紗も魔力を練る。
「おれも行くぞ!」
ドラグが飛び出す。
ロクサスが小さく呟く。
「張り切るのはいいけど、あまり無茶はしないでよ。」
そして――
イフリートが、腕を振り上げる。
大自然の力の前に、燈也達はどう抗うのか?
次回 『第149想 炎は語り、覚悟は試される』
灼熱の空間に現れた、炎の王――イフリート。
言葉は通じずとも、その意志は明確だった。
――示せ。
力と、覚悟を。
圧倒的な炎が襲いかかる中、
燈也たちはそれぞれの力を解き放つ。
その炎は、ただの攻撃か。
それとも――意志そのものか。
仲間と共に、限界を越えろ!




