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第3話:魂の温度と違和感



#1 史上最悪のすれ違い


夜の神楽市――嵐の後の静寂。


戦闘の余波が残る街路。 黒い粉塵と焦げた臭いが夜風に漂っていた。


蒼真は妖刀《焔生》を握ったまま膝をつく。


(落ち着け……落ち着け俺……)


(いや、落ち着けるか!?)


(化け物斬ったんだぞ!?)


(しかもなんで斬れた!?)


(俺、体育2だぞ!?)


鼓動が耳の奥で鳴り響く。


その時――


コツ、コツ、コツ……


ヒールの音。


暗闇から冬崎永瑠が現れた。


制服は破れ、血に染まっている。


なのに。


傷は一つもない。


(うわっ……こわっ……)


(……いや、美人!?)


(違う違う!!やっぱ怖ぇ!!)


(てか無傷!?秒で治ったの!?)


永瑠は蒼真を静かに見つめる。


(……どういうこと?)


(異世界のモンスターを倒した……?)


(普通の人間じゃない。)


二人の間に、重い沈黙が流れた。


#2 緊迫の無言劇


蒼真 (あんな化け物を一撃で……一体何者だ……)


「…………」


永瑠


(異世界の怪物を倒す人間なんているわけがない。)


「…………」


蒼真


(まさか……人型のモンスター!?)


ガクガクガク……


膝が勝手に震える。


(無理無理無理!!)


永瑠


(……!!)


(武者震い!?)


(戦う気!?)


永瑠が一歩前へ出る。


蒼真


(近づいてきた!!)


(と、とりあえず刀!!)


恐る恐る《焔生》を構える。


永瑠


(やっぱり来る!!)


右足を引く。


視線が《焔生》へ向く。


二人の視線がぶつかった。


#3 魂の温度と不協和音


蒼真


(この刀……


なんで"彼女だ"って分かるんだ?)


(俺の脳、勝手に認識してる!?)


永瑠


(この刀……


私を見てる……?)


(懐かしい……


でも痛い。)


(この世のものじゃない。)


静寂。


街の音が消え、


二人の呼吸だけが響く。


端から見れば、


完全に一触即発だった。


#4 不死という軽すぎる真実


永瑠


(……まずい。)


(このままじゃ戦闘になる。)


(情報を開示して止めるしかない。)


永瑠は静かに口を開いた。


「……私は、不死。」


戦う意味はない。


そう伝えるつもりだった。


しかし。


蒼真


「え??」


「軽っ!!!」


「なんで急にカミングアウトした!?」


永瑠


「……え?」


蒼真


「いや『え?』じゃなくて!!


今、不死って言ったよね!?」


「さっきの傷は!?」


永瑠


「……直った。」


蒼真


「秒で!?


何そのチート性能!!」


永瑠


(不死だと知って逃げない……)


(再生速度に驚いてる?)


(普通なら逃げるのに……)


(よく分からない人間。)


(只者じゃない。)


二人の会話は、


最初から最後まで噛み合っていなかった。


#5 核心に触れそうで触れない二人


永瑠が尋ねる。


「あなたは……


なぜその刀を扱えるの?」


蒼真は首を振る。


「俺にも分からない。」


「握った瞬間、


誰かの戦い方が脳に流れ込んできた。」


永瑠


(記憶……?)


(そんなこと、不可能……。)


(でも、この違和感は……。)


永瑠は背を向ける。


「私は、冬崎永瑠。」


蒼真は慌てて名乗り返した。


「雪村蒼真だ。」


永瑠は立ち止まり、小さく呟く。


「雪村蒼真……


あなたは、一体……。」


(どうして……


私と同じ匂いがするの……?)


蒼真もその背中を見つめる。


(なんなんだよ、俺……。)


(怖いのに……


なんで追いかけたくなるんだ……。)


結局、会話はほとんど進まなかった。


それでも二人の運命だけは、


確かに動き始めていた。



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