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絶対、だめっ!  作者: 芝井流歌
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5

「どした?また緊張しちゃった?」

「……違います」

「どしたの?そんな切ない顔して……」

「もう、いいんです」

「よくないよ!ちゃんと言わなきゃ伝わらないぞ?」

「そう……みたいですね、でももう分かったんで、いいんです」

「えー?意味分かんないよー」


分からんだろーよ。

分からんでいいよ。

あのキラキラでニコニコだったのは、僕に向き合ってくれてたんじゃなかったんだよな。

まぁそんなもんだよな。

こんなおいしい話、あるわけない……。

やっぱり僕の手に届くわけでもないし、僕と向き合ってくれるわけでもなかったんだ、最初からな。

勘違いしてたのはお互い様だけど、なんで僕はこんなに情けない気持ちでいっぱいなんだ?

来なきゃよかったな。

会わなくて、話せなくて、恋いこがれて、そのほうがよかった。

どんだけバカなんだ僕は……。


「弥くん?なんで泣いてるの?ちゃんと言わなきゃ分かんないよ?」

「あぁ、すんません、気にしないでください、先に弟さんの部屋、行っててください」

「でもぉ……」


なに泣いてんだよ。

情けない男だな、こんなことで涙を流すなんて、余計に勘違いされちまうぞ。


「分かった、分かったから泣かないで?あたしが強引に話を進めたからだよね?女の子に免疫ないのに隣に座っちゃったからだよね?ごめん、ごめんね?」


はぁー……。

そりゃそうだ。

たまきさんも僕も、お互いに何も知らなかったんだから、勘違いとか思い過ごしだってあっても全然おかしくないんだ。

しかし、どんな勘違いすればゲイにもってかれんだかな。


「僕、ゲイに見えます?」

「うん!」


即答、かつ全力で肯定っ。

自信満々かよっ。

まったくこの人は……。


「僕のどんなところが?」

「美少年なとこ!」


……美少年好きってのは、美少年自身が好きなんじゃなくて、美少年で妄想するのが好き、ってことか。

なるほどねぇ。


「じゃあ、僕は本当は女の子のほうが好き、って言ったらどう思います?」

「うーん、そういう風に考えたことないからなー、どうって言われてもなー」

「じゃあ、僕は本当はたまきさんが好き、って言ったらどう思います?」

「えー、それは想像つかないから分かんないなー」

「じゃあ、抱きしめてもいいですか?って言ったらどう思います?」

「誰を?」

「たまきさんを」

「誰が?」

「僕が」

「うーん、どう思うって言われても、どうも思わないんじゃないかなぁ?」


ちーん。

そ、そうきますか……。


「じゃあ、どう思うか試してもいいですか?」

「やだ」


おいっ!

心の底から拒絶ですかー!

こんな顔に生まれてきた僕が悪いのか、男同士しか脳内にないたまきさんが悪いのか、はたまた出会ってはいけない二人が化学反応しちゃったのか。


「な、なんでいやなんですか?」

「だって、弥くんは美少年だから、女の子を抱いてるのは……違うもん!」


違う?違うの?

僕は恋いしちゃいけないのー?

ははっ、ふられてる実感がないのは、ふられたことがないからなのか?

鈍いのかな、僕。

でも、鈍いのが幸いなことに、緊張もいつの間にか取れたっていうか、冷静に考えられるようになってきたというか。

そう、冷静に考えれば、意中の女性と二人きり。

チキンはさっき認めたが、僕にもそれなりに男な部分があるのを発見したのだ。


「ねぇ、たまきさん?」

「なあに?」

「僕、たまきさんを抱きしめたいんですけど、だめ?」

「んー、だからあたしは女の子だからー」

「いいじゃないですか、二人きりですよ?」

「え、それは違うよ!確かに男と女が二人きりだけど、それは絵にならない、美しくないもん」


……たはーっ、強情な思考回路だなー。

じゃあ、その思考回路のままでいいよ。


「たまきさん、すんませんっ」

「えっ、ちょっとちょっとぉ!やだって言ったじゃんっ」

「男だろうが女だろうが、僕は好きになった人を抱きしめたい、だめですか?」


ははーんだ、もうゲイでもバイでも、どうとでも脳内変換してくれたまえ。

たまきさんの頭ん中の僕はゲイで固定されてるなら、このハグは美しくなくても男に浮気しているわけじゃないから成立する!

やるな、僕!


「たまきさんには、僕がゲイにしか見えなくても、僕はあなたが好きなんです」

「……えー」

「えー、って言われても、仕方ないじゃないですか」

「あたしじゃだめだよぅー」

「だめでも、現実なんで勘弁してくださいよ、たまきさんの脳内に僕がいなくてもいいんで……」

「えー、意味が分かんないよ」

「だから、僕は片思いでいいんです、たまきさんに振り返ってもらえなくていいんです、分かります?」

「少し分かるような、納得いかないような……」

「たまきさんが僕をゲイにしたてて妄想するのは自由です、たまきさんが僕を脳内においてくれるならね」

「うぅー」

「いくらたまきさんが僕をゲイだと思っていても、僕の頭にはたまきさんがいます、ここまでは分かりました?」

「んー、分かったけど、納得したくない……」

「早く納得してくれないと、ずっと抱きしめたままですよー?」


いやー、納得しなくていーんだぜー!

