三人組と買い物に
「ごめんね、千佳ちゃん。カップ焼きそばパーティーなんだけど、男子の参加が増えるみたいなの。本当は読書クラブのメンバーでって考えてたんだけど、知宏ったら断り切れなかったみたいで」
「マリ先輩がいいなら、あたしは構いません」
そもそも、会場は知宏先輩のうちなのだ。先輩があっさりと「俺んちでやれば」と言ってくれなければ、開催自体困難だったかもしれないのである。
「そう? 私としては人数が増える分には構わないのだけど。大丈夫? 千佳ちゃん男の子苦手じゃない?」
「平気です。ああ、でも。人数増えていいならあたしも、クラスメイトを誘いたいです。あ、でもやっぱりだめかな」
「どうして?」
「あ、いえ、その子ら知宏先輩を紹介して欲しいらしくて……。マリ先輩、嫌じゃないですか?」
千佳が恐る恐る見上げると、マリ先輩はふきだした。
「やだ。千佳ちゃんまで勘違いしてたの? 私と知宏はそんなんじゃないんだってば」
「え? でも」
千佳は眉を寄せる。いつも一緒にいるし、とても仲がいい。それに、すごくお似合いだ。
「ねえねえ、千佳ちゃんならどう? 知宏が彼氏ならって。想像してみて?」
「え? あたしはごめんです。知宏先輩目立つし。あたし目立ちたくないんで」
千佳が答えると、マリ先輩は爆笑した。
「え? 笑うところですか? それに、あたしが男だったら絶対にマリ先輩にしますよ!」
力説したらマリ先輩はますます笑った。息ができなくなるまで笑った。
そして、三人組の参加を快諾してくれた。
千佳は郊外のショッピングモールに来ていた。
パーティーに持ち込むカップ焼きそばを選んでいるのだ。
上中下トリオも一緒だった。
三人をパーティーに誘ったら、なぜか一緒に買い物に行く流れになったのだ。
「一つか二つ、自分の食べたいものを持ってけばいいんだよね?」
村上の頭でポニーテールが揺れている。千佳はそれを眺めながら頷いた。村上はぶかっとしたサロペットを着ていて、可愛いけどもう本当に小学生にしか見えない。
「うん。それを会場で分け合おうって」
「味、かぶんないかな?」
ショートカットの中田が首を傾げた。彼女はダメージジーンズにワンショルダーのトップス。意外にパンクだ。
山下は、デニムのショートパンツにレースのトップスで黒のキャップを合わせている。いつもより、ちょっぴり巻の多いサイドテールだ。
三人を見回しながら千佳は聞いてみた。
「村上さんたちは、何が好き?」
「UFO」
「明星」
「ペヤング」
見事に分かれたのがおかしかった。千佳は笑いをかみ殺す。
「あたしはやきそば弁当買おうと思ってる」
「味比べか~。普段なかなかできないよね。楽しみ!」
小学生みたいな村上が、両手をぐっと握って目をキラキラさせたので、千佳は我慢できなくなってふきだした。
「え? なに? なんで笑うの?」
と村上がうろたえた。
「だって、村上さんがあんまり可愛いから」
笑いながら千佳が言うと、「可愛い!?」と目を白黒させる。
そんな仕草も本当に可愛い。頭をなぜたら怒るだろうか。
「わお。良かったね~。あすか。あんたずっと河原さんのこと狙ってたもんね」
と山下が村上の頬をつついた。
「狙ってた?」
千佳は瞬いた。
「へ、変な言い方しないでよ!」
村上は抗議するが、山下はニヤニヤ笑って取り合わなかった。
「話しかけたくて、もじもじソワソワしてたもんね」
と山下がつつけば、中田も深くうなずく。
「そうそう、わざわざ机の周りうろうろしたり」
「ええ……?」
あれ、嫌がらせじゃなかったのか。
いじめか何か始まるのかと思ってた。これは彼女たちには言えないな。
カップ焼きそばをガサガサ言われながら、そのあとは服や小物を見て回る。
ちなみに山下だけは、食料品のコーナーではなく雑貨屋でなんか辛そうなのを買っていた。
雑貨屋でカップ焼きそばを買う。千佳にはちょっと驚きだった。
彼女たちがはしゃぎながら手に取る服は三者三様で、どれもそれぞれによく似合っていた。
「千佳ちゃんは買わないの? 金欠?」
村上が無邪気に尋ねてきた。
いつの間にやら千佳ちゃん呼びになっている。可愛いからいいか。
「一応虎の子は持ってきたけど」
「虎の子?」
三人に一斉に首を傾げられてしまった。
「いざというときのお金ってこと。まあ、お年玉なんだけど。でも、うちは母親が服を買ってくるから」
「ああ、それで」
と納得したように山下が頷いた。
千佳は急に自分の来ている服が気になった。今日はピンク色のシフォンスカートと、丸襟のシャツだった。
「やっぱ、似合わないよね」
「そんなことないよ。骨格に合ってるもん」
「こ、骨格?」
「大事だよ」
山下はきっぱりと頷いた。いつもどこか人をからかうような調子なのに、思いがけず真剣な表情だ。
「ただ、河原さんは肌が白いから、もう少しはっきりした色が似合うと思うんだよね」
「いいねいいね! こんなどう?」
村上が一着取り出したのをきっかけに、千佳の服選びが始まってしまった。
華やかな雰囲気にすっかり浮かれてしまって、千佳も結局きれいな青色のワンピースを一着買った。
母が怒るかと思ってハラハラしたが、友達が選んでくれたと伝えたら、案外と喜んだのでほっとした。
着ていく服も決まり、準備も万端。
マリ先輩のために発案したパーティーだったが、千佳は思いのほか楽しみになっていた。
仁也に話を聞いてもらいたかった。
今日は来るかな、来ないかなと千佳はちょっとソワソワしていた。
火曜日の夕方、ようやく自室の窓が開いて、千佳は窓辺に駆け寄った。
「仁也、あのね今日ね!」
と声をかけて、千佳はぎょっと後ずさりした。
窓からひょいと顔を出したのは、全然知らない男だった。
「おー、本当に若い女の子だ~」
これを書くためにペヤングを買ってきました。はじめて食べた……。




