【序章】洗礼の日
以前書いてた小説をリメイクしました
聖暦1024年冬、冷たい冬の風が白い吐息をさらっていく。
神託の光を受ける「洗礼の日」は、王都でも最も神聖な行事とされていた。
人々は家族で神殿に集まり、子どもたちの天職が告げられるのを待つ。
騎士、魔導士、治癒師、職人──どれも誇りある称号だ。
ロドリゴは、たった一人で祭壇に立っていた。
彼はこの日を心待ちにしていた。
きっと父も母も、自分のことを認めてくれる日だと信じていたから。
金色の光が天井から降り注ぎ、神官の声が響く。
「この子に授けられしは──《毒使い(ヴェノマンサー)》」
・・・・静寂。
次の瞬間、誰かが小さく息を呑んだ音が響く。
母が口元を押さえ、父は顔を背けた。
母「……まさか……そんな……」
父「ロドリゴ……どうしてお前が……」
人々の目が彼に注がれる。
まるでそこに毒そのものが立っているかのような、忌避の視線。
ロドリゴは震えながら、母の手を取ろうとした。
ロドリゴ「お母さん、僕、頑張るから──」
母「触らないで!!」
ロドリゴ「え・・・?お母さん?」
父「お前はもう勘当だ。どこにでも行け。」
その言葉と同時に、ロドリゴの世界は崩れた。
次章・・・毒を抱いて生きる前編です。