完全回復
あの門をまたくぐり王宮の受付で中へ案内された。
「お疲れ様でした。それではご案内します」
案内されたのはあの集会場だった。扉が開いた瞬間、盛大な拍手で迎えられる。既に、
豪華な料理が並ぶ机の周りにフォードさんや王宮関係者と思われる人たちがついていた。
「皆様、お疲れ様でした。素晴らしいご活躍でしたな」
「その言葉、有り難く受け取らさせてもらう」
「こんなカッコで……」
「それは気にしなくてよいぞ。それと、その男は?」
「新しい仲間だ」
「初めまして、クーベと申します」
確かにこんな服で席につくのは失礼な気がするが、この姿を見ながら食事したいらしい。
机には豪華なエビやローストビーフなど。日本をはじめいろいろな国の祝い物が並んで
いる。
食事はフォードさんの挨拶で始まった。そのあと俺の挨拶もあったが簡単に済ませた。
クーベは初めて食べるのかバクバク食べる。
「これは何とゆう食べ物なのだ?」
「……」
「タマタマとゆう伝統的料理です」
そう、それそれ。テレビで紹介されたのがだいぶ前だったせいで忘れてた。行動が速い、
近くにいたメイドが言う。……ん? タマタマって言ったよな。聞き間違えじゃなかっ
たようだ。みんなの目線がメイドに行く……
「なぜだまる? これは伝統的な料理のはずだが」
「……申し訳ありません。そのぉ」
フォードさんの言葉に顔を赤くしたメイド。そのまま走り去っていった。成功しても、
失敗しても俺たち以外が被害を受ける爆弾でも投下するか。
「これって誰が決めたんだ?」
「メニューかな?」
3人とも同じことを思っていたらしい。
「「「はい」」」
綺麗にタイミングが合った。そしてその答えは――。
「私が直々に決めさせていただきました。国王だとゆうのにこれぐらいしかできないと
は……」
「それは、これからの事だな」
そしてまた、目線が1ヶ所に集まる。今回は爆弾投下成功だな。他の者は笑いながらご
まかすのを手伝ってる。食卓なんだから少しは考えられないのか。そんなことは言わな
いが。だって、日本でゆう「お寿司」の名前を否定するのと同じだからな。
俺達は簡単に歓迎の食事を受け王室に向かった。
「改めて。みなすごいご活躍でしたな」
ほんとに、改めて面と向かって言われると照れてしまうもんである。それと、このこと
はまだ外部に知られていないようだ。このこととは試練クリアのことだ。あの時のアナ
ウンスは全く触れていなかった。だから、外にいても声がかけられることがなかった。
「なあフォードさんよ……」
「なんでこんな賑やかなのですか?」
「それが……逮捕してもらったのだ。損失分したお金の大半を回収したんだと」
それはそうだろなぁ……。これって、ゲーム内ルール、国家準買収罪、国家横領罪、詐
欺罪、等々数多くの罪に匹敵する。いや、それ以上かもしれない。過去に事例がない。
「それならもっと早くできただろ? 遅くないか」
「実はこの国だけ警察がない」
「そんなでよく今まで犯罪が起きなかったな」
「ほんと平和な国であったの。簡単に説明するとするか」
その内容は意外なものだった。
この国には最大級の国営カジノがある。だが、警察は存在しない。否、正確にはすべ
ての事が事前に防がれていたのだ。俺はこの国で建物の入り口、国に入るための正門な
どいたるところで魔力反応を感じていた。実はその反応、事前に防げている理由が隠れ
ていた。そこには現実で普及した最新鋭の「防犯カメラ」がついていた。人間から常に、
犯罪を起こそうとしてる気持ち、安心してる気持ち、等々すべてか振動として出ている
のだ。
「二千年近く前にそんな技術がよくあったな。」
「それが意外と普通なのだよ。君たちは現実と呼ばれるところに行けるのだろ?」
「そうか! 私達みたいに現実から来る人たちが機密情報を漏えいしているんだ。」
「現実か……行ってみたいものでござる」
? クーベの苦闘が変わった。それに現実に行ってみたい? クーベはどうゆう存在な
のだろう。
話に戻ろう。
その「防犯カメラ」を様々な場所の入り口に付けておいた。それに引っ掛かった人は、
床に組み込まれている〈転移魔法〉で国外に転送されているそうだ。
今回の事はまだ原因究明中だ。警察が無い【テヘラン】はどうする事も出来ず、この
