第九話:X
久々に一人だ。
外は広い。
人は多い。
けれども、俺は一人なのだ。
ふとした瞬間に話す相手がいなくて、少し困る。
「んー……」
あの日そうしたように、見知らぬ人にセクハラをしていいものなのだろうか。
そこでも少し悩む。
悩んで、実行してみた。
反撃がないのがやけに新鮮だった。
スリルに欠けるのが難点か。
スリルを出すにはどうすればいいか。
「そうか、もっと過激なことをすればいいのか」
女性を発見。
素早く背後に回り込み――
……
…………
……………………
「あれ?」
いつの間にか女性もいなくなっている。
場所もなんか通行人のいない裏路地に移動している。
なんというか、確信はないのだけれど。
時間が飛んだ?
体内時計と認識のずれがそんな感覚を訴えている。
「ううむ」
おかしいな。
もう一度やってみるか。
きょろきょろ。
女性発見。
後ろに回り込む。
今度こそ。
俺は――
……
…………
……………………
「あれれー?」
まただ。
くそう、もう一度だ。
今度はもっとゆっくりと行動して、しっかりと成功させてやる。
きょろきょろ。
辺りを見渡す。
女性発見。
見た目、とてもよし。
ターゲットに認定する。
ちょっと背後を尾行した後、魔法を自分にかける。
自己強化を徹底して、気配を消したまま高速で真後ろに立つ。
腕を動かす。
狙いは――
……
…………
……………………
「なんでだよっ!!」
何が起こっていやがる。
しょうがない。
やろうと思ったことをノートに書いておいて、不可解な現象として報告しておこう。
えーと、なんて書こう。
とりあえず、時間が飛ぶ瞬間にやろうとしたことを書くべきだな。
まず、俺が――
……
…………
……………………
「……」
もう流石に慣れてきたぞ。
ノートにはしっかりと文字が書かれていた。
「そうだな、よんでみるといいかもしれないな(棒読み)」
ノートを両手で持つ。
「女性に向かって――」
……
…………
……………………
なんだか楽しいがわけがわからない。
「ん?」
ノートに追加されている文字列を発見する。
なんだこれ?
書いた記憶もないし、書こうとしてもいないぞ。
ノートにはこう書かれていた。
『「通常」で投稿されると規定違反となり、場合によっては作者IDが無効となります。』
わけがわからない。
通常?通常じゃないってどんなのだ?
ID?なんだそれは?
誰が書いたんだこんなの?
謎は深まるばかりだった。
そんなことばかりしていたら、いつの間にかお昼時になっていた。
しまった、一日を無駄に過ごしてしまった。
そそくさと物資を購入して、再び旅を再開する。
早くユミと合流できるといいのだが。
歩いていては時間がかかる。
あとどのくらいで着くんだっけ?
道のりでは大体残り半分くらいなんだが。
ここは馬車などの移動手段を使うべきなのだろう。
なるべく速い移動をする。
そうすれば早く目的地に着ける。
まあ、常識的なことなのだが。
しかし、困ったな。
お金がないのである。
だからって、わざわざ町とかで仕事をするのも気が乗らない。
下手したら、逆効果になってしまう可能性もあるからな。
どうにかして、楽に金を稼げないものか。
「うーん」
そんなことを考えていると、後ろから何かが来た。
「やべっ」
素早く回避する。
短剣を抜いて、戦闘態勢に。
「魔王に逆らうお前を排除する」
流石に慣れたぞこの展開。
というか。
そんな感じのセリフは前にも聞いたことあります。
というわけで、戦闘開始。
俺の勝つ可能性……ほぼ100%
だって、相手の動きは大体読めているし。
……戦闘終了。
「わーい」
馬車に乗って移動する。
お金があるって、いいなあ。
夜までスムーズに移動した。
今夜は野宿だ。
お金の節約は大切なのである。
ただ、野宿だと、例の奇襲に気をつけなければならない。
魔女がいるから大丈夫なのだけれど、
あんなことをした以上、一番大きい図書館のある街までは会う気になれない。
なので、徹夜である。
ちょっと眠っても、深い睡眠にならないように、体勢に気をつける。
特に、寝転がらないように。
感覚を敏感に働かせ、相手を捉える。
飲み物を飲んだりする際も、決して気を抜かないようにする。
「……!」
捉えた。
相手の攻撃を待つ。
少しの殺気を感じて、それに反応して体を動かす。
攻撃を回避するのに成功。
そのまま、処理する。
「ずーずーずー」
今日も快適馬車移動。
馬車で寝る。
昼夜逆転生活だ。
実のところ、あんな感じのことが一晩で五回繰り返された。
最近、多いのである。
知名度が上がってきたのだろうか。
目をつけられている……のは間違いないだろう。
街中でも気をつけないとな。
そこらへんのメモをノートにしておいた。
安定した収入源。
そういうこともきちんと書いておいた。
そして、たどり着いた。
目的地に。




