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プロローグ
プロローグ
人はいつ壊れるのだろう。
そんなことを考えたことがある。
人を殺した時だろうか。
大切な人を失った時だろうか。
それとも、自分自身を諦めた時だろうか。
分からない。
少なくとも僕は、そのどれでもなかった。
もっと前だった。
ずっと前。
誰も気付かないくらい小さな綻びだった。
それはきっと、どこにでもある。
学校の教室。
職場。
家庭。
友人関係。
恋愛。
人は皆、少しずつ壊れている。
ただ自覚していないだけだ。
僕もそうだった。
普通だった。
どこにでもいる人間だった。
朝起きて。
学校へ行って。
笑って。
帰って。
眠る。
それだけだった。
だから今でも時々思う。
もしあの日。
もしあの時。
もしあの場所にいなければ。
もし誰かが一言だけ声を掛けてくれていたら。
もし。
もし。
もし。
そんなものに意味はない。
結果は変わらない。
人は過去をやり直せない。
少なくとも、あの頃の僕にはできなかった。
視界の向こうで誰かが泣いている。
誰かが叫んでいる。
誰かが笑っている。
血の臭いがする。
焦げた臭いがする。
何かが燃えている。
誰かが死んでいる。
何人死んだのかは覚えていない。
覚える必要もなかった。
どうせ全員死ぬ。
そう思った。
そう思ってしまった。
だから終わったのだろう。
あの日。
雨宮零という人間は死んだ。
そして。
怪物だけが残った。