ははーっ、僕今めっちゃ男に生まれたこと実感中っ。


「それって、弥くんがあたしのこと好きみたいじゃん?」

「……え、鈍いなぁ、さっきから言ってますけど、もう一回聞きたいですか?」

「……弥くん、こうしてみると背高いね」

「高くはないですよ、たまきさんが小さいだけです」

「弥くんて……」

「はい?」

「いい香りがする……」

「えっ?え、そそそうですか?」

「うん」

「それって、女の人に言う台詞ですよね?逆ですよ、本来なら僕から言う台詞です」

「違うよー、弥くんは受けだから、これでいいの、受けのほうが背が高いってのもありだし!むしろそれがいいかも、うん!」

「は、はい?」

「やっぱりもったいないなー、その容姿でノーマルなの……」

「はは……、どうしてもゲイに見たいんですね、中身はどこいったんですか?僕の中身は……」

「中身?中身かぁ……、そういわれると、弥くんの中のあたしの中身は?」

「たまきさんの中身……えっと、歌声聴いてれば中身も見えます……、って分かったような口叩きましたね、すんません」

「歌、ほめてくれてたね」

「はい、めっちゃかっこよくて一目惚れしたんです」

「かっこよくて一目惚れ?」

「だめですか?」

「やっぱり受け要素満載!かっこいい男の子がいいのね!」

「……無理矢理もってかないでくださいよっ」

「放してほしいけど、いい香りぃ……、なんか安心する」

「分かりましたよ、放してあげますけど、僕の香りが恋しくなったらいつでも抱きしめさせてくださいね?」

「それは別!」


なーんーでーっ!

今めっちゃいい雰囲気になってたと思ったのにぃ。

まぁいいか、少しでも僕のこと分かってくれたみたいだし。

僕にしてはかなりがんばったしっ!

やればできるじゃないか弥っ。


「しゅうちゃんとこ、行こっか!」

「そうですね、でもくれぐれも誤解のないようにお願いしますよ?」

「分かってる分かってる、ちゃんと誤解は解いておくよ!」


いや、解くもなにも誤解してたのはあなただけですよー、たまきさん!

なんか、得したような損したような。

まさか初恋の人がボーイズラブ変換しかできない女性だったとはねー。

弥くんっていい香りー、か……。

思い出したら今更恥ずかしくなってきた!

でも、たまきさんこそ男に免疫ないっていうか、興味ない感じだったな。

ハグだけであせってたし。

躊躇なくハグした自分が自分らしくなくて驚いたがね。

まぁ、あそこまで誘惑じみた用語を並べられて、実はお互いの勘違いで、って崖から突き落とされた後だし、もう何が起きようが怖いものなしだったのかも。


「しゅうちゃん、お待たせー!」

「姉ちゃん、弥に変なこと言わなかっただろうな?」

「うん!言ってないよ!ね、弥くん」


充分、いや全部変なこと言われたが、たまきさんにとっては変なことのうちには入ってないんだろうな。


「あぁ、うん、特に何も……」

「本当ー?絶対?俺と弥をくっつかせようとかしてなかった?」

「はっ?」


し、知ってたのか葉山弟!

お姉さんの妄想癖をー!

こ、このやろぉ……、知ってて僕を檻に入れたというのかっ。


「えー?しゅうちゃん何で分かったのー?」

「何でって、中学の時も俺のクラスメイトと俺がいちゃついてる妄想とかを晩飯食いながら延々と語ってたからだよ」

「あー、でもあの子は弥くんほど美少年じゃなかったし、うちに連れてきてくれなかったし、今思えば受けってタイプじゃなかったなー」

「もー!ごめんな弥ぅ、やっぱ変なこと言われてたんだなー」


あー、とてもな。

しかもとんでもない誘惑という勘違い発言でね。


「あーぁ、うちのかわいいしゅうちゃんに早く彼氏作ってあげたかったなー……」

「だから俺はノーマルだってば!」


楽しそうに当たり前に会話続けてるけど、尋常じゃない内容だと分かってるのか葉山家。

やっぱりたまきさんの笑顔はかわいいけど、まさかそんな風にしか男を見れないなんて、それこそもったいないな。

そして、楽しそうな会話に着いていけない僕の背後から突き刺さる幼なじみビーム……。


「何なの?これ」

「お察しの通り……です」

「お姉さんはブラコンで妄想癖で、で?あんたは何やってたのよ」

「何って……、何も……ない、です」

「そうそう、あたしのこと好きなんだー!って抱かれただけー!何にもないよー」

「……抱かれた?」

「ち、違う違う違う!抱かれたって、ハグだよ、ハグ!」

「ふーん……弥、あたしに嘘ついてもバレるの分かってるよね?むしろバレなかったことなんてないよねー?別に隠すことないじゃない?」

「だ、だからーっ、嘘じゃないって!僕が嘘ついてたら分かるんだろ?分かるだろ、今は嘘ついてないって!」

「じゃ、なんでそんなにあせってんのよ」

「あせってないよ!あーいや、あせってるかもしれないけど、それ以上はなんもないってば!本当にっ!」

「説得力のない挙動不審っぷりだけどぉ?」

「凪沙ちゃん、本当になんもないよ?あたしはやだって言ったからちょっとだけだよ?でも、あたしがよければいつでも抱かせてくださいって」

「ち、ちょっとーっ!たまきさん!違うでしょっ違うでしょ?あれはそうじゃなくて……か、勘違いさせるような言い方しないでくださいよー!」

「弥……、ごめんね、あたしが知らない弥もいるよね、男の子だもんねー、それくらい大胆になってたとは分かんなかったわ」


し、収集ができんーっ!

言ってることは事実だけど、じゃなくて事実に近い誤解だっ!

僕の意中の人と、男と女が二人きりで部屋にいたら、って勘違いされても不思議じゃないけど、限りなく事実に近いけど、近いけど、違うだろーっ!

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