第75話:医務室のレベルアップ狂騒曲
◇◇◇
#1 医務室の狂乱と診断
ギルドの医務室は混乱の極みだった。
簡易ベッドに倒れているのは雪村蒼真。
外傷はないが、まるで高熱で魘されているかのように微かに痙攣を続けている。
そして何より異常なのが、彼の口元から漏れる音だった。
蒼真:
「ピコン……ピコン……ピコン……うひ……ピコンッ」
ノアは蒼真の全身から発せられる微細な魔力の波長を分析し、青白い顔で説明した。
ノア:
「恐らく、竜の巣での極限の戦闘経験……121回もの瀕死と再生が、彼のシステムに過剰な経験値(EXP)を一度に流入させたのです」
ギルド長レイ:
「過剰な経験値?そんなことがあり得るのか?」
ノア:
「はい。彼のステータスを管理する《システム》が、制御不能な状態に陥っています。彼の魂の中で起こっている『ピコン』という音は、破壊されたカードの代わりに、彼の身体が直接、無限にループする通知を出している状態なんです」
永瑠は涙をこらえ、蒼真の手を握り続けた。
永瑠:
「じゃあ、どうしたら……」
ノア:
「治る、というよりは、計算が終わるのを待つしかありません。
レベルが天井を超え、次の次元のレベルを割り出すためのシステム演算を行っているのです。
この計算には、丸1日はかかるかと……」
◇◇◇
#2 終わらない見舞い客
ノアの診断から半日が経過した。
医師:
「とりあえず、命に関わる危険な状態からは落ち着いたようです。
しかし、意識の混乱は続いています」
永瑠(心の声):
「(良かった……)」
薬師:
「すみません、神父様!生き延びたようですので、復活の儀式は大丈夫です。」
神父:
「(安堵の声で)そうか、そりゃ良かった。ワシの出番がないのが何よりじゃ」
ノア:
「ありがとうございました。」
ギルド長レイ:
「しかし、よく助かったな。蒼真の生命力はまさに外来種だな。」
医務室には、蒼真の奇跡的な帰還を聞きつけ、皆が心配をして集まっていた。
ゴリラ先生:
「まったく、訓練もサボりおって!追加メニューを組んでやらねば!」
エリオス王:
「彼は私達の国を救った勇者だからね。無事でいてくれれば、それだけで希望だ」
リサ王妃:
「ええ。本当にご無事で良かったわ」
魔導具屋:
「あぁ、ほんとに助けてもらったからね。あんとき助けられなかったら、孫は今頃生まれなかったよ」
転生者専用アイテム屋:
「そうそう、魔導具屋のとこの赤ちゃん、抱っこしたらよキャッキャ笑うんだよな、本当に可愛いよ!」
スライム屋:
「あ、ちょっと、うちの子を連れてくるわ。きっと癒やされるぞ!」
魔導パンツ屋
「ちょっとあなたパンツ買わない?」
戦士:
「しかし、無事で何よりだ」
僧侶:「あぁ、よかった」
ダークエルフ:「ほんとに……」
モンク「私の腹筋を見たまえ」
猫耳店員:「にゃん」
医務室は、心配と安堵と祝福の声が交錯する大騒ぎとなった。
◇◇◇
#3 蒼真の絶叫と決壊
その時、医務室の内部から、突如として激しいベッドの軋みと、声が響いた。
静寂が訪れ、全員が注目する。
蒼真:
「うるせーーーー!!!」
ピコンッ、ピコンッ、ピコンッ!という狂気のレベルアップ音を背景に、蒼真の怒号が響き渡る。
永瑠:
「蒼真!目が覚めたの!?」
ギルド長レイ:
「意識が戻ったのか!?だが、なぜ怒鳴っている!」
ノア(心の声):
「(青ざめ)計算が終わる前に、騒音で処理がフリーズしたのかも……!!」
