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転生したらホムンクルスだった場合は合法ショタを名乗っていいですか?  作者: 茶色烏賊
少年体ホムンクルスを望む領主と会うまでの三日間・前半
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この体が丈夫であるということの意味はあまり考えたくありません

 私の体、ホムンクルスという人工の体は、錬金術師が研究と世代を重ねて生みだした本物の生きた体だ。外見、能力、知識など、好みに合わせて変更することが出来る。

 ただし、魂は宿らず、自我に目覚めないため、知識を詰め込んでいてもせいぜい辞書代わりの扱いくらいしか出来ない。

 特定の動作を引き出す気があれば、歌うことや楽器の演奏をさせることは出来るかもしれない。

 基本的に、能力が持たされていることに関しては、命令一つで行えるようだ。


 この体は、もともと領主の大人の人形遊び用なので、外見は麗しい美少年。声は少年にしては低めの落ち着いた、けれど澄んだ声。それから意識して抑え込まなくては誰も彼もを淫に誘うフェロモン。


 せいぜいこの辺りまでが、領主の希望した設計内容だろう。


 いや、誰も彼もを誘うフェロモンは、先生のやり過ぎか。

 魔力も、自我がなければ役に立てるのは難しかったのではなかろうか。他に何を持たされているのやら。


 さて、先生に語ってもらおう。


「見た目の設計はいいよね? そうだな、基本的なところから行くと、運動能力は体格に比べるとちょっと優れているくらいかな」

「ちょっとって、微妙ですね」


 私の言葉に、先生が上を向く。抱えられているのでよく分からないが、何やら渋い表情でもしているのではないだろうか。


「……細かく聞かれると、実際に動いてもらわないと分からないんだけど、まあ、それなりにすばしこくて、跳んだり跳ねたりもいいんじゃないかな」


 改めて聞いてもさほど詳しくはならなかったのが残念だ。


「器用さはどうですか?」


 同じ運動能力ということで聞いてみる。


「それは器用に出来てると思うよ。その気になれば細かい作業も出来るはずだ。視力もいいしね。気付いてる? かなりよく見えているはずだし、多少の薄暗さなら色の判別にも問題ないはずなんだけど」


 言われてみると思い当たることがある。

 あの地下室の水槽の中で、私はヒルデガルトの髪色を見分けていた。昨日も、ランプの明かり一つで本を三冊読み終えている。

 他愛もないようなことでもあるのかもしれないが、目がいいというのは、嬉しいことだ。


「あと身体的なことでいうと、かなり丈夫かな。体力もあるし、基本的に病気の類とは無縁に設計してある」

「へえ?」


 それはありがたいことではあるけど、どうして、というつもりで聞き返すと、先生は少しうなっていた。

 うなるようなことかと思ったが、答えにくかったようだ。


「だってほら、自己管理は本来なら自分では出来ないし、君の場合、なんていうか、乱暴なというか体力を消耗するというかそういう使われ方が想像出来てたから……」

「…………ああ…………」


 まあ場合によっては、体力を消耗するばかりの使われ方をするかなって、思うよね。私もそれは可能性がゼロになったわけじゃないと思っているし。

 なので、先生の説明には平坦の声しか返せなかった。


 これで、体力の消耗をしなくてすむのなら、丈夫な体で儲けものだとは思うけれど。


「それから、記憶の容量も大きいし、知識も入ってる。計算も早いし大きい数を扱えるから、計算能力も高いと言っていいかな。君の使い方次第だけど、頭もいいと言える可能性はある」

「そこが曖昧な表現になるのは、やっぱり自我の問題なわけですか?」

「そうだよ。能力と能力の使い方はやっぱりちょっと別の能力だからね。認知とメタ認知というか」


 何だか少し難しい話になってきた。私としては、その気になれば能力があるくらいに思っておく方が楽そうだ。


「じゃあ、魔術の才能についてはどうですか?」

 比較的簡単に習得出来そうな気がしているのだけれど、と聞いてみると、先生はあるだろうね、とうなずいた。

「魔術には魔力と、知力、それから体力が必要だ。理論を理解して構築するのが知力、構築した魔術を発動させるのが魔力、発動を継続させるために必要なのが体力。つまりその三つは君にそろっているからね」


 よし、と私は拳を握りしめる。


「あとは、うーん、日常生活上何が出来るかって話なら、君にそれを習得する気があるかないかで変わってくるしな。音感とか、出せる音域とか、芸術能力も干渉に値するくらいには備わっているだろうけど、それこそ君っていう個性が表れるものだから、単純な評価は出来ないし」


 なるほど、と私はここらで先生の説明に得心することにしておいた。


「じゃあ先生、魔術の才能があると言ってくれたところで、一つだけ実験に付き合ってくれますか?」

「実験? 危なくないのなら、いいよ」


 たったそれだけの条件で許可をくれるあたり、この先生の警戒心を心配してしまったのだけれど、今朝からの練習だけで大したことが出来るとは思っていないだけかもしれない。


「ええ、危なくはないです」


 にこりと答えて振り向くと、先生の顔に手のひらをかざした。


「おやすみなさい」


 そのたった一言で、先生は頭をこてりと傾けて寝息を立て始めた。

 睡眠の魔術、成功である。

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