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僕はあなたをハッピーエンドへ連れていく  作者: 甲斐柄ほたて
薔薇の肖像は冷たく笑う
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出入りは自由?④

 シャルロット様の屋敷をクビになってから一週間。僕は優雅なニートライフを満喫……などしていなかった。仕事がないというのは、けっこう精神的にきついものがある。前世でも似たような経験があったはずだが、いかんせんそのあたりの記憶は転生時に神様(フォルトゥーナではない)に消されてしまった。だからこの憂鬱は初体験だ。

 宿は、トアン卿の屋敷がみえる位置に変えた。そして、日がな一日、屋敷の周りを散歩しているように見せかけながら見張ることにした。それ以外にやることがない。そして成果もない。これがきつい。探偵ならこうするだろうという想像で見張っているが、どうも泥くさすぎる。というか、運に頼りすぎている。

 屋敷は広い。つまり、その外周はけっこうな距離になる。トアン卿に動きがあったとして、僕がそれに気づける位置に陣取っている可能性はけっして高くないわけだ。正門から屋敷までは庭をはさんでけっこう距離がある。側面からなら、空間把握の魔術で内部の様子も少しはわかるのだが、今度は人の出入りを見張れなくなる……。


 などというジレンマで僕が悩んでいると、ある日、手紙が届いた。父上からだった。近々トアン卿の屋敷でパーティーが開かれる、という内容だった。僕が調べているから、気を利かせて教えてくれたのだろう。

 ただ、僕は自分がシャルロット様の屋敷を追い出されたことは、まだ父上に伝わっていなかった。それは数日前に手紙で出した内容だからだ。

 それなのにその手紙が僕のところへ届いたのは、その手紙をベルさんが持ってきてくれたからだ。


「……ずいぶんと探しましたよ」

 不機嫌そうな表情で彼女は言った。

「辞めたなら、実家に手紙くらい書きなさい」

「書きましたよ。入れ違いだったんです」

 ベルさんは僕の言葉を無視した。

「まだ王都にいたんですね」

「ええまあ。やることもありますので」

「どうぞ」

 僕はベルさんから差し出された手紙を受け取った。

「ありがとうございます。……どうやって僕を探したんですか?」

「クリム・ホワイト、あなたは、ここで何をしているんですか?」

「何、というと?」


 トアン卿の動向を探っている、という答えが真っ先に浮かんだが、すぐに頭の中から消した。なんというか、シャルロット様の元婚約者の動向を探っているというのは、ストーカーじみている。ベルさんの心象に良くない気がした。


「僕はいま、ひがな一日ゴロゴロしながら、どんな仕事をしようか考えています。どうです。優雅なものでしょう?」

「隠しても無駄ですよ、クリム・ホワイト」

 ベルさんは冷たい声でいった。

「あなたのことは、ギルドに依頼して調べてもらいました。目隠しをした男を探してくれ、と。毎日毎日トアン卿の屋敷の周りをうろついているそうですね」


 バレてた。

 じゃあ、なんで聞いたの?


「……探しましたよって言ってましたけど、ベルさんは探していないじゃないですか」

「散々探しました。てっきり屋敷の近くにいると思ったのに全く見つからないから、依頼したのです。何をしているのですか?」

「僕がやっていることを、シャルロット様は知っているのですか?」

 ベルさんはため息をつき、首をふった。

「いえ、お伝えしていません」

「それはよかった」

「あなたの話をする雰囲気では、ありませんから」

「そうですか」

「……」

「?」

 顔を上げると、ベルさんが僕をじっと見ていた。

「なんでしょう?」

「本当にお屋敷に戻るつもりはないのですか?」

「まだ一週間しか経っていませんよ」

「ないのですか?」

「ありません」

 あきらめて、首をふった。

「前に言ったとおりです。変わっていません」

「シャルロット様にお会いしたいと思わないのですか?」

「もちろんお会いしたいですが、それがなにか?」

「戻ってくれば……」

「僕は、スクエラの気持ちには答えられません」

 僕はそういって、手紙をベッドに放り投げた。

「また同じことが起こるでしょう。ケンカになって、シャルロット様に追い出される」


 振り返ると、一瞬だけ、ベルさんがつらそうな表情をうかべていたような気がした。


「繰り返す必要は、ありませんよ」

「わかりました……。それで、ここで何をしていたのですか?」


 むむ。忘れていなかったのか。上手くはぐらかしたつもりだったのに。

 仕方ない。正直に白状するか。もう大体バレてるだろうし。

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