見た目金髪ふわふわ美少年を膝に乗せるのなら対価をください
教会の審問官がどういうものか、出来るだけ詳しく知りたいと先生にあれこれと質問をしたけれど、あまり詳しい話は聞けなかった。
曰く、『だってこれまで縁がなかったし』だそうだ。
その職務柄かどうか分からないが、存在は知られていても詳細は知られていないんだそうだ。
恐らく、執事長であるコンラートさんに聞いても同じことだろう。
領主様に聞くとなると、先生よりはましな話が聞けそうではあるが、生憎私には領主様に会う手段が今のところない。
望めば会えるのかもしれないが、この状況で相手が言ってこないことを、私から希望することが後々いいのか悪いのかが問題になってくる。
少し考えて、こちらから説明を求めて領主に会おうとするのは止めておくことにした。
審問が切り抜けられなければ、どのみち意味がないし、切り抜けたら切り抜けたで領主との関係はそこから始めなければならないのだから、面倒なイメージは持たれたくない。
もっとも、領主が教会との関係だけを思って報告をしたのかどうかは、分からないわけだが。
どのみち、審問官の件は明日になってみないとどうしようもないかな、と私は考えを切り替えることにした。
つまり魔術の習得だ。
夕食を食べれば、あとはもう寝るだけ。
寝付くまでは、昨日と同じく本を読んで過ごすことになるだろうから、時間は結構ある。
せっかくやってみて楽しそうなことがあるのだから、それをやらずに明日のことを心配するだけで時間が過ぎてしまうのはもったいない。
私は先生の膝から降りて、魔術に関する本を読むことにした。
のだが、降りようとしたところで抱き止められた。
「……先生、降りたいんですけど」
「いや、もう少しいてくれないかなと思って、癒しに」
癒しになるんだかどうなんだか。
「本が読みたいので」
「魔術の? 熱心なのは構わないけど、もうすぐメイド長が夕食も運んでくるだろうし、少しの間でいいから。ね」
先生の言葉運びが、少しと言っておきながらそうでもない、というような響きを帯びている気がしたのは、気のせいだろうか。
「はあ……。じゃあ、審問官に明日説明するっていう、設計の内容について教えてください?」
その件は流しておこうと思ってのだけれど、このまま膝の上に乗せられていては、テーブルの上の本さえ取れない。
私には基本的な内容の本だけ渡しておきながら、審問官に対しては説明をするっていうのが納得がいかないのだから、この程度は条件として受け入れてもらいたい。
「あー……」
だというのに先生の声は、やや面倒そうだ。
「……明日の説明の予行演習くらいに思ってもらって、説明してもらえませんか」
それなら私に説明する意義もあるというものだろう。
先生は、仕方がないなあという風に頭を掻く。
「まあ、そうだね……。って言っても、渡した本を読んだなら、基本的な操作はもう分かってるんだろう?」
話す気になってくれたのかと思えばこれだ。
「そりゃそうですけど、先生が何を取捨選択したのかなんて、私じゃ分かりませんよ。今のところ、知識はそれなりにと、魔力は高めということくらいは分かってますけど」
ホムンクルスの作成と育成についての基本的な知識は得たので、条件さえそろえば、私のも同じ体を作るくらいは出来るかもしれない。
けれど、自分がどのような能力を持っているかは、与えられた知識と同じく、その能力が必要となる場面がなければ、よく分からないのだ。
歩いているだけでは、どれだけの速さで自分が走れるのかは分からないということだ。
「ああ……、そういうことか」
先生がそううなずくので、私が求めている設計の説明がどういったものか、上手く伝わっていなかったことが分かる。
そこでようやく、先生は私の設計について話を始めてくれた。




