第74話:終わらない音と気絶の帰還
◇◇◇
#1 光の階段と、突然の異変
光の階段がせり上がり、蒼真は全身の痛みを無視し、ゆっくりと出口へ向かって歩き始めた。
ドラゴンの気配は消え失せ、竜の巣の静寂が、三日間の地獄の終わりを告げている。
蒼真:
「……永瑠……ノア……今、帰る……」
煌めく光を浴びて、蒼真は美しく輝いた。成長したその姿はこれまでとは違い、大きく見えた。
震える足に力を込め、一段一段を踏みしめて階段を登る。
蒼真:
「長いようで、短かったような……。あばよ、エンシェントドラゴン……」
その時だった。
ピコンッ……
ピコンッ……
ピコンッ……ピコンッピコンッピコンッ!!
蒼真:
「……は?」
足元のステータスカードが、激しい振動と共に不規則な通知音を発し始める。
【Lv 5 → Lv 8 → Lv 12 → Lv 20 → Lv 50 → Lv 76→ Lv 98 ……】
蒼真:
「ちょっ……ま……待て、早すぎだろ!?何が起きて……」
ポコンポコンポコンポコン!!!!
レベルアップの内部通知音が、完全にバグったゲームのように、蒼真の頭蓋骨の中で爆音で鳴り響き、止まらない。
蒼真:
「やば……頭の中……気持ち悪……」
次の瞬間、ステータスカードが耐えきれず、白く光って「バチンッ!」と破裂した。
蒼真:
「ッッあああああ!?カードぉぉ!!」
カードがショートした途端、レベルアップ音はさらに狂ったように加速した。
ピコンピコンピコンピコンピコンピコンピコンッ!!
蒼真:
「や、やべ……あぁ頭がァ割れるぅうう……がは……」
そのまま――
バタッ。
蒼真は、光の階段の途中で、全身の力が抜け果てて気絶した。
意識が完全に落ちる最後の瞬間に聞いたのは、まるで魂の奥から響くかのような、やけに間の抜けた音だった。
ピコン……ピコン……
◇◇◇
#2 地上、捜索隊の絶叫
地上。
砦前では、ギルド長レイを中心に、蒼真の生存を信じた捜索隊が最終調査に入っていた。
戦士:
「穴の奥、何か光ってます!これは――」
ノア:
「観測!!!蒼真さんの魂が……微弱ですけど……生きています!」
永瑠:
「いたの!?蒼真が!!?」
一同が希望と緊張に包まれる中、穴の底から カラン……カラン…… と奇妙な音が響いた。
次の瞬間、
ガラガラガラガラッ!!
光の階段と、その階段から滑り落ちてきた人間が、激しい音を立てて転がり落ちてきた。
ドシャァァァ!!!
永瑠:
「蒼真!!」
ノア:
「蒼真さん!!?」
ギルド長レイが即座に駆け寄る。蒼真の身体は、微かに痙攣していた。
ピクッ…ピクッ…
蒼真:
「あは……ピコン……ピコン……あはは……ピコン……」
レイ:
「マ、マズイ……どうやら頭を……強く打ったらしい……!!!相当危険な状態だ!!!」
永瑠:
「だ、だめよ蒼真!!しっかりして!!」
ノア:
「蒼真さん!!すぐに回復を!!」
蒼真:
「あは……ピコン……ピコン……止まら……ピコン……ない……あは……」
捜索隊員:
「お、おい!ヤバいぞコレ!!」
「完全に壊れてる!!」
「回復魔法!!早く!!」
永瑠は涙ぐみながら叫んだ。
永瑠:
「蒼真!!しっかりしなさいよ!!」
ピクッ…ピクッ…ピクッ
蒼真:
「ぴ、ぴこん……あは……うひ……」
◇◇◇
#3 緊急搬送
ギルド長レイ:
「すぐに担ぎ出せ!!意識が混乱してる!」
「すぐにギルドの治療室へ運ぶ!!」
捜索隊員たちは気絶した蒼真を抱え、急いで砦へ走る。
永瑠とノアがその横を必死で並走する。永瑠の顔は涙と焦りで歪んでいた。
だが蒼真の口からは、狂ったレベルアップの通知音が、途切れ途切れに漏れ出るだけだった。
蒼真:
「ピコン……ピコン……ピクッ…」
ノア:
「蒼真さん!!意識を保って!!」
永瑠:
「お願い……戻ってきて……」
しかし、最後に力を振り絞るように、蒼真の口から「ピコン」という音が漏れた。
ぱたり。ピクッ…ピクッ…
そのまま、蒼真は完全に意識を手放した。




