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山賊リーグへようこそ  作者: 十七夜
5:仲間たち
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元、美少女2

「篠塚くんのお気に入りくんなんだって? まあ、たしかに、男にしてはかわいい系で、あのひと好みかもね。襲われそうになったら、遠慮なく蹴り入れてやんのよ?」


ぐっ、とこぶしをにぎってけしかけてくる桃に、翔は首をかしげた。


「監督やコーチのこと、知ってんの?」

「うん。昔、ここにいたから、スタッフは顔見知りばっかり。選手は知らないけどね」


昔ここにいた、とはどういう意味か、と翔はますます首をひねる。

中学からヴェミリオンの下部組織入りをした翔の経験から言えば、女子はひとりもいなかった。

あるとすれば、小学生時代のはなしか、それとも──


「もしかして、元オトコ…………?」

「殴るわよ、あんた!」


指さした翔をごん、とげんこつで殴った桃が、いかにも遅すぎる忠告を加えた。


「昔、女子チームがあったこと、知らないの? ──まあ、二年間だけだけどね」


翔は首をひねった。

自分が知らないあたり、四年以上前のはなしだというのはたしかだな、とおもう。


「なんで二年でなくなったの?」

「…………るさいなあ。美少女な代表候補がいるって話題性に釣られてチームごと吸収したのに、そいつが代表から落選したあげく、女子チームの監督と不倫して、妊娠して、監督がクビになったからよ!」

「──美少女な、代表候補?」


再度、翔は桃を指さしたが、返事を待たずに、自分でぶんぶんと首を振った。


「いやいや、ナイナイ!」

「ちょっと! 実力が足りないっての? 出産する前はもっと走れたのよ、これでも!」

「だって、小学生が不倫して妊娠とか──」

「誰が小学生よ! 当時、ハタチ。現在二十五だからね、わたし」


曲がった人差し指で桃をさしたまま、翔はあんぐりと大口を開ける。


「ウソォ!」


年上な気はしていたけれど、せいぜいひとつかふたつのつもりだった。

二十代もなかばでこの美少女ぶりは、詐欺ではないのか。

しかもさっき、出産したと言っていたような。


「ウソじゃないっての。うちの母親なんか、五十代なのに見かけ三十代だもん。あれに比べれば、ぜんぜん年相応よ」


どこが、と翔はおもったが、口にはしない。

桃の顔が、本気でむくれていたからだ。


「こっちだってね、好きでこんな顔してんじゃないわ。日本代表に入って世界と戦いたい一心で、チームでは率先して守備もしたし、練習ではぶっ倒れるまで走ったのよ? なのに──」


ぱちぱちと、桃が不自然なまばたきをくり返した。

声も、どこか湿って聞こえる。


「代表落ちした理由は、おまえがいるとチームの結束が乱れるから、だって。スタッフとか取材陣に贔屓されるのは、わたしのせいなんかじゃないのに。ひがんでいじめてくるブスでも、数が多けりゃそっちの言い分が通るのよ、この世界」


お人形のような睫毛が、頬に濃い影を落とす。

見とれるな、という方が無理だ。



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