大将戦〜雷神(ゼウス)vs戦闘神(ニヌルタ)〜
副将戦はシュウが勝ち二対二の同点となった。
そして今シュウが試合を行った舞台から降りてきて、下で待っていた雷音とハイタッチを交わす。
「シュウ、よくやったな。冷や冷やしたけど勝てて安心したよ」
「ぶっちゃけさぁ……お前俺が必ず勝つって思ってなかっただろ?」
そうシュウが訪ねると雷音はついつい目線を逸らしてしまった。
「そ、そんなことはないよ?というかいつの間に眷属召喚と必殺剣なんて使えるようになったんだよ」
「今の今だよ」
「はぁ?」
「だからさっきの試合中だよ! 練習じゃ一回も成功しなかったしな。でも正直使えなきゃ終わってたな……俺よりも確実にランドは強かったし……なんかアイツ最後面倒だからワザと負けた様な気がしてよ、いまいちスッキリしねぇんだな」
「まぁ……勝ちは勝ちだろ?それに俺達はまだまだ強くなれる筈だ。だからシュウも技が使える様になったんだよ」
「誤魔化された気がするがそう言って貰えると嬉しいぜ。……そこの寝てる阿保にも勝ったのを見て貰いたかったところだが仕方ねぇな」
そう言ってヴィオを見るシュウを見てネイルとリンは口元を緩めた。
「そうかシュウ、ヴィオが起きたら僕達で君の勇姿を伝えてあげよう」
「うむ、そうでござるな。シュウ殿がヴィオ殿に見てほしかったと言っていたことも伝えてあげなければならぬでござる」
「ちょ、テメーらいきなり何言ってやがる!?いいか絶対言うなよ?言ったらブッ殺す!」
顔を赤くして怒鳴るシュウを見て雷音も微笑む。
いつもと同じ様に和気藹々とすることで緊張がほぐれていった。
「ったくよ余計なことばっかり聞いてんじゃねぇぞ。雷音、トリは任せたぜ。絶対勝てよ!」
「雷音、頼んだよ。負けた僕が言えたことじゃないけど」
「それを言ったら某もでござる。雷音殿、健闘を祈る」
雷音を見つめる視線に応える様に雷音は自分の胸に拳を叩きつけ宣言する。
「ああ、任せてくれ。皆が繋いでくれた想い、絶対に無駄にはしない! 必ず俺は勝つ!」
反対側のSクラス側ではウォードが武舞台に上がろうとしていた。
「ウォード君、結局大将戦まで回ってしまったな。君の勝利を期待している」
「はっ、誰にモノ言ってんだよキール。俺様があんなカスに負ける訳ねぇだろ。そこに転がっているカス共と一緒にするんじゃねぇよ」
ウォードは気絶したままのフィリアと疲れたのか寝てしまっているランドに冷たい目線を送る。ウォードは怒っていた。自分達より格下のEクラス如きに負ける屑と屑に。
「そんなこと言ってると足元すくわれるわよ。大体アンタ雷音と戦った時押されてたじゃない」
「あんだぁ?姫様よ。あん時の俺の実力を全力と思ってんのか?フハハハハ! こいつは滑稽だぜ。それに今回は仕込みも済んでんだ。大好きな男がボロキレになる姿をじっくりみてな」
「今回は同じクラスだから応援しなきゃならいけど……反吐が出るわこのクズ」
「おー怖。じゃあ嫌われ者も出陣しますかね」
雷音とウォードの二人が舞台の上で相見える。
かつて虐げられていた者の目には最早絶望や諦めはない。あるのはただ一つ、目の前の敵に勝つことだけだ。
「よぉ、雷音ちゃん。神装纏える様になって調子に乗ってるみたいだな。いやぁ楽しみだぜその自信満々の面が泣き入れるところがよぉ」
「もうお前には負けないぜウォード。あの頃の俺とは違う」
「ぶはっ、マジな顔でそんなこと言うなよ。笑っちまうじゃねぇかこのウジ虫が」
「お前には負けない。俺が勝つ」
顔を合わせばお互いいがみ合う。プライドの高いウォードは立場もクラスも下の雷音が逆らうことはあり得ないことである。
いや、誰であれ自分の上に立つことを許したくないのだ。
そして普段温厚な雷音でさえウォードに対しては殺意に近いものが湧いている。
自分を虐げてきた男なのだ、簡単に許せるわけが無かった。
みつめあってると審判が間に入ってきて二人を引き離す。
「ではこれより本日最終試合を行う。SクラスもEクラスも悔いを残さないように。では始め!」
雷音とウォードは試合開始と同時に口を開き神装を呼び出した。
「「神装光臨」」
雷の如き輝きと共に現れた白金の神装を纏う雷音。
「俺の雷がウォード、お前を穿つ! 雷神の雷音!」
対して対照的にウォードは蒼いフルプレートメイルを纏うウォード。相も変わらず両肩鷲の意匠の眼光は普段よりも増して獲物を欲している様に見えた。
「さぁて狂乱に荒ぶれよぉ……戦闘神のウォード! テメェを完膚なきまでにぶっ潰してやるからなぁ!」
