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第四十四話

 ある日ダンジョンができた。


 ダンジョンの謎に挑むため、本格的な検査に臨むことになった。


 検査を週末に控え、俺は定時後に家電量販店に来ていた。


 インバウンドの方々も多く、日本の円安も進んでいるなぁと実感した。


 俺の狙いはスキル向上のための何かではなく、単純に掃除機の買い換えを検討していた。

 部屋中にばら撒かれた砂を回収するにあたり、長年使っていた掃除機にダメージを与えていたようなのだ。


 ロボットタイプやスティックタイプ、サイクロン式からパック式まで色々見ているが、決め手に欠けていた。


 最近では、魔石タイプと通常の電気タイプもあり、魔石タイプの方が圧倒的に軽く強力だが、いわゆる電池に近いので交換が必要だ。

 それでも半年近く使えるので、なかなかの効率だ。


 掃除機以外にも、今は電気式と魔石式、両方のタイプが売られている。


 大物、いわゆる白物家電は電気式しか見当たらない。


 車は今やガソリン、電気、魔石と様々だが、安定供給前提だと、やはり電気は外せない。

 まあ、そもそもの発電が魔石のケースもあるので、どこ起点で魔石式、電気式と言うべきかは悩ましいところだ。


 試してみると、気持ち魔石タイプの方が吸い込み力が強く感じた。

 通りかかった男性店員にも確認してみる。


「この魔石のタイプと電気のタイプでは、やっぱり魔石の方が吸引力が強いんですか」


「いいえ、基本的にモーターの性能自体は同じです。電源が違うだけなので、若干の違いはありますが、吸引力は変わりません。個人的には魔石の方が弱く感じるときがあります」


「そう? 今確認したら、こっちの魔石の掃除機の方が強いんですが」


「ちょっと確認してみますね」


 店員が俺の試していた魔石のスティック掃除機を動かす。

 電気のスティック掃除機も動かし、交互に使用感を確かめている。

 首を傾げながら言った。


「わたしが使うと変わらないんですが、お客様、もしかして探索者ですか?

 ごくたまに探索者の方が使用すると効果が変わることがあるんです」


「そうなんですか? 初耳です」


「掃除機ではあまり聞いたことがないです。

 ドライヤーは割と変化するみたいです」


 店員がドライヤーの魔石モデルと電気モデルを持ってくる。

 電気モデルは有線だ。


 店員が試しているが、出てくる風の強さは変わらない。


「どうぞ」


 店員が渡してくるので使ってみる。


 明らかに魔石モデルの方が強い出力を示す。


 俺の体から魔石と同じような力がはみ出しているのかもしれない。


 これは面白い。


 店員にドライヤーの魔石部分の外し方を聞き、抜いた状態でスイッチを押してみる。


 最初は動かない。

 意識して動かそうと、魔力を込めるように触っていると兆しを感じる。


 俺は店員に礼を言い、とりあえずドライヤーを返却し、店内を歩き回ることにした。


 扇風機のコーナーや、空気清浄機のコーナーにも両方のタイプがある。

 比較的小型のものであれば、両方の家電があるようだ。


 魔石がなくても動いたり、魔石家電に探索者の魔力的な力が干渉することは一般的なのだろうか。


 携帯でネットを確認しても、それらしい情報は出てこない。


 ○○やってみた、みたいなネット動画を探してみても、挑戦している様子はない。


 有識者に聞いてみるか。


 俺は橘妹に電話してみた。


 数コールすると橘みそらが出る。


『ハロー、梶さん久しぶりじゃん。どうしたの?』


「急にすまんな。今ちょっと電気屋に来てて、魔石の家電とか見てたんだ」


『ん? うん』


「そしたらなんか魔石のドライヤーの方が強く風が出るんで、お前みたいな強い風魔法使いだと、ドライヤー効きすぎることあるのかと思って」


『なんつーどうでもいい話。ボクはわかんない。

 かいとー! 梶さんが変なこと言ってる! 代わって』


 どうやら代わるようだ。


『かいとです。梶さんお久しぶりです。どうしたんです?』


 同じことを説明してみた。


 かいとも思い当たらないようだ。


「知らないならいいんだ。でもよく○○やってみた、みたいなのあるだろ?

 あれでやってみてくれよ。俺に言われたってのでいいからさ」


『そうっすね。割とネタには困りがちなんで、面白そうですね。ドライヤー以外に何かありますか?』


「そうだなー。わかりやすいのがいいから、扇風機、ライトとか、おもちゃとかかなー」


『じゃあ早速やってみます! 公開したらお知らせします!』


「急にすまんな。んじゃまた」


『はい。今度またダンジョン付き合ってください!』


「ほい。了解ー」


 どうやらアウトソーシングに成功したらしい。


 手間がかかりそうな検証は委託もありかもしれん。


 そのまま店の中を歩いていると、ふと清涼感が増す瞬間があった。


 空気清浄機エリアだ。


 そりゃ空気清浄機だから清涼感があるよな、と思いつつ、ふと立ち止まる。


 今まで空気清浄機があるからといって、何かの違いを感じたことはなかった。


 違和感は何か。


 匂いか?


 酸素か?


 魔石燃料は酸素を出す。


 とはいえ、ダンジョンの中にいて空気が美味しいと感じたことはない。


 十台近い空気清浄機が稼働している。


 一台一台確認していく。


 端にあったのは、魔石式の空気清浄機付きサーキュレーターだった。


 なぜか、これから送られてくる空気が心地よい。


 逆にこれ以外の空気清浄機は、なんとなく物足りない。


 結局俺は掃除機ではなく、この空気清浄機付きサーキュレーターと普通の空気清浄機を買った。


 ⸻


 今回のリザルト


 空気清浄機付きサーキュレーター


 空気清浄機


 掃除機を買いに戻ったのは言うまでもない。


 後日、橘兄妹からのお知らせで動画サイトを見た。


 家電で効果チェックをしていたが、微々たるものだったため、飽きておもちゃで遊び出し、最終的にはおもちゃのライトセ○バーで切り合っていた。


 魔石の電池的利用の場合、出力が上がるのと、魔力も乗るようだ。


 光の剣はかっこいい。


 まるでCGのようで、迫力があった。


 結構な勢いで閲覧数も伸びている。


 つい通販でライトセイ○ーを買ってしまったのも言うまでもない。

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