夏の終わりのコミカルストーリー(前編)
私が言葉を発しようとしたところで、
「サプライズがあります」
ディレクターに先を越されてしまった。
サプライズ?
そのことを知らなかったのは、スタジオ内では私だけみたいだ。周囲のスタッフたちはみんな、ニヤニヤしている。
そして、彼らが声を張り上げた。
「大人が挑戦! 小学生の夏休みの宿題、たった一日で終わらせることができるのか!」
その先をディレクターが続ける。
「挑戦成功おめでとうございます」
私の前に、大きな台が運ばれてきた。昼間には、壺、お茶わん、仏像がのっていた台だ。
その上にあるのは・・・・・・箱?
「番組からのプレゼントです」
白い箱を私は見つめる。中身は何だろう?
カブトムシとか? でも、それだったら、箱に空気穴を開けているだろうし・・・・・・。
すでにカメラマンが私の横に張りついていた。カメラは撮影中の状態だ。ここでの映像も番組内で使う気らしい。
私は箱のフタを開けてみる。
すると中には、チョコレートのホールケーキが入っていた。
これって何? 挑戦終了後に疲れ果てていることを見越しての、糖分補給用?
だったら、ショートケーキかモンブランの方が、私はうれしかったかな。
とはいえ、チョコレートケーキもまあまあ好きだし。なにより今は空腹だ。
ん?
そこで私は気づいた。ケーキの上に英語の文章が書いてある。
クセの強い筆記体なので、最初は気づかなかったけれど、これって誕生日ケーキ?
予想外のことに困惑する。
(私の誕生日、今日じゃないんだけど・・・・・・)
ディレクターがうっかり間違えたのかな。
でも、そのことを言い出しづらい雰囲気だ。どうしよう。ここは空気を読むか?
ケーキのフタを持ったまま、私が一時停止していると、ディレクターが声をかけてくる。
「今回の挑戦は、『夏休みの最終日』に行われているという設定でした」
つまり番組的には、日付が変わった今は、『夏休み最終日の翌日』だ。
だったら、間違っていない。その日は私の誕生日だ。
しばらく無言で感動にひたる。
それにしても、サプライズを用意していたのは、私だけじゃなかったのか。
周囲を見回す。スタッフたちが笑っている。目で後押ししてきた。
わかってる。次は私の番だ。
いよいよ、本当のラストミッションを開始する。
このことを知らないのは、ディレクター一人だ。きっと驚くに違いない。
事前に決めておいた合図を送ると、アシスタントの子が小さくうなずき、打ち合わせ通りの行動を起こす。
ディレクターに近づいていって、「ある物」を渡したのだ。
それが何かは、私が説明する。
「絵日記の差し替え分です。五日分あります」
さっき渡した十日分、半分はニセモノだ。
そのままでも通用するけれど、今渡した五日分と差し替えることで大きく変化。
私の『夏休みの絵日記』が、真の姿で完成する。