ゲームを統括する「総合本部」に総合警察の要請をしたのだ。
「最初から要請しろよ」
「快君。口悪いよ」
「なに、今更の事である。それと……まだ国の経済が安定していなくて」
すっかり本題を忘れていた。〈試練〉を受けるついでに〈スフィア〉の採取をしてきたの
だ。
〈スフィア〉はとても高価なものである。1グラム当たり1万ポイントの価値がある。
俺の所持している量は数千キログラムを軽く超える。〈スフィア〉自体かなりの量だった。
言い方を変えれば〈試練〉そのものの内部多くを占めていた。手じゃ持ち出せなかった
が〈宝物庫〉のおかげで余裕だった。
「どれぐらい必要だ」
「5000キロほどあれば完全に回復するが……」
「「 」」
流石に俺達も固まった。量的には問題ないんだが、あれだけの価値でそれの量があれだ
と無意識に固まってしまった。エリシアはすぐ冷静になった。
「じゃあ、測定器を用意してもらえます?」
「すぐ準備させよう」
フォードさんの口から出た量は、金額換算で500億ポイント、現実で250億円であ
る。
*俺達にはお金に困らない明るい将来が待っていそうだな、俺。
メイドは機械を持ってくるのではなく人を連れてきた。
「初めまして、家頭と申します。鑑定人であります」
「私は椎名です」
そう自己紹介する彼は、身長170cm、黒紙で和服姿のイケメンだで、しかも現実で
も超有名人だ。鑑定士を持つ父が店を開いており、そこで小さいころから父の姿を見て
修行していた。鑑定の仕事をし、時には探偵になったりする愛称「ホームズ」さんであ
る。隣の女性はよくわからない。
俺は渡された白手袋をはめ並べていくと、それを手際よく鑑定し始めている。そのホー
ムズさんの顔の表情が少し変わった気がする。今の心情を現実でホームズさんが登場す
る「ナニでも鑑定団」を見ていればなんとなく察することも出来る。
「国王様。これは大変貴重な小代物であります」
「あの場所もすごいものだ。早く売らなければ」
「売却作業も始めます」
「凄いのはこれらの持ち主の眼だと思われます」
ホームズさんは作業を続けている。もう一人の女性はオークション専門要員のようだ。
チラッと見えた画面で分かったが「ヤオオク」のオークションに出品しているようだ。
「フォード様、早速二新堂が一トンを150億ポイントで即決落札をしました」
「五割今しか……なかなかだの」
マジかぁああああああああああ。そんな額で売れるのかよ‼ じゃああれだろ、あれ。
あれよ、俺が店を開いて安価で販売、オークションに出せばさらに財産が増え……歴代
一位、世界一位の大富豪になれるんじゃねえか?
「三人ともせっかく来たのだからカジノによっていたらどうだ?」
「俺はせっかくここまで来たなら」
「カジノに寄ってこうか」
「拙者は興味無いでござる」
クーベの口調が完全に変わった。それが似合うのは五右○門だけ、拙者とか武士すぎて
草だぞ。世には「イメチェン」なんて言葉も存在するが。まさかな……。
「クーベさん変わったね」
「イメチェンでござる」
「うん、マジか」
まさかのまさかだった。こんなタイミングで替えるとか意味不明すぎる。ルパン三世に
出てくる○右衛門のような服になってる……恐ろしい。その技術どこで身に着けてきた
んだよ! みんなが笑い空気が柔らかくなった。
「二人方はゆっくりと遊んでこられるとよい。クーベさんと言ったよな? あなたには
部屋を用意しよう」
「拙者は部屋で寝るでござる」
俺とエリシアはカジノで遊び、クーベはお留守番になった。人生初のカジノで大暴れし
てやる。俺は「チーター」とも言われるんだぞ。この能力がなくても冒険者以外できる
ことを証明するぜ!
「それではランカーチェックを行ってもらおう」
「ランカーチェック?」
「冒険者登録の時にしたでしょ?」
あっ……。
最初から能力高くて忘れてた、ここまでの出来事が自然すぎて忘れてた。
ランカーチェック。これはD~Sに分類される。簡単に説明すると、自分と自分が選ぼ
うとしている職業との適合率だ。もちろんDに近いほどその職業に向いていないけど、
努力次第では適合率が上がることもある。
「それではこちらを」
「サンキュー」




