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厨二少女に振り回される毎日が気づけば俺の青春になっていた  作者: あすあす


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十二話 蒼海に響きし救世主達の咆哮

 ホテルへ荷物を置き、着替えを済ませた一行は、そのまま海へ向かっていた。


 照りつける陽射し。潮の香り。耳に届く波音。


 そして——


「海だぁぁぁぁぁぁ!!」


 ゆいが真っ先に砂浜へ駆け出した。


「常夏の魔境!!蒼き世界!!素晴らしいぞ!!」

「転ばないようにね〜」

 

 茜の声が広く活気立っている砂浜に響く。


 目の前に広がる海は、どこまでも青く、空との境界が曖昧になるほど鮮やかな景色。


 眩しい。


 本当に、眩しかった。


「ねぇ、見てこれ。やっぱり可愛くない!?」


 茜がくるりと回る。


 白を基調にした水着が、夏の陽射しによく映えていた。


「うむ!茜には光の加護を感じる!」「なにそれ〜」


 笑い合う二人。


 その横で、春斗は視線を逸らした。


「春斗さんも似合ってますよ」「男の水着に似合うも何もあるか?」


 黒ベースのいかにも春斗らしいシンプルな水着。


 柊一はそんな春斗を見て、小さく笑った。


「無難を極めていますね」「放っとけ」


 そんな会話をしていると——


「春斗!!」


 ゆいが勢いよく駆け寄ってきた。


 黒を基調にしながらも、ところどころに青が入った水着。


 普段のゆいらしさを残しつつ、どこか夏らしい。


「どうだ!我が魔装は!」「……似合ってるんじゃないか」


 一瞬だけ言葉に詰まりながら返す。


 するとゆいは、ぱっと顔を明るくした。


「そうか!!」


 隣で茜がその様子を見て、少しだけ笑っていた。


「よし!では海へ突撃だ!」


 ゆいが海へ向かって走り出す。茜も楽しそうに後を追った。その後ろを柊一もゆっくり歩き始める。


 けれど。


 春斗だけは、その場から動かなかった。

 

 いや、動けなかった。


 寄せては返す波を見つめる。


 胸の奥が、いつまで経ってもざわついて消えない

 

 耳の奥で、遠い音が蘇る。


 海から来る水が全てを飲み込み、街が崩れていく。

 叫び声。


 呼吸が浅くなると共に視界の端が段々と暗くなる。


「……春斗?」


 茜が気づいて振り返る。


「あぁ……いや、俺はいい」


 短く返す。


 その声に、ゆいも足を止めた。


「海、入らないのか?」「はは……夏バテだな」


 春斗は誤魔化すように笑う。


「少し休んでるから行って来いよ」


 ゆいは少しだけ春斗を見つめていた。


 いつもみたいに、すぐ騒がない。


 何かを考えるように。


 そして——


「なら!」


 ぱっと表情を戻す。


「波打ち際までだ!」

「は?」

「そこまでなら問題あるまい!」


 ゆいが春斗の腕を掴む。


「お、おい」「安心しろ、倒れそうになっても茜と柊一が助けてくれる!!」

「お前じゃないのかよ」


 強引に引っ張られる。


「ちょ、待っ——」


 なあなあと砂浜を引きずられ、気づけば、波打ち際だった。


 冷たい水が足に触れる。茜が足で水面をピチャピチャと叩き、ゆいが目の前で笑いかける。


「……っ」


 一瞬、体が強張る。


 けれど。


「冷た〜い!」「すごく気持ちいいぞ!これは!」


 ゆいと茜が笑っていた。


 柊一も少し離れた場所で穏やかに眺めている。


 その光景を見ているうちに。


 胸を締めつけていたものが、少しだけ遠のいた気がした。


「春斗!」


 思い出したかのようにゆいが振り返る。


「楽しいぞ!」


 太陽みたいな笑顔だった。


 春斗は少しだけ目を細める。


 そして。


「……そうだな」


 小さく笑った。


◆◇◆


「なんだ!あれは!!」


 ゆいが勢いよく指差した先。


 そこにあったのは、水上バイク。


「うわすご、水上バイクだよね」「そうですね。ここではレンタルもできるらしいですよ」


 ゆいがさらに目の輝きを強める。その姿を見れば次に言い出す事なんて考える必要はなかった。


「あれに乗ってみたい!!」

「運転するのに免許が必要なんだぞ」

「あぁ、その免許ありますよ」


 柊一がさらりと言う。


「あるのか?」

「はい、特殊小型船舶免許を持ってますよ」

 

 突然の柊一の告白に春斗は開いた口が塞がらない。


「乗れちゃうの!水上バイクに!」「一応、ありますので」

「なんでもできるな、お前……」


 数分後。


 海上。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 ゆいの絶叫が海に響いていた。


 水上バイクの後ろに繋がれたインフレータブル。その上に、春斗、ゆい、茜の三人が乗り、波のや慣性で容赦なく揺れる。


「柊一ぃぃぃ!!適性速度かぁぁぁ!!」


 春斗が叫ぶ。


 前方では。


「安全運転。少し遅いくらいですよー」


 蒼い海にスンと広がる柊一の涼しい声。


 絶対嘘だ。


「ひゃはははは!!速いぞぉぉ!!」「ゆいちゃん落ちる落ちる!!」


 ゆいは完全に楽しんでいた。


 春斗もしがみつきながら、必死に耐える。


 波を跳ねるたび、体が浮く。


 でも——


「っ、はは……!」


 気づけば、笑っていた。


 風を切る音。響く笑い声。青い海。


 今、この瞬間だけは。


 昔の記憶よりも、ずっと鮮やかだった。


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