遠距離恋愛の始まり
遠距離2日目。
まだ愛子から電話がない。愛子の声を聞かないで半日以上経ってしまってる。
愛子と出会ってからそんな日は一度も・・・あっ、あった。
そういえばまだ付き合い初めのころ、愛子とは何度目かのデートをしてたころだったかな。
いつも俺は愛子の仕事中か仕事に行く前か後には必ず電話を入れていた。
しかし一日だけ風邪というか、調子が悪くなってしまい一日中電話一本も入れないことがあった。
あの時の愛子は怒ったりしなかったけど、もし今だったらカンカンに怒るだろうな。
愛子の起こった顔はもの凄く可愛いんだ。だけどもの凄く強いから参ってしまう。
そんなことを考えると俺は仕事にも身が入らない。
愛子とここに来て、愛子がこれをして、そういえばこれが好きだったなとか、ハワイに一人でいると愛子との思い出が走馬灯のように頭に蘇る。
今、愛子は何をやってるのかな?
まさか元彼と会ってるとか?
いやいや、ないない。信じなきゃ。
もしかして離れてみて冷めちゃったとか?
いやいや、愛子は俺を愛してるさ。
本当は遊びだったとか?
なんてくだらない不安までたちこめてきた。
そんな時だった。ちょうど父さんから電話がはいった。
「もしもし。父さん。どうしたの?」
「この間はせっかくお前の彼女と話す機会だったのに悪かった。
母さんは今は退院してリハビリ中だよ。」
「それはよかった。愛子なら大丈夫。無事に帰ったよ。」
本当は一番に父さんに愛子と話をして欲しかったんだよな。
そうだ!
「父さん!電話番号を愛子に渡していい?どうしても父さんには愛子と話をして貰いたいんだよ!」
「お前・・・本気なんだな。その子のこと。」
「うん。いい?」
「もちろんだよ。いつでも電話掛けてきなさい。」
突然ぱぁっと突破口が開いたように、愛子との未来の扉が開いたように感じた。
もちろん今まで父さんの番号を人に渡すなんてしたことないし、大親友ですら父さんの番号は知らない。
これは本当に大きな決断だ。
それから3時間程たったころ俺の携帯に知らない番号から着信が入った。愛子だ。
「遅くなってごめんなさい。やっと携帯を買って来たの。」
「いいんだよ!それより愛子聞いて!父さんとどうしても話してもらいたいんだ。」
「ええ。もちろん話したいわ。でもどうすればいいの?」
「俺が君に父さんの家と携帯の番号を渡すからかけてほしいんだ。」
「え?!私ひとりで?あなた抜きで?」
愛子の動揺が電話から伝わる。
「ああ!父さんはもう知ってるから明日にでもかけてほしいんだ。」
「緊張しちゃう。」
「愛子、もうこれは大きなことだからね。」
俺は念を押すように言った。
「父さんの番号を教えるってことはもの凄く大きなことだよ。それくらい俺は君に真剣なんだから。忘れないで。」
「ジェイソン・・・。分かったわ。ありがとう。」
愛子、君はもしかしたら俺の未来の妻になるかもしれないんだよ。ってこの部分は言葉じゃなくて心で伝えてみた。
だけどそれくらい本気、ってことだ。
それから俺は親戚の叔父にも話し、愛子も母親の方には俺の話をしたようだ。
少しづつだか一歩一歩前に進んでる。
まだ夢や希望ばかりが溢れかえって現実がちゃんと見えていなかったのかもしれない。だけど愛子。君はもうすでに未来が見えていたのかな?
盛り上がって空想ばかり追ってたのは俺だけだったのかな。