全員の好奇心と安堵が限界に達し、勢いよくベッドに押し寄せた。
王妃リサ:
「蒼真さん、お怪我は!?」
エリオス王:
「無事か、勇者!」
魔導具屋:
「お孫ちゃんの顔を見てくれ!」
魔導パンツ屋:
「とにかく顔見せてくれよ!」
誰もが蒼真の無事を確認しようと、小さな医務室(せいぜい四畳半ほどの広さ)に、無数の人間と、ゴリラ先生、さらにはスライム屋が連れてきた巨大な癒やしスライムまでもが雪崩れ込んだ。
◇◇◇
#4 極限の圧迫とシステムの暴走
簡易ベッドの周りは、瞬時に人、人、人で埋め尽くされた。
蒼真の身体の上に、リサ王妃のドレスの裾が触れ、ゴリラ先生の太い腕がノアを押し、永瑠は壁に押しつけられた。
蒼真は、上半身だけ起き上がった状態だったが、動けない。
蒼真:
「ぐ、ぐえっ……お、重い……!?」
ゴリラ先生:
「おっ、起きたな!早速訓練だ!」
(笑顔で蒼真の胸板に手を置く)
神父:
「生きとったか!やはり神の御加護じゃ!」(ベッドの端に体重をかける)
スライム屋:
「ほら、蒼真さん!癒やしスライムちゃん、撫でて!」(ベッドの枕元に巨大なスライムを乗せる)
ピコンッ、ピコンッ、ピコンッ!ピコンッ、ピコンッ!
頭の中では、絶え間ない通知音。
耳のすぐそばでは、王族や店主たちの喧騒。
そして身体には、十数人分の体重と、巨大スライムのぬるぬるした感触。
まさにカオスである。
蒼真の理性は完全に崩壊した。
蒼真:
「やめろおおおおおおおお!!!」
彼は両手を振り上げ、叫んだ。
その瞬間、彼の身体から、限界を超えた魔力の波動が爆発的に噴き出した。
その瞬間。
――ドンッッ!!!!!!
蒼真の体から、
“計算完了”の魔力波が大爆発した。
医務室にいた全員が外へ吹き飛ぶ。
永瑠:
「きゃっ!!」
ノア:
「うわぁぁ!!」
王族も、ゴリラ先生も、スライムも、
綺麗に逆方向へ飛ばされていった。
◇◇◇
#5 次元の扉が開く
蒼真はベッドの上で荒い息をついていた。
通知音は止んでいる。
永瑠は壁からずり落ちながら、震える声で言った。
永瑠:
「蒼真……?」
ノアはカードの残骸に触れ、蒼真のステータスを読み取ろうとする。
ノア:
「……っ!?
Lv……9999……?
いえ……違う……これはもう……レベルという概念じゃありません……
《次元を超えた者(Transcendent)》……!」
蒼真は、汗だくで天井を見上げながら呟いた。
蒼真:
「俺は……もう……
通知音だけは……
絶対に聞きたくない……」
永瑠は小さく笑い、泣きながら蒼真に近づいた。
永瑠:
「……おかえり……蒼真……」
【蒼真:ステータス(再構成後)】
【基本情報】
名前:雪村蒼真
種族:外来種
職業:剣士
特異武装:焔生
魂紋ID:SO-4207X(自動再構成)
【ステータス】
※竜の巣の“121回の死線”による経験値暴走の最終演算結果
Lv:9999(上限突破)
STR:812
AGI:1540
VIT:701
MAG:466
DEX:1399
INT:522
SOUL:999(カンスト)
総合ランク:S++(規格外)
【スキル】
《アーカ・メモリア》:瞬間記憶・未来予測・精神魔法解除
《界裂》:時空切断・短距離転移
《界徹》:時空貫通・核斬撃
《再構成適応》:致死時、自動補正が走る魂情報層の再調整
【特殊状態】
《オーバーフローLv化》:経験値計算が限界値を突破
《通知バグ修復済》:ピコン音の無限ループは完全停止