対峙する武舞台で睨み合う二人。痺れを切らし最初に動いたのは戦闘神の守護を持つウォードだった。彼は自らの神力で創りあげた手に持つ巨大な槍を構え雷音に向かっていった。
「今回は俺からいかせてもらうぜぇ!」
速く鋭い刺突の連打、そして急激に間合いを詰めるスピードは以前対峙した時のものではなかった。
「速いっ!?」
「オラオラどうした?そんなもんかEクラスのカスがよぉ」
「速い……だけど見える!」
雷音は紙一重、しかし確実に当たらないように槍を避けている。一撃でも喰らえば槍は身体を穿ち、風穴を空けることは間違いない。
「チッ……少しはできるみてぇだな」
「あれから必死に鍛えてきた……今度はこっちの番だ!」
迫り来る槍を掻い潜り雷音の両の拳の連打がウォードに迫る。舌打ちをしながら槍の柄で防御するが左拳のフェイントにかかり、その隙をついて雷音の右脚がウォードの脇腹を抉るように入った。
たまらず一歩下がるウォードだがそこに拳のガントレットから雷撃が迸る。
「痺れろ!」
「カァ、うぜぇ!」
ウォードの槍を持たない方の手にはいつの間にか盾を持っており、それがケラウノスの雷撃を防いだ。
「雷撃を防ぐ……盾だと!?」
「そんな静電気みてぇなもんじゃ俺に傷一つつけられないぜぇ?オラァ!」
ウォードは盾を構えたまま雷音に迫りそのまま盾をぶつけるように体当たりをする。
咄嗟に腕を十字にして守りの態勢に入るが体当たりの衝撃で吹き飛ばされてしまう。
「がふっ!?盾を武器にするなんて……」
「お前よぉ俺を舐めんじゃねぇぞぉ?俺に扱えない武器なんざねぇんだよ。しかしちょっと期待外れだなお前。こっちは色々とお楽しみを仕込んできたってのによ」
「仕込み……?」
「まぁお前がもっとやれるやつならお披露目してやるよ。こんな風にな」
ウォードの手には盾では無く剣が握られている。それもこれは以前雷音達が見たことのあった剣だ。
「さぁ無様晒すんじゃねぇぞ。さぁ行け勝利の剣!」
勝利の剣は雷音目掛けてまるで意志のある様に飛んでいった。雷音も避けるのだがウォードの思うがままに動く剣は絶えず雷音を襲い続ける。
「馬鹿な……何でウォード、お前が使える!?これはAクラスの……あの…………とにかくあいつが使っていたはずだろ?」
「さぁてねぇ? ま、俺は友達を作るのが上手いからなぁ」
「まさか……神器を奪ったのか!?」
「人聞きの悪ぃこと言うんじゃねぇよ。お友達がきちんと貸してくれたんだよ。優しい優しい奴隷がなぁ! クハハハハ!」
「(おそらくは奴の神理だろうな。ルナの話だと隷属させると強くなるって言っていた……しかし神器まで使えるなんて……)」
ウォードの神理である《勇敢なる奴隷》の能力はウォードに対して服従し隷属契約を結んだ者の力を増幅させ、またウォード自身も隷属した人数の分だけ強くなれる能力だ。しかし他の者、たとえ同じSクラスの者でさえ知っていたのはこれだけだった。
「何よあれ……キールは知ってたの?」
「いや、僕も知らないな。それに彼はあまり人前で能力を使わないだろう?だがあれは恐ろしいな。神器まで使えるなら……例えばだが僕達が彼に隷属すれば君のアルテミスの弓や僕の剣なども使えてしまう」
「死んでも嫌だけどね」
「あくまで例えさ。ただ恐ろしい能力には違いない。彼はまだ汗の一つも流していないんだ。未だに本気を出していないようだよ」
ウォードは攻め続け神器を使うのに神力も消費している筈だがその顔は未だに余裕である。
「チームメイトとしては頼もしいんだが、ルナ君にとっては微妙なところかな?」
「一言余計よ。今はSクラスのルナとしているんだからぬか」
「ふふ、すまなかったね。だが雷音君は防戦一方の様だがどうするのだろうか」
勝利の剣は常に雷音に襲い掛かるために雷音は体力にも精神的にもじわじわと追い詰められていた。
「くそっ、リンはよくこれを捌きながら戦ったもんだ。このままじゃジリ貧だ……ならっ!」
勝利の剣を掌底で弾き飛ばし全力で疾走する雷音、そしてその手には大槌が握られていた。
「吹き飛べぇ! ミョルニル」
雷音は大きく振りかぶると力の限りミョルニルをウォードに向かって叩きつける。
「コイツは俺を吹っ飛ばした神器じゃねぇか! だがあの時とは違うんだよぉ!」
ウォードは再び盾を構えミョルニルを正面から受け止めた。粉砕する雷槌の勢いに押し出されると思われたが足をその場に止め、反対にミョルニルを弾き飛ばした。
「な!?嘘だろ?」
今まで桃太郎以外にはガードさえも破れる程の威力の粉砕する雷槌を弾かれたことにショックを受ける雷音。反対にウォードは多少の息が荒くなってはいるが口角を上げた。
「ハッ、これでテメェの神器は打ち止めか?」




