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第十六話:ごり押し

魔王がいる城。

そこに向かう。

城には魔王がいる。

だから、魔王を保護しようとするやつが集まる。

気配はあった。

だが襲いかかってはこなかった。

無視して進んだ。

こちらとしても戦いは避けたかった。

そして、今、囲まれている。


「魔法は使わんでくれ、頼むから」

「身を守る程度ならいいでしょう?」

「そりゃ、まあ……」

「ジェノサーイッ!!」

「殺戮はやめてー!?」


余裕があるわけではないが漫才はできた。

向こうが慎重すぎるのだ。

襲いかかる気配はない。

このまま引けば何もしない、ということか。


「引けば安全なんだが。襲いかかってはこないだろうから」

「便利な通訳っすねー」

「同一人物だからな」


引くべきだ。

そう言って、引こうとしたのだが。

それより早くサキさんが一歩踏み出した。


「行くわよ」

「ちょ……!?」

「殺さなければ、いいのでしょう?」


そう自身ありげに前へ進もうとしたのだが。

敵の刃物が襲いかかった。

間一髪のところで避けていた。


「殺すわ」

「だめだ」

「なんで」

「困ったらとりあえず戦闘をして、それでテンポをとりつつ敵から新しい情報を得て新しい目標を定めてまたそこで戦闘をしていくというありがちな展開はよくないと思うんだ。そういうのはロールプレイングなゲームでやっていればいいと思う」

「私に向けて言っているように感じないのはなぜかしら」

「さあ?」


おまけに殺されるのは俺だし。

正確には俺の主体であるこの世界をつくった人間の一部であるのだが。

日本語って難しい。


「とりあえず、殺すわ」

「あーあーあー」


サキさんは手から、真黒なレーザーを打ち出した。

そこまでできるんですか、あなた。

しかし。

拒絶の魔法を受けた敵たちは全くもって平気であるようだった。


「おいおい、手を抜くなよ」

「逃げましょう」

「はあ?」


いきなりなんだ。


「拒絶されて傷つくというのは、相手に対して好感を持っているからでしょう?」

「いきなり何の話だ」

「じゃあ、拒絶されている相手のことをなんとも思ってなかったら?」

「どうとも思わないだろ」

「つまり、私の愚かな弟は私に拒絶されるあまり、姉である私をどうでもいいと認識しているのよ」

「姉も大変だな」


とりあえず、逃げよう。

囲まれているけど、どうにかして逃げよう。

そんなところに、魔法が飛んできた。

炎の球体が向かってくる。

対処することはできない。

反射的に体が動いた。

それを手で受け止める。


「ぐおうっ」


敵対の意思。

攻撃の意思。

その他いろいろ。

決して、良い感情ではない、黒い部分が脳に伝わる。

それが、少しずつ言語として解釈されていく。


「お前らは我らの敵。ここで殺す」


そんな感じだった。


「なんか、意思が伝わるんだが」


魔法は意思であるとは知っていたが。

ここまではっきりと掴めるものなのか。


「逃がしてもらえないんですかねー?」

「どうだろう。聞いてみる」


ぽーん。

水の塊を投げる。

これを相手が受け止めれば。

……。

……。

避けられた。


「話す気はない、と」

「そもそも魔法で話す必要ねーです」

「逃がしやがれ!こんちくしょう!」


魔法。

刃物。

刃物。

魔法。

次々に飛んでくる。

どれを避けて、どれを受ければいいのか。

混乱してくる。


「ところで、質問があるのですが」


ユミが挙手する。

そんな場合じゃなかろうに。


「なんだ」

「どうして伏線もなしに変な能力を身につけられたんですか?」

「質問の意味がわからないな」

「……出来の悪い後付けなのか」


ぼそりと何か聞こえた。

悪口っぽい感じだった。

しかし、まあ。

見事に囲まれている。

囲まれているとしか言いようがない。


「囲まれて逃げれない、絶体絶命〜って、なんかであったよな」

「なにを突然」


サキさんが目を細める。

頭がおかしくなったの?

と、脳内でサキさんの声がした。

頼むから先入観まで俺をいじめないでくれ。


「いや、死ぬ前に言いたいことは言っておいた方がいいかなって」

「言っておくけれど、こういう状況は体験済みよ」

「そうだっけ?」


そういえば前にもあったな。


「つまり、この後俺たちは世界の一部として吸収されてゲームオーバーか」

「冗談が過ぎると殺すわよ。なんとかしなさい」

「そういうセリフはユミに言うべき」

「や、無理っす」


何かいい手はないだろうか。

そういう時、思いつけてしまうのが勇者なのだ。

英雄なのだ。

なので俺は英雄だ。

誰か褒めてくれ。


「なあ、前は世界に取り込まれそうになったよな」

「だからどうしたって言うのよ」

「今度は世界からはじき出されて元の世界へ帰還したらクールじゃないか?」

「は?」

「前回は魔法でピンチになったけど、今度は魔法で救われるってわけよ」

「意味がわからないのだけれど」

「そして前回魔法を使ったのは敵!ならば今回魔法を使うのは味方である俺!」


女性陣置いてけぼり展開。

だが、それでいいのだ。

彼女らは、頭で知識を得るよりも体で体験して知ってここまで来たのだ。

今更、何らかの不思議パワーで宇宙が爆発しようがなんでもないのだ。たぶん。

ところで、体で知るって、なんか興奮する言い回しだよね。

と、ここまで適当にまとめておいて、だ。


「一度起きたことを基にして、多少の改変を加えて何らかの事象を起こせば、その事象は改変に沿いつつも基にされた事象と同様に進行するのだ!!」


それは例えば、人間に向けられたユミの魔法を街に向けた場合のように、だ。

そして、今回を以前と同様に、なおかつ所々を逆転させて進めた場合。

行きつく先は。


「あばよ女性陣!元の世界に戻れ!そして――」


魔法を放つ。

光が二人を巻き込んで天へと飛んでいく。

そして。


「――勇者軍団アセトアルデヒドは解散だ」


俺は一人になった。

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