元、美少女4
日本では、ボールを蹴り始めたばかりの子どもであっても、おそろいのユニフォームを身につけたり、コーチにプレーを教わっている光景の方があたりまえだ。
自由にたのしむことより、一日でも早く指導を受けることの方が、ずっと重要で価値があるみたいに……
翔は今日まで、それを疑問におもったこともなかった。
「強化で、代表は強くなったかもね。でも、それで人気が出て、スポンサーがついて、儲かるのは協会だけじゃない。強化がプレイヤーにもたらすのなんて、勝利至上主義の弊害ぐらいよ」
まくし立てる桃の頬は、いつの間にか薔薇色に染まっている。
「勝てないやつはいらないっていうの、サッカーは! ちがうでしょ? プレーするかどうかを選ぶのは、わたしたち。わたしたちの愛情はフットボールのもんであって、協会に捧げたもんじゃないわ!」
反・協会──
猿渡が口にしたときはよく分からなかったが、桃のことばにあるのはまさに反感だ。
「オジジは、そんな協会とは縁を断ち、地方におけるフットボールのあり方を模索して、山賊リーグという形をつくったの。走れなくても、コーチに教わったことがなくても、お金を出せなくっても、誰だってボールは蹴っていい──それが、オジジがこの国に広めたかった『サッカー』のすがたよ」
桃は、キュッ、とスカートごと両膝を抱く。
深いふかい息をついてから空を仰いだ桃を、翔は黙って見ていた。
「でもね、分かってんのよ。わたしたちだって、勝ちつづけていられたなら、あそこに行くことはなかった。ずっと、あたりまえの顔してサッカーをやってたってね」
桃の手が、つん、と翔の髪を引っぱる。
「もしも、あんたのその体と取り替えてくれんなら、わたしはここでプロになる。望だってそうおもってんのよ。だから、あんたをあっち側に引き込まないでくれって言ったんだわ」
翔はおどろいて桃を見つめた。
「え。そんなこと言ったの?」
「言ったじゃない。こいつは近い将来プロになる人間だーって。こんなところに来てたらその道をうかうか踏み外す、そんなのもったいないだろ、ってそういう意味でしょ」
またたくだけの翔を、桃はぷっ、と笑う。




