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第50話:いつもの朝、いつもの教室、いつものプリン

◇◇◇



#1 朝のホームルーム前


ガラガラと音を立てて教室の扉が開く。


担任

「はいはいー席に着けー。今日も遅刻ギリギリのやつ多すぎな」


生徒たちの返事もそこそこに、蒼真は自分の席に深く沈み込んでいた。目の下にうっすらとクマができており、彼は完全に寝不足だった。


蒼真(心の声)

「……昨日の深夜、異世界で魔物掃除してたんだよ……。こっちの時間でいう残業だ、残業」


永瑠

「……知らないわよ。自分で引き受けたんでしょ」


ノア

「おはようございます〜!朝のプリン補給完了です!」

すでに机の上にコンビニで買ってきたであろうプリンを三つ積み上げ、スプーンを握っている。


クラスメイトA

「またプリン……もう誰も驚かねぇな」


クラスメイトB

「ていうかノアちゃんの机の引き出し、完全に冷蔵庫になってるよ。」



◇◇◇



#2 昼休み・屋上


昼休みの短い休憩時間。

蒼真はベンチに座り込み、頭を抱えた。


蒼真

「はぁ……やっと休憩……。午後の五時間目は体育だぞ、地獄か」


永瑠

「……蒼真。弁当」


永瑠が、何の脈絡もなく、紙袋を差し出してきた。


蒼真

「……え……」


蒼真は怪訝な顔で袋を開け、中身を見て目を丸くする。


蒼真

「マジで!?作ってくれたの!?」


弁当箱には、彩り豊かで手の込んだ料理が詰められていた。そして、その中心には、完璧な焼き加減の卵焼きが鎮座している。

それは、どう見てもハートの形だった。


永瑠は素っ気なく顔を背ける。


永瑠

「……ついでよ。作りすぎたから、捨てるのもったいないし、仕方なく、よ」


ノア

「観測完了!朝四時半か愛情を込めて頑張ってました!」


永瑠

「ノアァァァァ!!!」


永瑠は即座に弁当箱の蓋でノアの頭を叩いた。


ノアは「あうちっ」と悲鳴を上げながらも、プリンの守護を優先して倒れ込む。


しかし、蒼真はすでに卵焼きを口に入れていた。


蒼真

「……うま……」


永瑠の耳は止めどなくゆっくりと、真っ赤に染まっていった。



◇◇◇



#3 5時間目・体育(地獄)


午後の体育。種目はバスケットボール。


男子生徒

「蒼真、お前も来いよ!」


蒼真は、バスケ初心者だった。


蒼真(心の声)

「(パスが来る→相手はフェイクと予測して一瞬足を止める→その隙に3Pラインへ移動→シュートはバックスイングが最適→スイッシュ)」


彼は未来予測を駆使して、パス、ドリブル、シュートを十回連続で完璧に成功させた。


クラス全員

「……お前、チートだろ!」


一方その頃、女子はバレーボール。


永瑠は持ち前の運動神経で、完璧なレシーブを見せた。

だが、着地の際、彼女はなぜか予測を誤る。


ドンッ。


永瑠は、コートサイドにいた蒼真の胸に、そのまま倒れ込んだ。


胸ドン!


蒼真

「うわああああぁぁ柔らかい!!」


永瑠

「見るなああああぁぁ!!」


彼女は反射的に、彼の顔を引っ叩いた。



◇◇◇



#4 放課後・教室


夕方。教室はオレンジ色の残光に包まれていた。


蒼真

「……今日もなんとか生き延びた……疲れた」


帰りの支度を終えた永瑠が、小さく、彼の袖を引いた。

その指先に、わずかな躊躇が見て取れる。


永瑠

「……ねぇ蒼真」


蒼真

「ん?」


永瑠(小声)

「……明日も……一緒に、弁当……食べよう?」


永瑠はすぐに顔を背ける。


永瑠

「別に、その……そうゆうのじゃないけど……そ、その、ただ……あの卵焼きが美味しかったから、また作ってやってもいいかな、って思ってるだけよ……」


しかし、その言葉とは裏腹に、彼女の耳は夕焼けよりも鮮やかな赤に染まっていた。


廊下の陰。帰宅途中のノアが、その瞬間を捉えて全力でガッツポーズをした。


ノア

「観測史上最高のツンデレです!今日の観測データは永久保存版!」


机の上には、ノアが朝から食べ終えたプリンの空き容器が三つ転がっている。

窓から入る風が、教室のカーテンを静かに揺らした。


蒼真(心の声)

「……こんな日常が、ずっと続けばいいな。俺が命をかけて守りたいのは、この瞬間なんだ」


永瑠

「……帰ろ?」


蒼真

「ああ」


ふたりが並んで教室を出て歩き出す。


ノア

「待ってぇぇぇぇ!!!」

ノアが全力疾走で後ろから追いかけてくる。




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