第25話:オルド王国へようこそ
◇◇◇
#1 落下、着地、そして混乱
シャボン玉のように脆い魔法は、鮮やかな閃光と共に弾け飛んだ。
蒼真
「うわあああああああ!!!
おちるぅぅぅううううう!!!!!」
蒼真の悲鳴が空気を切り裂く。身体は重力に引かれ、一直線に地面へ急降下していく。
永瑠
「落ち着きなさい!黙って落ちなさい!!」
永瑠は、夜の帳のような黒いローブを翻し、猫のようにしなやかに地面を捉える。
ノアは、白銀の光を全身に纏い、羽毛のようにフワリと着地した。
そして蒼真は――
ゴツンッ!!
頭から土の地面に激突し、呻き声を上げた。
蒼真
「ぐはーーーーーっ!!!!」
ノア
「着地成功ですっ!」
蒼真
「全然成功じゃねぇぇぇ!!」
蒼真は顔を上げ、泥と埃にまみれた顔で立ち上がる。
風の匂いが違う。草木の香りではない。魔力が混ざった、どこか澄んでいながら重い空気だ。踏みしめる大地も、視界の色彩も、全てが“異質”だった。
永瑠は深く息を吸い込み、ぐっと目を細める。
永瑠
「……この空気、魔力密度が高い。この世界は私たちより進んでいるかもしれないわ」
蒼真は辺りを見渡す。
「ここ……どこなんだ……。俺、今度こそ帰れるかな……」
その時、眼前の視界が晴れた。木々の間から見えた光景に、蒼真は言葉を失う。
◇◇◇
#2 城塞都市 オルド王国
蒼真
「……城?」
白銀の石で幾重にも築かれた巨大な城壁。空には淡い青に光る魔導障壁の層が見える。都市全体が、まるで一つの巨大な守りの塊のようにそびえ立っていた。
永瑠が静かに訂正する。
「いいえ、“城塞都市”そのものよ。都市ごと、強力な魔法で守るために存在している」
蒼真
「……ガチで、異世界だ……」
蒼真は呆然とした。マンガや映画でしか見たことのないファンタジーの光景が、今、目の前にある。
ノアは、そんな蒼真の隣で、どこか誇らしげに胸を張った。
ノア
「ようこそ!ここが私の育った街です!」
◇◇◇
#3 騎士団、ざわめき
ガガンッ!!
瞬間、周囲の森から数十の甲冑が飛び出した。白銀の鎧を纏った騎士たちが、一斉に槍と盾を構え、三人を完璧に囲み込む。
騎士Aが声を荒らげた。
「囲めッ!!空間転移の魔物かもしれん!!」
蒼真
「だから俺たち魔物じゃねぇって!!」
永瑠
「魔物?失礼ね、私、吸血鬼だけど」
騎士団の間に、一瞬の緊張と動揺が走る。
「!?」
永瑠はすぐに付け加える。
「冗談よ。半分だけ」
「それも言うなぁぁあ!!永瑠、黙ってくれ!」
蒼真のパニックをよそに、空気が変わった。
◇◇◇
#4 膝をつく騎士たち
騎士団のざわめきが、突然、驚愕の沈黙へと変わる。
騎士B
「ま、待て……あのお方は……まさか……?」
騎士Cが続けた。
「白銀の髪、天空の瞳……それに、全身から発せられる光の気配……」
ノアを見て、騎士たちは一斉に、地に膝をついた。数十人の重厚な鎧が立てる音が、一瞬にして静寂を破る。
騎士隊長は、敬意を込めて深々と頭を垂れた。
「――ノア姫様!!」
蒼真はただ、呆然とノアを見つめた。
「……え?」
永瑠も、珍しく目を丸くしている。
「姫様?」
ノア
「……はい。どうも」
自分が今までツッコミの対象にしていた少女が、とてつもない存在であったことを悟り、言葉を失った。
蒼真(え……?姫様……?俺、今まで、とんでもないVIPの隣にいたのか?汗)
◇◇◇
#5 城へ
騎士団の厳重な護衛のもと、三人は城塞都市オルド王国の大門をくぐり、中央の巨大な城へ向かう。周囲の市民も、ノアの姿を見るや否や、道の両脇で跪き、手を胸に当てて深く頭を下げていた。
蒼真(小声)
「お前……偉人なの?」
ノアは静かに答える。
「偉人ではありません。私はこの国、オルド王国を守護する王家の一員です」
蒼真は息を呑んだ。
(……知らなかった。いや、知れるはずもなかったけど。俺、王女と一緒に生活してたのかよ……)
ノアは、蒼真の戸惑いを察したのか、どこか寂しげに笑った。
「私の大切な家族と……国なんです」




